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スペシャルインタビュー:あきる野市長 澤井敏和氏

2018/03/16

あきる野市の人口は、約8万1千人である。四季折々の美しい風景、豊かな自然に囲まれたあきる野市。「秋川渓谷」は、人々のオアシスであり、子どもや若者のパラダイスでもある。そんな自然がいっぱいの環境で、子ども達をのびのび元気いっぱい力強く育てたいと希望する親も多いであろう。都心の新宿から約1時間余り、また圏央道あきる野インターは、東名高速や東北道等ともつながり、非常に便が良い。
長年行政マンだった澤井市長は、まちづくりのプロであり、あくまでも目線は低く、市民に寄りそう眼差しがとても優しい人物である。あきる野市の「地域包括ケアシステム」の進行状況及び「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を通して、将来ビジョンを端的に話していただいた。

 

『あきる野市の歴史と伝統と地域の特性を活かして、誰もが幸せを実感できるまちを創生していきます!』
あきる野市長

あきる野市長
澤井 敏和   氏

 

―人口減少社会に突入しました。超高齢化の進行と少子化に対するあきる野市の取組を教えてください。

あきる野市の一昨年の合計特殊出生率は1.43で、東京都の区市町村の中でも高い水準にあります。しかし、このままだと10年後には高齢化率が30%台に突入するとともに、生産年齢人口の割合が60%を割り込んできます。あきる野市だけのことではありませんが、特に子育てが一番重要であると考えています。

妊娠、出産、子育てに対する切れ目のない支援、また、保育園や学童クラブの待機児童ゼロへの取組など、子育て支援を強化しているところです。そしてまた、いかにあきる野市に定住していただくか等が重要であると考えています。
特に「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づき、当市では子どもを安心して育てられる環境づくりを推進する中で、そこに行けば、ほとんどのことがワンストップで済む、あちらこちらに移動しなくても済む、妊娠期から子育て期まで切れ目のない支援ができる、そんな支援の体制を充実させるため、JR秋川駅に近接するあきる野ルピア内に、子育て支援の拠点を整備しました。

この施設は、「あきる野子育てステーション ここるの」という愛称で呼ばれています。昨年の10月にオープンしたばかりで、「多摩産材」も使用し、木のぬくもりが感じられるような非常に明るい施設となっており、お父さんたちにもご利用いただいています。
また、4月からは、ここで乳幼児一時預かり事業を実施する予定です。特にお母さん方にご利用いただき、少しでもリフレッシュしていただければと思っています。

もう1つ、当市には「阿伎留医療センター」があります。
あきる野市、日の出町、檜原村の3市町村で構成する公立病院ですが、そこの敷地を一部お借りして、今年の4月から病児・病後児保育事業を行うということで、病児・病後児保育室を建設し、4月の事業実施に向けて準備を進めています。
事前に登録をしていただくことで、お父さんお母さんに何か急用ができたときでも直ぐ対応できます。病院の敷地内ということで、医師の方に巡回していただく保育室を開設する予定です。
なるべく子育てをしやすく、また、今は女性活躍の時代でありますので、環境整備に余念がないといったところです。

 

―近年、社会保障費の財源が苦しくなっていることに加えて、高齢社会で医療費も介護費も大変な増加が見込まれ、それに伴い在宅ケアを含め包括型の医療ケアシステムの構築が求められております。あきる野市で現在取り組まれている地域包括ケアシステムの構築状況についてお聞かせください。

地域包括ケアシステムの必要性について理解が深まっていく中で、あきる野市では、医師会と連携した在宅医療と介護連携の取組が順調に進んでいます。つまり、医師と介護従事者が顔の見える関係で事業を推進しているということで、連携シートをしっかりと共有するなど、在宅医療と介護サービスが上手く機能していくように取り組んでいるところです。

先ほどお話ししたように、当市には公立の阿伎留医療センターがあります。そこでは、地域包括ケア病棟を開設して、地域包括ケアシステムの構築に医療の分野で取り組んでいただいています。医療関係者、医師、歯科医、看護師、介護事業者、薬剤師の方などが参加する連携会議と症例検討会を年に何度も行っています。

昨年、市民を対象に公開講座を開催したところ、非常に好評で、大勢の方にご参加いただきました。介護というのは、自分自身や家族が当事者にならなければ浸透していないところがあります。そういった意味からも、医療と介護の連携のあり方について市民にしっかりとPRしていく必要性があると考えています。

 

―地域力が弱くなっている現在、「互助」「共助」による支援体制が機能する可能性についてもお聞かせください。

国勢調査の中での数字ですが、高齢者で独居の方たちというのは、当市に約3000人いらっしゃいます。このような中、地域コミュニティの核である町内会・自治会では、さまざまな取組を行っています。

一例を挙げますと、防災訓練の際に実施する安否確認旗の確認訓練では、屋外に掲出する無事を知らせる旗を、町内会・自治会の方々がチェックし、逃げ遅れや被災などを地域で把握する手法の確立に向けて取り組んでいます。また、当市では、民生委員の方が大変よく活動してくださっていますし、「防災・安心地域委員会」という組織もあり、高齢者の地域見守り活動をしてくださっています。また、社会福祉協議会の取組では、「ふれあい福祉委員」の方が、一人住まいの高齢者の方に声かけをする見守り活動をしてくださっています。

市の健康づくり事業にもご協力をいただき、地域の方々と介護予防につながる体操や軽い運動などを行っています。こうしたことから、あきる野市では、地域としての横の繋がりは、かなりしっかりできていると思っています。

 

