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スペシャルインタビュー:柏市長・秋山 浩保 氏

2015/11/16

柏市の人口は、406,835人。内、高齢者人口は96,931人で、高齢化率は約23.8%である(平成27年4月1日現在)。

柏市は、1960年代より東京のベッドタウンとして人口が急増。1970年代以降は、多くの商業施設が進出、商業地として栄えてきた。その後、柏の葉地域で東京大学・千葉大学・産学連携施設を中心とした文教地域が形成され、柏の葉キャンパス駅前サテライトは、公・民・学の共同研究と社会実験の全学的拠点になっている。

そんな柏市にふさわしい秋山市長に、『柏プロジェクト』を中心に卓越した見解をお聞きした。

 

地域包括ケアシステムのモデル地域として計画的に推進、市民が共に助け合い支え合うまちづくりを目指しています!
秋山氏

柏市長
秋山 浩保 氏

 

―日本の社会保障制度について秋山市長のお考えをお聞かせください。

私自身、とても良い制度だと思っております。特に国民皆保険制度は本当に素晴らしいと思います。中にはいろいろな批判が出てきていますけれども、今の介護保険制度に関しましても、診療報酬に関しましても制度がキッチリ回るように上手く設計が出来ていると思っております。ただ医療も介護も、カルテのデータを単に収集して点数だけを計算するのではなく、過去のデータを集めてこういう疾病が起こる人は過去にどういう病歴があったのか等、健診に活かすまでには、まだまだ一元化されておりません。大企業の健康保険組合さんでは既にやっておられますけれども、長期間のデータの蓄積が必要だと思いますし、データをもっと活用して良い意味の前向きな予防、或いは加重診療、過剰投薬を避けるといった活用の仕方は余地がもっとあると思っています。また、確かに良い制度ですが、人口構成によっては財政負担が大きくなりますので、それを国民の皆さんにしっかり認識していただいて、維持していかなければ、良いとこどりだけでは非常に難しいですし、とかく全てにおいて良いとこどりになりがちですので、もう少しその辺は我々がしっかり正しく伝えていかなければという思いを持っています。

 

―人口減少社会に突入しました。超高齢化の進展に対する柏市の取組みを教えてください。

一般的に役所等では高齢化というのは65歳以上となっておりますが、現実的には75歳位まで殆どの方がお元気なので、社会設計という意味では75歳以上の方に注目をすることになります。従って柏市の場合、絶対値が約2倍になりますので、そういう意味ではその方々に対して、民間の方達と一緒になって対応が出来る医療及び介護事業の量を確保できるのかというのは、とても大きな課題です。とにかく量的な確保をしなければならないのですが、人数が増えれば病院を増やさなければという話になります。柏市の場合、厚労省の方針で一部療養病床のベッド数を少し増やしても良いということにはなっております。しかしながら、例えば今の人数が2倍になったとするとベッドも2倍に増やすということはもうあり得ません。おそらく自宅や介護系施設で療養しなければならないということになりますので、在宅で病院や介護施設並のケアが出来るような体制を作るべきであるとして様々に取り組んでおります。勿論、全てが在宅というのではなく、施設ケアと在宅ケアが二本柱になります。施設は民間事業者に作っていただいて、さらに生産性をあげるように、今までのいろいろな知見を学んで活用していくことになります。在宅ケアを面で推進していくにはそんなに数多く事例はないため新しいチャレンジです。実際には民間の事業者さんが取り組まれる訳ですが、その民間の事業者さんが個々バラバラにやるのではなく、意識と情報を共有化しながら仕組みとしての在宅ケアを構築しましょうというチャレンジを現在行なっております。そういう意味で市役所の象徴的な対策として、在宅ケアの体制を作るべく部門を意図的に設けました。通常であれば高齢者福祉の部署が担当しますけれども、それとは別に「地域医療推進室」という専門の部署を作りまして、推進しております。それが柏市の特徴といえます。

 

―近年、社会保障費の財源が苦しくなっていることに加えて、高齢社会で医療費も介護費も大変な増加が見込まれ、それに伴い在宅ケアを含め包括型の医療ケアシステムの構築が求められております。現在地域包括ケアのモデルとして進められている「柏プロジェクト」についてお聞かせください。

日本全国いろいろな自治体がありますが、中でも首都圏は団塊の世代のボリュームが他の自治体よりも非常に大きいんです。そういった首都圏の高齢化の問題、要は絶対的に数が増えるということですが、僅か10年15年でやってきます。

