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スペシャルインタビュー:東村山市長 渡部尚氏

2020/01/16

東村山市の人口は、約15万人(平成30年1月1日現在)。高齢化率は約26%である。豊かな自然に恵まれている東京都のベッドタウンとして近年人気の高い町である。
ふと東村山市を訪れると、空と空気が綺麗であることがよく分かる。それは住んでいる人達の心が綺麗な証拠である。その素晴らしい住民達をけん引する渡部市長の心が綺麗であり、常に人々に優しい眼差しと幅広い視野で市民の幸福を考えているからでもある。しかも懐の深い渡部市長を筆頭に市の職員の方々の細やかで優しい思いやりは、様々な事業にしっかり反映されている。今後のまちづくりのモデルとして、東村山市は多くの自治体の模範となるに違いない。
東村山市の渡部市長に様々な施策についてお聞きした。

 

市民の命を最優先に考え、「介護予防大作戦」や「こんにちは赤ちゃん事業」等々明るく楽しい町づくりを推進しています!
東村山市長 渡部尚氏

東村山市長
渡部 尚   氏

 

―日本の社会保障制度について渡部市長のお考えをお聞かせください。

これまでの日本の社会保障制度というのは、戦後の高度経済成長期にともない人口増になっていた時期の果実というか産物のようなことで成り立ってきましたが、日本の経済は1980年代をピークに、その後〝失われた30年〟などと言われますように、経済的な高度成長というのは無くなって、今はどちらかというと成熟期で、規模より質が問われる経済状況だと思います。中でも一番大きいのは、人口構成です。

かつては多くの若い方々が経済や社会を支えていた訳ですが、現在の人口の所謂ボリュームゾーンといわれる方々は、既にリタイアされており、団塊の世代の皆さんはこれから後期高齢者に入られていくことになります。しかし、それを支える若い人達は、所謂団塊ジュニアの世代というのは、ボリュームゾーンとして若干膨らみがありますけれども、その後は寧ろ逆三角形的な人口構成になっていきます。2025年問題だとか2040年問題とよく言われておりますが、所謂人口の構成として、かつてのピラミッド型といわれる若い方が多く、お年寄りの方が少ない構造から、最終的にはドラキュラが寝ている西洋の棺桶みたいな形の棺桶型の人口構成になると言われている訳で、つまり経済の成熟化と人口構成が大きく変わり、なおかつ人口減が始まっている中でこれまでの社会保障制度、特に年金や医療、介護等をどうやって支えて行くかというのは、地方自治体にとっても大きなテーマですし、国家的な課題であります。

国は今年の「骨太方針2019」で、全世代型の社会保障への方向性を示しており、高齢者から若者まで誰もが幾つになっても活躍できる社会へと改革する方向性を打ち出しています。実際に東村山市では今100歳以上の方は、敬老の日の前後で84人でしたが、平均年齢がかなり上がってきて、まさに「人生100年時代」、女性は、このままの平均寿命の伸びからいくと、平均寿命が100を超えることは中々難しいかもしれませんが、かなりの方が100歳位までは、ご健在になられる時代がもう直ぐ其処まで来ているということですので、やはり国においても地方自治体にとっても国民或いは其処に住んでおられる住民の方、誰もが安心して「人生100年時代」を過ごせる、そういう社会を作っていくことが非常に大事です。出来るだけこれからは、「人生100年時代」皆さんがなんとか健康で、お元気でいて頂くようにこの4,5年「健康寿命の延伸」や「介護予防の推進」について、非常に力を入れて取り組んでいます。

他にも、当市は検診の受診率が若干低いので、出来るだけ市民の皆さんに「特定検診」と「癌検診」等を受けて頂いて、今は早期発見をすれば癌でもかなりの率で完治され、余命も伸びましたから、やはり検診率を上げていくことを目指しております。 年金については、国の制度ですので地方自治体は直接関係していませんが、少し前に国会で、「老後はいくら必要なのか」とした議論がありましたけれども、当然年金だけで生活が出来れば一番望ましい訳ですが、夫々の方達のそれまでの境遇によって、中々年金だけでは厳しいという方も大勢いらっしゃるのも事実です。従って我々としては、高齢者の就労を支援しようということで、東村山市のホットシテイという所で経済困窮者の方の就労支援等を行っております。しかもそれに限らず、少しご高齢の方で元気で働きたいという意欲のある方や、或いは今問題になっている「8050問題」で、長期ひきこもりの方々に何とか社会復帰を促していくということで、今年度社会福祉センターをリニューアルして、高齢者やひきこもりの方達の就労支援をしていくことで少しでも生活の糧を得て頂いて、経済的にも出来るだけ自立度を高めていく、ご高齢の方が働くことによって、社会的に一定の責任をもって役割を果たしていく訳ですから、当然頭や体にも良い効果が得られると思います。

