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スペシャルインタビュー:厚生労働省老健局総務課介護保険指導室長・遠藤征也氏

2016/07/01

―平成30年に向けて地域包括ケアシステムを進めていく中で、今後どのようなことを重点にされていくのでしょうか。また介護職の人の身分の向上についても何か対策をお考えでしたら教えてください。

平成26年の改正で地域支援事業など見直しを行い、新たに在宅医療・介護連携推進事業などが様々な事業が創設されました。これらの事業が保険者を中心とし専門職、地域住民等とどのような方向性で推進していくのかを共有・合意し展開していくことが大事だと思います。また介護に従事する方々が将来の自分に期待できるようなイメージを持って頂けるよう少なくとも全産業の平均賃金まで上げる施策が必要ですし、もう1つは、努力されている方がきちんと評価されるシステムの構築が必要不可欠です。そのためには1億総活躍プランの中で賃金改善の話が出ていますが、処遇改善加算含めさらなる国の財政出動があってもいいかと思います。それらの取り組みを推進することにより、介護職の身分の向上、介護という業務に対する評価やイメージもかわる可能性も出てきて、結果として人材不足の解消に繋がっていく事を期待しています。

 

―今後の超高齢化社会において運動能力の維持管理が重要なテーマの一つと感じます。運動能力の維持とはいいますが、現実に高齢者は運動器の一部に退行性の疾患を抱えながら運動能力を維持あるいは改善しなければなりません。単に痛みを取るという考えや、単に言葉で指導するということではなく、退行性変性を起こした多少の疾患を抱える中でのQOLを維持する、あるいは運動能力を改善するという手法は、柔道整復師がこれまで現実に行って来た業務内容そのものとも言えます。そうした中で介護分野では柔道整復師は機能訓練指導員として機能訓練を行える職種以上にその能力を生かせるのではないかと思います。地域包括型ケアシステムの中に柔道整復師の参入は可能かどうか、遠藤室長のお考えをお聞かせください。

柔道整復術というのは、身体に傷や負担を極力与えない優しい治療技術として人間の持つ治癒能力を最大限に引き出すというか、発揮させる治療を行い今まで様々な分野で活躍されてきたと思います。なんと言ってもその歴史も古く長年の地域での活動により多くの方々から信頼されていると思います。依然、医師に対する敷居が高く感じられる方も多いかと思いますし、施術は身体に直接触れながらコミュニケーションを通して行うので患者さんとの関わりも強くなります。高齢者の場合は単なる痛みを軽減するという治療だけではなく、生活全般の中でどのような事に注意したら良いのか等のアドバイスを求めている方も多いと思います。特に医師の治療とは違ってそういう意味で今後高齢者が急増する中、地域において住民が生活を営む中での身近な「身体のアドバイザー」となって頂きたいと思います。

介護分野では柔道整復師は機能訓練指導員として活躍されてきましたが、今後、「新総合事業」が展開される中で地域において住民の方々が主体となった様々な活動が展開されると思います。例えば今でも各地で住民主体の体操教室や住民主体のサロンなどが開催されており、まさに柔道整復師の方がそういう場に出向きQOLを維持する為にはどのような事に注意すればいいのか、あるいは運動能力を改善する為に家でできる事はどのような事なのかなど専門的な見地から助言や支援をして頂きたいと思います。特に地域には多くの柔道整復師の方々がおり地域の現状なども十分ご存じですから皆さんで協働してこの地域で運動能力の低下防止、改善の為にどのような取り組みができるのかなど、是非考え活動して頂きたいですし、行政等に対して提案して頂きたいと思います。これだけのマンパワーが地域に密着して活動しているということは、大きいと思います。

柔道整復師の方は非常に高い専門技術を持っているので、予防を含めいろいろな場面で指導できると思います。一人では難しくても地域の先生何人かでお仲間を作ってみんなで一緒に回ることは出来るのではないかと思います。とにかく稼働層を含めて地域の人口が減って全員が担い手となる時代に突入しつつあります。このような状況の中で地域に密着して活動している専門職の方はまだまだ多くおられません。そういう意味で地域の専門職として地域に貢献してもらう意義は非常に大きいと思いますし、今後益々期待しております。

 

●遠藤征也(えんどうゆきや)氏プロフィール

<現職>
厚生労働省老健局総務課介護保険指導室長。

<略歴>
昭和60年厚生労働省入省(旧厚生省) 社会援護局、大臣官房、総務省を歴任。
介護保険制度創設に従事後、平成14年から平成21年、平成24年から老健局において制度改正に従事。
平成27年4月より現職。

<活動>
地域福祉ケアマネジメント推進研究会主催
東久留米市社会福祉審議会、行財政調査会等歴任。

<著書>
「医療と介護の連携のための疾患別ケアマネジメント基礎講座VO1」
「ケアプラン点検支援マニュアル活用の手引き」等

 

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