―介護の人材不足、在宅系看護師不足等、人材が不足していると聞きます。あきる野市において、人材は足りているのでしょうか。

人材不足については他の自治体と変わりないと思いますが、当市においては、閉鎖に追い込まれた介護施設はありません。そのようなことから、なんとかやれていると思っていますが、きっと事業所の方達があらゆる面で努力されているお蔭で保たれているのではないかと考えています。

また、当市においては、施設自体は充足していると思います。ただし、今後は、後期高齢者の方がますます増加しますから、サービスを拡充していくことの検討は、もちろん必要だと考えています。その中で、職員をどのように確保するのかということについては、全国的な課題であり、当市においても大きな課題だと思っています。サービスはあるけれど運営できないという状況になってしまっては、元も子もありませんので、その辺が課題です。

 

―待機児童対策について中々解消されていかない原因はどこにあるとお考えでしょうか?子育て支援について澤井市長のお考えを教えてください。

当市の待機児童数を実際にカウントしたところ、平成29年度の待機児童数は12人でした。人数的な枠としては、全体的に過不足はないと考えていますが、例えば、東の方向に勤務している方は、西に預けることはできないといった事情等もあります。つまり、市内の保育施設としては受け入れ可能ですが、結果的に待機児童になってしまうという状況があるということです。

ここ数年、保育園の改築や定員人数を増やしていただくなどの取組を、事業者の皆さんにお願いしています。介護人材と同じように、保育士が集まりにくいという話しは、各園長さんからお聞きしています。私も保育や学校に関わっていましたので、よく分かっているつもりですが、保育実習には来られても、実際に地元の保育園で、職員として働いてくださる方は非常に少ないため、その辺で苦労していると聞いています。

 

―昨今、地球規模で大災害が多発しています。あきる野市の防災の取組について教えてください。

当市は、山間地をかかえていますので、そういう意味でも、特に防災に力を入れています。先ほどお話ししたとおり、旧町村単位の市内7地区に「防災・安心地域委員会」という防災組織があり、防災・減災と災害発生を想定したさまざまな取組を行っていただいておりますが、柔道整復師の皆様にもご協力いただいており、総合防災訓練の際には、負傷時の手当ての仕方などについてご指導いただいております。
また、先日、夜間の防災訓練を実施したところ、多くの地域住民の皆様にご参加いただき、あきる野市民の防災意識の高さや関係機関等との連携の強さを改めて実感いたしました。

一方、市におきましては、一昨年、岩手県で発生した大雨による河川氾濫などの災害事例を教訓に、河川の水位が分かるようライブカメラを設置するなど、水害への備えを進めており、かなり充実してきているように思います。また、災害現場の状況把握や人命救助などに生かす災害情報の収集力などを強化するためドローンの活用推進に力を入れています。

関係機関との連携強化も考え、昨年の3月には、あきる野市、秋川消防署、五日市警察署、福生警察署の職員を対象としたドローン講習会を開催しました。ドローンについては、災害発生時の情報収集だけでなく、観光分野での市の魅力発信の強化、獣害対策など、さまざまな分野で活用を推進していきたいと考えています。
また、㈱セブン-イレブン・ジャパンと、災害時の支援のほか、地産地消や市内産の農林水産物の開発及び販売など9分野における連携・強化を謳った「地域活性化包括連携協定」を締結し、地域の更なる活性化を目指しています。

 

―介護分野において、柔道整復師は機能訓練指導員として機能訓練を行える職種であります。地域包括型ケアシステムの中に、柔道整復師の参入は可能でしょうか。澤井市長のお考えをお聞かせください。

そのことについては、私自身は可能ではないかと考えており、既に、市の事業を受託していただいております。ただ、全体の中でどういう役割分担ができるのかということは、やはりしっかり検討する必要があると思っています。

申し上げたとおり、現在、東京都柔道整復師会の西多摩支部に入っておられる方々に、介護予防の中の委託事業にご参入いただき、ご協力いただいており、地域包括ケアシステム構築の中の一端を既に担っていただいております。

 

―地域創生について。あきる野市の将来展望をお聞かせください。

市は現在、あきる野市まち・ひと・しごと創生総合戦略に基づいて、地方創生に係る定住促進や雇用創出、地域活性化などの取組を進めておりますが、圏央道のあきる野インターチェンジに近接する初雁地区では、誘致した2つの企業が操業を開始し、武蔵引田駅前の富士通跡地についても医療系企業の進出が予定されていることから、今後の地域における雇用創出に期待を抱いています。また、あきる野ルピア2階の「創業・就労・事業承継ステーションBi@Sta」と併設する、子育て支援拠点施設「子育てステーション ここるの」は、開設以降、親子や子育て世代の方々の交流の場として利用されています。
市では今後も、魅力に溢れ、活気のある地域社会の実現に向けて、地方創生に係る各種取組を推進していきたいと考えています。

大勢の都民の皆様にバーベキューなどで「秋川渓谷」に遊びに来ていただいており、市長としては、地元の商店街を少しでも利用していただけると有難いと思っています。圏央道のあきる野インターもできましたので、東京のオアシスとして、もっともっと多くの方に訪れていただければ嬉しく思います。また、「瀬音の湯」という温泉もございます。代表取締役が市長の私になっております(笑)。売店には地元の名産なども置いていますので、是非、一度いらしてみてください。

 

 

●澤井敏和氏プロフィール

生年月日:昭和24年9月24日
日本大学農獣医学部卒業
武蔵野市役所
あきる野市議会議員(あきる野市議会議長)
あきる野市長(平成27年10月~)
趣味:野球
座右の銘:温故知新

 

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