当市としては、今までのような60歳になったら年金で、後は左団扇という時代はもう難しくなってきている時代において、人生100年時代の社会保障というのは、出来るだけ健康で自立性を高めていく、そのための支援を我々行政も行うという意味で、今年の4月に行われた市長選挙では、高負担高福祉ではなく、夫々の方が出来るだけ健康で長生きしながら経済的にも困窮しないように自立性を高めていくことを支援する福祉、お金をかければ高福祉は実現できますが、段々支え手が少なくなる中ではそういった高福祉ではなく「良福祉」という概念でこれからの日本、国全体も地域も進んでいく必要があるのではないかと考えています。

 

―人口減少社会に突入しました。超高齢化の進展と少子化に対する東村山市の取組みを教えてください。

実は、東村山市の予算規模でいうと、児童福祉費が1番大きいのです。どこの自治体もいろいろやっておりますが、東村山市の場合は、〝子育てをするなら東村山〟という旗を掲げて、子育て支援にかなり力を入れてきました。当市の場合、幼稚園は全部私立なので、認定子ども園になってもらったり、今まで3歳児までしか預からないところを1歳児まで預かってもらったり、様々な取り組みをしてきています。

東村山市は今年の3月まで、7つ公立保育園がありましたが、市内を5つのエリアに分けて、1エリアに1つの公立保育園を機関園として設置したことで、残った2つの保育園を民間に移管、其処で浮いた保育士を公立の園に再配置をすると共に地域担当者を配置しました。これまで「こんにちは赤ちゃん事業」という名称で新生児訪問事業をやってきましたが、それについては産前と産後の新生児の6カ月検診までを行っている訳ですが、それ以降の乳幼児のお子さんと行政との接点というのはありませんでした。今回その再配置した地域担当保育士が家庭訪問、アウトリーチを行うようにしました。「こんにちは赤ちゃん事業」は保健師が行って妊婦さんの様子をうかがって出産と同時に、例えば産後鬱になられているようなケースもありますので、その後もずっと支援をする体制をとっております。例えば初産で市内にお爺ちゃんお婆ちゃんがいらっしゃらない、親戚もいないといったご家庭など再度訪問をして様子をお聞きして、困ったことがあれば相談支援を行う、或いは何処かに繋ぐという「すくすく訪問事業」も行っており、切れ目なく支援をしております。最終的にこの町に住んで、安心して子育て出来るということを実感してもらうような環境を整えていくことが、やはり私は大事であると思っています。

当市は、都心まで所謂通勤圏ですから、新宿まで30分、都心まで1時間位です。丁度都心から30キロ圏の縁の部分に位置しており、東村山市は〝ちょっと田舎だけど自然もいっぱい残っていて子育て環境も凄く良い〟を売りにしている面もありますので、とにかく安心して子育てが出来る、全く親も親戚もいない所でも、子育てしやすいという環境をつくることが所謂第2子、第3子を産んで育てていこうという意欲を高めることになるのではないかと考えております。

 

―東村山市で現在取り組まれている地域包括ケアシステムの構築状況ついてお聞かせください。

介護・看護・医療、住まいを切れ目なく提供するということで、「地域包括ケアシステムづくり」を進めております。東村山市の医療・介護の分野も、市内を5つのブロックに分けて夫々に地域包括支援センターを置いて、仕組みづくりを進めています。今は特に、介護予防に力を入れているということは先ほど申し上げた通りですが、地域包括支援センターに生活支援コーディネーターを配置して、単に介護が必要な人にサービスを供給するだけではなく、その前段階から介護予防や健康寿命延伸のための取り組みを地域包括センターが中心になって進めています。