その間、高齢者の方達が介護のお世話になる、或いは医療のお世話になる時の体制が整備できるのかということが大きな問題で、先に話しましたように、そのために〝病院をいっぱい作ります〟や〝特別養護老人施設を作ります〟というのは、国の方針でおそらく出来ないだろうと。であれば、今ある病院、今いらっしゃる開業医の先生、介護の皆さんと協力をし合って、患者さんは家や施設に居て生活しているけれども、病院と同じような形で健康状態を管理するような仕組み、これが在宅ケアですが、それを面で展開する地域包括ケアのチャレンジをしています。

それだけを言うと簡単なように思われます。もう10年も前から言われていることです。しかしながら、言われていても何故それが拡がらないのかというと、一番の理由は在宅医療を行う医師の数が圧倒的に少ないからです。(中略)まずは〝在宅の先生を増やしましょう〟というのが一番最初の目標でした。24時間365日の負担を減らすために〝チームで取り組んでください〟ということで開業医の先生がチームを組めるように医師会と我々が間に入って、チーム制で出来るような仕組みを作っています。例えば1週間休む時には、替わりの先生を患者さんや家族の方にちゃんと紹介をしながら、主治医・副主治医というかたちで、少しでも負担感を減らすようにしています。また先生自身が負担感を減らすテクニックをマスターされます。結局家族は心配だから何でも電話をしたくなってしまうんですが〝こういうことがあるかもしれないけれど、心配しなくても良いよ〟と前もって言っておけば、家族の方も大丈夫なんだと様子を見て、朝になってから電話しようとなるんですね。つまり先生のテクニックでその負担を減らすことも可能です。それを今先生も一生懸命やられていて、訪問看護師さんと上手くチームを組んでおられます。訪問看護ステーションは数人の看護師さんがいらっしゃいますので、24時間365日稼働できます。そういうことで、訪看さんに対応してもらって負担感を減らす仕組みを我々としては設計しました。 また、東京大学・柏市医師会と一緒に在宅医療で必要な総合医になるためのプログラムを作成しまして、もう一度学生の時に戻っていただいて、最初はベテランの先生に同行し、訪問診療を知っていただくような内容も作りました。元々ベースがございますので、それを受けていただくことで不安感を解消していただくことになります。

もう1つは、介護の皆さんとのチームを本当に組めるのかという問題です。柏市では、「顔の見える会議」といって、自治体が中心になって地域包括ケアに関連する様々なお医者さん、歯医者さん、薬剤師さん、訪問介護をされる方、理学療法の方、作業療法の方々、殆どすべての関係職種の方々に案内を出しまして、いろいろな形でテーマ別に症例研究等を行い、平成24年から27年2月まで計12回開催しています。毎回100人以上集まり、参加者は延べ2223名を数えます。要は顔見知りになることで〝貴方はあの地域でそういう仕事をしているんだ〟って知ることで、何かあった時に〝こういう患者さんが出たので〟と、お互いが連絡し合えます。そういう会議を何度も何度も重ねて、まず人間関係を様々な専門家の間で作っていくことを意識的に行っています。お蔭さまで在宅ケアを行う先生が増えて、その先生達と一緒にチームの人たちも動きだしました。やはり「顔の見える会議」は良いということで、参加したいという人が沢山出てきまして、一昨年くらいから軌道にのった感がしています。それに伴って在宅で看取りをするケースも劇的に増えました。在宅ケアでは、在宅医療の先生を増やすこと、介護との連携を深めること、もう一つは市民の意識を変えていくことが大事です。

まだまだ多くの市民は、在宅ケアは心配だとして、病院に入院させたいという気持ちがあります。しかし、在宅でも殆どのことが出来ますし、落ち着けば病院から出されてしまいますから、在宅という選択肢をもっと知ってもらいたいです。また、死生観をもつことも大事です。患者さんにとって如何する事が一番幸せかというのを患者さんも家族の方も分った上で、どうやって安らかな最期を迎えさせてあげるか。やはり覚悟をもつことが大切です。そうは言いましても、初めて自分の親が亡くなるということは、確かに不安です。いま、辻先生たちと一緒に、看取りについて柏市の市民に伝える方法を模索しておりまして、多くの方の心に響くように、看取りを経験した患者さんの家族の人たちに話していただくビデオを撮って、節目節目で家族の方の心境の変化やどういう葛藤があった等、映像に残してそのビデオを観ていただきたいと考えております。親や配偶者がそういう状態になった時に備えて観て頂くことが大事なので、其処にも力を入れないと拡がらないと思います。我々が一生懸命在宅ケアといっても、患者さんのほうが〝在宅ケアは結構です〟というのでは話になりませんので。

 

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