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『「匠の技 伝承」プロジェクト 2022年度新規重点部位講習会』開催

2022/11/22

2022年11月6日(日)、日本柔道整復師会会館(東京都台東区)において、『「匠の技 伝承」プロジェクト 2022年度新規重点部位講習会』が開催された。本講習会では「鎖骨・肋骨骨折」を重点部位とし、オンラインにて整復・固定技術実習と超音波観察装置による観察法実習が行われた。

指導者養成講習会

長尾副会長
長尾副会長

(公社)日本柔道整復師会・長尾淳彦副会長は「すでに数年にわたり「匠の技 伝承」プロジェクトに取り組んでいる。各都道府県柔道整復師会でオンラインにより重点科目を勉強していただき、その後対面でも講習を行い、全国でその技術を継承していただく。今後もこのような活動を続けていくが、より多くの骨折・脱臼の患者に接骨院へ来ていただくこと、そして柔道整復施術所に超音波観察装置が完備され患者のための治療ができるという環境を整えることを目的としたプロジェクトだということをご理解のうえ臨んでいただきたい」と趣旨説明を含めて挨拶。

森川学術教育部長
森川学術教育部長

森川伸治学術教育部長は「柔道整復術公認100周年記念事業である「匠の技 伝承」プロジェクトは、日本の伝統医療「柔道整復術」として継承されてきた骨折・脱臼の徒手整復術を後世に伝えるために、指導者の養成と会員への技術指導を10年計画で行っている。基本技術を平準化することを目的として47都道府県の指導者候補の先生方を対象に指導者養成講習を行っているが、今、技術を伝えていかなければ骨折・脱臼の徒手整復の技術が継承されないだけではなく、柔道整復業界を支える制度そのものが脅かされると考えている」と、このプロジェクトの重要性を語った。

 

整復・固定技術実習

整復・固定技術実習では、講師の山口登一郎氏により、鎖骨骨折および肋骨骨折の整復固定法が実演された。

山口講師
山口講師

山口氏は「鎖骨の整復は臥位整復法にて行う。今回はクラビクルバンドを使用して固定する。脊柱の中心にパッドが当たるようにクラビクルバンドを当て仮固定を行う。ベッド上にバスタオルを円柱状丸めたものを縦に置き、その上に患者を脊柱の真ん中に手を当てながら臥位とし、鎖骨が正常な位置に近づくように胸郭が開いた状態で寝たままにすると、およそ2~3分で整復位に戻ることが殆ど。この状態で骨折部が上手く整復されていない場合は、中枢骨片を軽く押さえ、上肢帯を持ち上げ末梢骨片を近づける。鎖骨の固定法で一番大切なのは胸郭の拡大である。8字帯の形式で、クラビクルバンドのストラップを調整し胸郭を開くようにするのがポイント。腋窩の管理は大切で、神経・血管の圧迫による障害をさけるため枕子を利用するのも良い。肋骨骨折は、今回はバストバンドで固定する。固定時には呼気を利用することがポイント。息を吐いた状態でバストバンド締め、その上に三裂包帯を巻いていく」等、要点を押さえて解説。

その後、各会場の受講者が実技を行い、オンラインにてモニター越しに山口講師による確認が行われた。受講者は口述しながら整復・固定動作を丁寧に行い、それに対し山口講師は術者の手の位置や包帯の巻き方、患者の肢位に至るまできめ細やかに指導し、「鎖骨骨折のようにきつく固定しなければならない場合は特に患者の協力も必要となるため、患者とのコミュニケーションも重要。様々な固定法を考えてみることも今後の課題になるだろう」と総括した。

  • 講義
  • 講義
  • 講義
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超音波観察装置による観察法実習

超音波観察装置による観察法実習では、実習に先立ち、森川学術教育部長がエコーを扱う上でのルールに言及し「超音波観察は非常に重要だが、最初からエコーありきではなく、問診・視診・触診の三診をしっかりと行い、自分の評価が間違っていないことや施術の進捗状況の確認として超音波観察を使用していただきたい」と述べた。

佐藤講師
佐藤講師

続いて講師の佐藤和伸氏による観察法実演がスタート。
佐藤氏は「鎖骨の場合は非常に凹凸が多いため、エコーゼリーを多めに塗る。まずは長軸走査で上腕骨頭を描出する。結節間溝から大結節を描出し、そこから中枢にプローブを移動させ肩峰を描出する。肩峰から少し中枢に行くと肩鎖関節があり、鎖骨が描出できる。鎖骨骨折を観る場合は転位が大きく長軸走査では観察が難しいため、短軸走査のほうが適している。プローブを反転させながら常に鎖骨が描出できるようにスライドさせていくと鎖骨の線状高エコーが出てくる。離断性の線状高エコーが出てくればそこが骨折部位となる。肋骨骨折の場合は、まずは短軸走査で肋骨を描出し、そこからプローブを反転させると一本の線状高エコーが出てくる。肋骨の線状高エコーかどうか判断しにくい場合はもう一度反転させ、骨の下に音響陰影が出ていることを確認する。臨床では線状高エコーが離断しているかどうかというよりも、出血による線状高エコーの無エコーがあるかなど、骨折の周りの軟部組織も非常に重要な参考資料となるということを意識してほしい」と説明した。

実技確認では、佐藤氏は各受講者のプローブ走査、描出画像をじっくり検証し、描出のポイントを的確に指導した。

  • 講義
  • 講義
  • 講義
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最後に、学術教育部の大河原晃理事は「整復・固定とエコーにはまだたくさんの課題がある。各受講者には繰り返し練習していただき、しっかりした技術を身に付け、次の世代に繋いでいただきたい」とコメントし、閉会の辞として富永匠の技プロジェクト推進室長は「皆さんには日本で骨折・脱臼を扱えるのは医師と柔道整復師だけだという事実を大切にしながら頑張っていただきたい。骨折・脱臼の患者が来た時にしっかり整復・固定ができるよう、日々研鑽を積むことが重要」と述べ、閉会となった。

  • 大河原理事大河原理事
  • 富永室長富永室長

 

次回の新規重点部位講習は、肘関節の後方脱臼をテーマに2023年2月19日(日)にオンラインにて行われる予定だ。

 

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