また東村山市には5エリアに13の町がありますが、夫々の町で今、「介護予防大作戦」を、住民主導でやって頂いて、13町全部でやるようになってから今年で8年目になります。以前は、中心になる人が住んでいる地域だけでやっていましたが、〝良いことなので是非13町全部でやってください〟として、市の職員と社会福祉協議会の方と高齢者の団体で、いきいきシニア・老人クラブ等々、町によってはそこに自治会の役員さんや民生委員さん、そして5エリア毎の地域包括センターの生活支援コーディネーター等も入って頂いている状況です。どちらかというとこれまでは、社会参加と軽い運動を中心に介護予防の取り組みを展開してきましたが、今年から東大の飯島勝矢先生と一緒に介護の前段階のフレイル予防をしようということで、「食支援」と「口腔ケア」のモデルエリアを選んで、少しリスクが高そうなお一人暮らしの方とか高齢世帯の方に声をかけてフレイルチェックをして、月に一度、有料ですが栄養バランスのとれたお弁当を届けてもらってそれをみんなで一緒に会食をして、フレイル予防の話を聞いたり、栄養士さんに来て頂いて、〝高齢者も一定の蛋白質を摂らなければダメですよ〟というような話をしてもらったり、其処で軽い運動をしたりということを半年位行いました。しかもその人の身体状況等についてチェックして、一定のエビデンスがとれれば今後それを全市的に広めていきたいと考えています。

最終的にはどうしても介護が必要な状況になったり、病気になってしまうことは避けられないと思いますが、やはり如何に寿命が伸びたとしても、健康でいられる状況が長く続くことが大切ですので、医療や介護のお世話になる期間を出来るだけ短くすることが非常に大事だと思います。在宅医療については、当初は中々進んでおりませんでしたが、このところ広域的に在宅医療を推進している医療機関が増えてきましたので、今後東村山市の医師会等と連携して在宅医療・在宅看護を充実させていく必要があると考えています。クリニックを開業されている先生方の諸事情で訪問医療、在宅医療は厳しいという方がいらっしゃるのは事実ですけれども、北多摩医師会がその旗振りをされておりますから、是非協力をし合って推進したいと考えているところです。

 

―地域力が弱くなっているといわれている現在、「互助」による支援体制が機能する可能性についてもお聞かせください。

東村山市における自治会・町内会の加入率は、かつて70%位ありましたが、現状では5割を切って、いま40%の後半位だと思います。やはり当市にも自治会、町内会に対してあまり良いイメージを持っていない方も中にはいらっしゃいますし、昔の隣組みたいで嫌だと言われる方もいらっしゃいます。

しかしながら万が一の場合の隣近所の支え合いというのはとても大事です。特にこのように頻繁に災害が発生するような時代を迎えた場合に、行政の公助だけでは対応しきれませんので、個人では厳しいとなれば、やはり共助といわれる地域の繋がりを活かした助け合い・支え合いが非常に重要になると考えておりまして、東村山市ではコミュニティ施策としても自治会等の支援をさせて頂いたり、活性化に向けてどうしたら良いかということで、熱心な活動をされている自治会長さん達に集まって頂いて「自治会活性化委員会」を作って、活動が停滞気味の自治会にオファがあれば行って、〝うちではこんなことをやっていますよ〟と伝えるなどしています。

例えば、若い方を巻き込むのであれば、あるエリアではハロウィンをやって、子ども達が見知らぬお宅を訪問して、お菓子をもらう。当然最初に役員の方が〝お宅で拠点になってもらえますか〟と話をして〝いいですよ〟というと其処に会で買ったお菓子を置いて、地域の子ども達が何人かその町内を廻ってお菓子をもらう、つまり顔見知りになる訳で、子ども達と子どもの親御さんと其処に何年も住んでいる若干年配の方と顔が繋がってくるなど、こういうことは非常に大事なことなので、そういうハロウィンみたいなお楽しみを上手く活かしながらコミュニティを活性化するみたいなことを、市民の方で熱心にやられている方がいらっしゃるので、それをいろんな地域に拡げられると良いと思っていますし、或いは先ほど申し上げた「介護予防大作戦」も毎回やっていると顔ぶれが固定しがちですが、それでもやはりその地域で顔の見える関係、年に1回介護予防のために集まって、地域包括センターの人に講演をしてもらったり、歌をうたってみたり、場合によっては一緒に食べたり、そういうことをしながら地域づくり、中々健康寿命を延ばすとか介護予防と言っても、社会性、社会参加というところをどのようにして作っていくかということについては、やはり何かにひっかけてみんなに出て来てもらう機会を作ることが良いのかなと思っています。

当市は「介護予防大作戦」の他に敬老の日の前後に、以前は市が全て主導で1か所に集めて会を催しておりましたけれども、20年位前から地域の人にお祝いしてもらおうということで、「長寿を共に祝う会」という名称にして、市が補助金を出して、夫々の町で社協の福祉協力員さんが中心になって、今年からは80歳以上の方になってしまいましたが、その方達に案内をして、多い所では200人~300人位参加されますので、会場が学校の体育館みたいな所でしか出来なくなってしまったり等ありますが、そうは言ってもみんなで長寿を祝うという、なんとか地域コミュニティを維持し、活性化しようという取り組みを地道に進めております。

 

―介護の人材不足、在宅系看護師不足等、人材が不足していると聞きます。東村山市において、人材は足りているのでしょうか。

今回第7期の基礎調査で、事業所さんのヒアリングをさせて頂きましたが、やはり厳しい状況であるということは承知しております。直接的支援というのは中々難しいんですが、出来るだけ各事業所さんと連携をとりながら、法人さんであれば、例えば合同の面接会みたいなことが出来ないか等、とにかく担い手がいないことにはどうしようもないので、専門職の介護職の方の確保と、あとは地域支援事業で有資格がない方でも出来るサービス等については、元気な高齢者が虚弱な高齢者を支援するということで、今シルバーさんにお願いをして、シルバー人材センターの方に身体介護は出来ませんが家事支援等のホームヘルプをやって頂くことにしました。資格が無い分、若干お安くして頂いております。

自治体によってはちょっとシルバーさんの活動が停滞気味な所が都内でもあるように聞いておりますが、お陰さまで当市は会長以下、皆さん、会員さんも非常にやる気がありますから仕事も増えて契約高も上がって、しかも先日の市の産業祭りでは、ブースを出したり、ゴミ拾いの清掃ボランティアをやって頂いたり、毎年年度始めの4月頃は新学期に入ったばかりの学童の見守りみたいなことも各地域でやって頂いて、単にお金をもらう仕事だけではなく、地域貢献したいということで凄く頑張って頂いています。やはり其処に集まって仲間が出来るのが楽しいみたいで、多少お小遣いにもなりますから、当市の場合はシルバーさんが機能を果たしてくださっています。

また東村山市は比較的介護施設が多く、事業所も結構あります。かつては東京都のナーシング、特養とか養護老人ホーム、今は全部民間に移管されましたので、東京都の直営ではなくなりましたが、老人介護施設の草分け的な所があったり、例えば白十字ホーム等も特養としては全国でかなり古い部類に入ります。未だ高齢化ということがそれほど言われていない時代の昭和30年代に作られておりますので、これから高度経済成長をするくらいのタイミングに出来ている施設です。結局そういった所はかなり先進的な施設としてのノウハウをいろいろお持ちですので、そういった施設は法人としてもしっかりしており、ある意味介護職としてかなり高度なことが学べて自己成長に繋がるところもあると思いますから、全部が全部確保が厳しいという訳でもないのではないかと感じています。結構長年やっている施設においては、しっかりした組織の職員体制がありますので、それなりに若い方の確保が出来て、尚且つ取り囲むようなボランティアさんが結構いらっしゃる施設も少なからずあります。

 

―待機児童対策について中々解消されていかない原因は何所にあるとお考えでしょうか?子育て支援について渡部市長のお考えを教えてください。

先述しましたようにこの間、認可保育園、地域型の保育園、そして幼稚園の認定こども園化というようなことで相当数定数を増やして、平成30年度の4月の待機児童数を5名まで減らすことが出来ました。しかし5名まで減ったことがインフォメーション効果なのか、逆に今年の4月は91名でした。申込数が去年に比べると200人位増えてしまっておりますので、やはりそんなには急には対応出来ません。

正直この読みが中々難しいんです。待機児童が少ないとなるとウワーッと申込が増える傾向があり、最近の若いお母さんは、住む場所を選ぶ時に何処に住んだら保育園に預けやすいかとチェックを入れますので、〝この市は少なそうだ、大丈夫そうだ〟となれば、其処に引っ越そうということにもなるようです。今までは就労せずに家庭で子育てしていた方も、待機児童が少なく預けられるのであれば、といった求職理由で申し込まれる方もいらっしゃいます。特に今年の10月から保育は無料になりましたから預かってもらって働きに行ったほうが良いといった理由もあると思います。

市としては、今回保育園に申し込んで待機児になった方の50名弱は幼稚園の預かり保育を使って頂けるようにしました。幼稚園はこの数年間、定員数が100人ずつくらい毎年減っておりまして、幼稚園も重要な子育ての教育機関であり、重要な社会資源です。我々としては、中々0から5歳までのフルスペックの認可保育園を建てるというのは、財政的にも人員的にも厳しく、当市で行っているのは0・1・2歳児の地域型保育園、ここが一番待機児童が多いので、そのボリュームゾーンにあった地域型の保育園を増やして、逆に定員割れを起こしているような幼稚園に預かり保育を拡充して頂くことで、3歳以上になれば幼児教育を受けさせたいという方には幼稚園で教育を受けてもらうようにすることで、或る意味、幼稚園としての社会的な資源が守られます。

そういう意味で幼稚園も上手く活用という言い方は恐縮ですが、やはり我々としてはニーズに合致した保育園も認定こども園も幼稚園も或いは地域型の保育園も、いろいろなメニューを揃えて多様な保育・幼児教育のニーズにお応えすることが大事であると考えております。

 

―東村山市の「介護予防歳作戦」等で様々な取り組みをされていると思います。たとえば転倒予防教室などはどのような方を対象に行われ、その指導者はどうやって選ばれているのでしょうか?よろしければ教えてください。

様々な職種の方に指導者をお願いしております。柔道整復師の先生方にも、介護予防教室の体操指導等、以前はボランティアでお願いしていましたけれども、現在は市が一定のお支払をして、オーダーがあれば、その教室の体操指導をお願いしています。理学療法士の方もいらっしゃいますが、柔整の先生方は比較的熱心ですし、もしかして介護予防教室に来られる方も、患者さんがいらっしゃったりする場合もあるでしょうし、そういう意味から言うと遠くから派遣されて来るのではなく、東村山市の柔整の方の場合は、地域で開業されている比較的若手の先生が来てご指導頂いているので、割と良い関係ではないかと私自身は思っております。

よく柔整の先生方達から〝いろいろもっと役に立ちたい〟といった話を伺っております。やはり医接連携は凄く大事であると思いますし、今の柔整の先生方のノウハウというのは非常に貴重なものだと思いますから、所謂西洋医学だけではなく、これからの介護予防或いは実際の介護の現場で、〝腰が痛い〟〝膝が痛い〟という方はいっぱいいらっしゃるので、是非柔整の先生方に今後も活躍頂けるように私としても考えたいと思っております。

 

―昨今、地球規模で大災害が多発しています。東村山市の防災計画について教えてください。

基本的には他所と同じようなことを行っています。東日本大震災の前から取り組んできたこととしては、万が一の場合、避難所にもなり且つ子ども達の生活と学習の場である学校の耐震化を先ず進めました。これを平成24年に全部完了しまして、その後、公共施設の耐震化を進めて、去年の8月に東村山市の本庁舎も耐震補強工事が完了しました。

実は東日本大震災があった年に耐震診断をしたところ、強化しなくてはならないということが分かっていましたが、その後、仮庁舎を建てて工事をすると現実的には物凄くお金がかかりますし、市民にもご不便をおかけすることになるので、なんとか業務を続けながら工事が出来ないかということで、2年位検討しまして、平成28年から3か年かけて順番に耐震工事を行い、電気も全部LEDに変えました。今までは市役所の非常用電源が5時間位しかもたなかったのが25時間位持つ、しかも燃料を補給すると72時間の連続運転が可能になりました。ほぼこれで公共施設の耐震化は終わりましたか。

また当市には柳瀬川という東京都が管理している河川と市が管理している河川があります。先日の台風19号で柳瀬川が若干あふれて床上、床下浸水が12、3軒ありました。都の河川については少なくとも50ミリ対応して頂くようにずっとお願いしているところですが、どうしても都と県境に流れている川なので東京都だけではなく埼玉県が関わったりということがあります。市のほうの河川については、今回の台風でも若干護岸が崩れてしまったところも出ましたので、なんとかこれから整備を行っていかなければと考えております。

もう1つの取り組みとしては、災害時に一番大事なのは何処でどういうことが起きているのかが分かることが大切です。本年度東村山市ではスマホのアプリで防災ナビを、こういう仕様で作ってくださいということは我々が考えて、業者に依頼して開発しました。これは基本的に平時は、プッシュ型の様々な情報、例えば〝大雨警報が発令されました〟みたいな情報を、登録してくださった方に流して、市は災害対策本部が立ちあがった時点で、市民から情報を其処に送ってもらう機能をつけて、例えば〝台風でここの道路が冠水しています〟といって撮った写真を送れる機能がついています。それを送ってもらうと、全体のマップの中に、ここでこんなことが起きていますということが分かるようになります。従って、それを見ながら我々行政、警察、消防も何処で何が起きているのかを随時に把握できます。そういう防災ナビを今年から稼働させております。

いろいろ課題はまだまだいっぱいありますけれども、今なにしろ毎年大きな台風が東京でも1・2回来るのがもう当たり前になってきてしまっておりますし、首都直下型の地震は何時来てもおかしくない状況ですから、市民の命を最優先ということが我々のモットーなので、災害、減災にこれからも一生懸命取り組んでいきたいと思っています。

 

―東村山市の将来ビジョンなどについてもお願いします。

冒頭に申し上げたように、これから更に高齢化が進み、人口減少が進む世の中になりますので、キーワードは「SDGs(持続可能な開発目標)」ではありませんが、やはり持続可能な町、即ち住み続けられる町を作っていくことが、一番重要になると考えています。

そのためにはどういうことが必要なのかというと、人夫々年齢や境遇によって違うと思いますが、お子さんであれば学校や幼稚園、或いは保育園であったり、ある程度ご高齢の方の場合は、医療機関や介護施設であったり、何か集える場所等々、また施設自体もインフラを含めて、当市だけではなく日本全国どこも同じですが、大体高度成長期の右肩上がりの時代に作られており、何処も一斉に更新時期を迎えつつあるということはご案内の通りで、今ある施設を全て維持することは大凡不可能だということはもう分かってきていますから、その時にどういう機能をキチッと地域に残しつつ、例えば学校を主体に地域コミュニテイ上必要な機能をいろいろ集約化して、其処に子どもだけではなく、お父さんお母さん世代、お爺ちゃんお婆ちゃん世代の方が集い一定の用が足せる状況を作っていくことが東村山市のようなそれ程広くない町でも必要になると考えています。

学校というのは、日常生活圏域に大体1つ位はありますので、ご高齢になると300メートル歩くのも大儀だという方も結構いらっしゃるので、其処は公共交通を如何確保していくかということはあると思います。

今後の地域づくりという観点で考えると、やはり学校を拠点として、其処に子ども達や高齢者や大人が集まって夫々趣味活動を行ったり、健康づくり活動が出来るような、まず身近な場所でそういう日常生活圏域で人が集まって活動が出来る拠点を再整備していくということが凄く大事かなという風に思っています。

東村山市の場合は17平方キロという比較的狭い区域に駅が9つもあります。逆に臍がないということで、武蔵野市であれば例えば吉祥寺は凄い大きな商業集積をしている訳で、そこに人が集まってきます。当市の場合は、駅が9つもあるので中々拠点化が出来ない訳ですが、ただその中でも、東村山駅周辺、久米川駅周辺、秋津駅周辺は比較的駅の乗降集客数も4~5万、秋津駅は1日8万人位利用されているので、この3駅周辺を市では3極、市の中心として位置づけておりまして、この間、駅前広場づくり等を行ってきました。今行っている東村山駅周辺の連続立体交差事業では、令和6年までには西武線が高架化される予定です。それに合せて道路整備或いは駅前の再整備等を行って、中心部に必要な商業、業務系の機能を集めたり誘致することで、中心部の活性化を図り、ある程度東村山市内で買い物も出来るし、楽しむことも出来る。或いは郊外型で働く場所もあるというようなまちづくりを今後進めていくことが大事で、私は今「住んでよし、働いてよし、楽しんでよし」の東村山市を目指そうと言っています。

先ほど高齢者の就労支援についてお話しましたが、高齢者だけではなく、例えば今まで専業主婦だった方の就労支援ということで、実は去年の10月に、市民センターの1階にパーソルテンプスタッフという人材派遣会社のジョブシェアセンターを誘致することができまして、市の公共施設の一角を家賃をもらって民間企業にお貸しする訳ですが、批判もいっぱいありました。今まで人材派遣業というのは基本的に都心部の大きな会社のオーダーに応じて契約社員を集めて其処に送り込むみたいな業態でしたが、やはり人材派遣業も人手の確保が中々難しいということもあり、寧ろ潜在的な労働人口がいるであろう郊外部で、要するに何らかの理由があるから都心部に通勤しないのであろうとして、仕事を郊外に持ってくれば良いのではという発想です。

それで、〝どうですか東村山市さん、うちと組んで一緒にやりませんか〟という話を頂きまして、〝やれるかどうか一緒に研究しましょう〟ということから始まって、去年の10月にじゃ是非やってみようとなりました。パーソルさんは都心や全国或いは世界から請け負った様々な業務を東村山に持って来られて、それに合到した方々を採用しています。当初5人でスタートしましたが、現在は30人になりました。ほぼ市内の方ですが、やはり40代、50代の女性に凄く人気で、採用説明会を開くと毎回100人位集まります。東村山市で仕事を探そうとなるとスーパーのレジやヤクルトの配達などの業務に殆ど限られておりましたし、例えば子育てがあるので都心まで通勤して、朝早く出て、夜遅く帰ってくるのは難しいとか、若干介護もやらなければならないのでやはり通勤時間が勿体無い。そういった中々働けなかったような方々が地元でオフィスワーク、入力作業とかパソコン相手で出来るような仕事等が出来てそれなりの時給がもらえるとなるとやはり人気があるんです。郊外型の新しい多様な働き方を保証するような「働き方改革」を推進し、しかも働く場所を公民連携で作ることが出来たということで、我々としては本当に良かったと思っています。

要するに東村山市内でなんとか働く場所をこれから私たちとしては増やしていく、そのことが結果として人口減に歯止めをかけたり身近な場所で仕事が出来るというのであれば、例えば30代の方で、〝じゃもう1人子どもを産んでみようか〟とか、所得も上がって、週3日で1日3時間とか4時間働いてもらえれば良い等々、そういう多様な働き方を創出することが出来ました。これから来年のオリンピックに向けて、国も東京都も大手企業も出来るだけテレワークで、都心の本社まで毎日出勤しないで自宅で出来ることは自宅で行う、或いは会社によってはサテライト型のオフィスを郊外にかまえる動きもあります。今までは食住がかなり離れていたのが、ICTの技術の普及なども含めて、今の働き方改革の大きな流れの中で郊外に働く場所を作るということが、実は段々可能になりつつあります。従って今までは寝るために帰ってくる場所であった郊外が、正に仕事もして、生活もして、子育てもして、介護もして、高齢期になってもまだ仕事がちゃんとあって、活躍する場所があって「人生100年」、〝都心もいいけど郊外もいいよね!〟ということを我々は目指していきたいと思っています。

 

●渡部尚(わたなべたかし)氏プロフィール

生年月日:昭和36年8月24日
学歴:茨城大学人文学部人文学科卒業
経歴:日本電気関連会社勤務
東村山市議会議員(平成3年~平成19年)
(民生産業委員長・厚生委員長等を歴任)
(市議会史上最年少議長就任(平成15年)
保護司
東村山市長(平成19年5月~)
座右の銘:諸行無常・諸法無我
好きな言葉:あちらこちら命がけ(坂口安吾)
趣味:読書・釣り

 

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