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ビッグインタビュー:(公社)日本鍼灸師会 会長 仲野彌和氏

2017/05/16

―2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けてどのような活動を展開されていらっしゃいますか?

いま日本でアスリートに帯同しているトレーナーの半分は鍼灸師でしょう。そして、2020年東京オリンピック・パラリンピック顧問団の中に委員として本会からも入っております。大事なことは、トレーナー業務をされている鍼灸師がたくさんいて2020年のオリンピック・パラリンピックにおいて、様々な支援をしたいという思いを持っているけれども、選手に帯同して、一緒に動くことが出来ない鍼灸師がたくさんいるということです。

そういう思いに応えられる要素は、一つは会場内でオリンピック・パラリンピックが行われた時に選手が連れてくるコーチをはじめ、スタッフの方達のサポートであれば出来るかもしれません。オリンピック・パラリンピックはスポーツの祭典ではあるけれども、日本のレガシー、所謂歴史的に長く培われたものや芸術的なものを含めて紹介する機会でもある訳です。

そういう意味でもオリンピックに来られた方たちに身体を介してトレーナーの役割とその効果について多くの人々に鍼灸を紹介するチャンスだろうと捉えております。従って選手村の中で良いブースや適切な場所がとれたら良い。また、レガシーとして紹介する場所を確保することが出来れば良いと思っています。

当会だけではなく、先ほど話した3団体と東洋療法学校協会の4つが一緒になって、鍼灸振興のために組織を作っております。大会の前年度に日本国内で行われる各地のキャンプでは、各地の鍼灸師会を活用してもらえるようになれば良いと思っております。

日本鍼灸師会は20年以上前から、全国各都道府県鍼灸師会で専門領域研修会「スポーツ傷害」を開催しており、昨年調査したところでは全国120か所の市民マラソン大会などへケアチームを派遣しているという活動実績がありますから、メディアを通して世の中にもっともっとアピールしていきたいと考えています。

 

―昨年の11月に日本で23年ぶりに『WFAS東京/つくば2016』が開催されましたが、その意義と成果について教えてください。

約1800人が参加されました。学会運営も円滑に出来ましたし、好評を博することが出来たと自負しております。また、思っていたよりも多くの国々で日本の鍼灸師が活躍していることが分かったことも大きな成果でした。

この世界大会の前に、東京でWHO「国際疾病分類ICD-10」の改定作業の会議が行われ、そこでICD-11の中に伝統医療の鍼灸が加わることが内定し、来年の総会で正式に決まることが発表されましたので、世界に向けて広く発信出来たと思います。

 

―当サイトは柔道整復師さんがお読みになるサイトです。仲野会長は三重県柔道整復師会の常務理事を務められていた方ですが、今の柔整業界についてどのように思われていらっしゃいますか?何かご提案があればお聞かせください。柔道整復業界には「鍼灸接骨院」というような名称の接骨院があますし、また大学や養成校では両者共立している場合もあり、鍼灸業界と柔道整復業界では関連している部分が多々ありますが、今一つ連携や協調がないように感じます。今後の両者の関係に関して何かお考えがありましたら、お聞かせください。

例えば、内科や外科は、同じ医科の中に含まれておりますが、そういう発想は柔道整復師会、鍼灸師会においては両者ともに誰も持っていないのではないでしょうか。つまり、医療人としての「核」を持っていないとずっと思ってきたように思います。ある意味では保険が使えるということは、医療人であることは間違いありませんし、ステータスでした。当然節操もありましたし、やはりそこは慎重に行ってきたと思います。鍼灸師は、柔道整復師のような保険の取り扱いはできないけれども、〝自分は医者が治せないものを治せる〟という自負もありました。常に裏方だったけれども、生き様はみんな格好が良いものでしたし、それなりに誇りがありました。

そういった中で未だ鍼灸界の中には医療人としての魂を持っている人がたくさんいたものですから、鍼灸業界を応援しようと思って仕事をしている訳です。
これまで関係団体の皆さんとは多くの機会で接してまいりました。人は接しなければ何も出てこないんです。意見が反対であればあるほど話し合って、何故そうなるのかということをお互いに突き詰めれば、意外に同じ土俵で戦えると思います。たとえば「療養費を考える会」というようなチームを作って、一緒になって取り組めば良いだろうと考えているところです。

看板については個人的なことですが、私の家は3代前から90年間も掲げている看板ですから、簡単には変えることは出来ませんが、看板規制をしっかりやらなければダメだろうと思っております。つまり鍼灸院、接骨院あるいは整骨院に対し、こういう名称でなければダメですよと決定されれば、看板を並立して掛けるしかないでしょう。そういう方法もあると思います。業態を正常化する意味でそういう取り決めを行う検討委員会をつくらなければいけないと思っていますが、このように様々山積した事柄に細かな対処をしなければいけないことがあり、考えていきたいと思っています。

柔道整復師は鍼灸師を使って保険請求を行っていますが、この場合、中できちんと分けないと柔道整復師だけの免許を持っている人、鍼灸師だけの免許を持っている人に迷惑がかかりますので、これは絶対厳しく規制しなければいけないでしょう。

次の業団を考えるということで厚労省医事課担当者にも立ち会っていただいて、日本柔道整復師会と日本鍼灸師会で話し合いを持つことも非常に大事であると思いますので、ぜひ実現させたいと思います。

最後になりますが、"不易流行"と言いますか、過去の良かった時のような形に戻すところは戻し、みんながフィードバックをしながら、新たに前向きに生きていくための仕事に誇りをもってしっかりやらなければいけません。
今、大変革の時を迎えていますから、いずれ歴史的な転換がなされると思います。心して先を見ながら進まなければと思っています。

 

 

●仲野彌和(ひろかず)氏プロフィール

昭和21年三重県四日市市生まれ。
医学博士(三重大学)、鍼灸師/柔道整復師/米国政府公認カイロプラクティックドクター。
昭和44年、東京農業大学卒業。昭和46年、花田学園卒。柔道整復師免許取得。昭和47年、花田学園卒。鍼灸師免許取得。昭和51年、米国カリフォルニア州アキュパンクチャー(鍼)ライセンス取得。昭和52年、米国ロサンジェルスカイロプラクティック大学卒業。昭和57年、社団法人三重県鍼灸師会理事。平成1年、社団法人三重県柔道整復師会理事。同年、医学博士(三重大学医学部)。平成6年、財団法人全国療術研究財団評議員。平成14年、社団法人三重県鍼灸師会会長。平成15年、社団法人日本鍼灸師会常任理事広報局長。同年、鈴鹿医療科学大学評議員。平成16年、ユマニテク東洋医療専門学校校長。平成23年公益社団法人日本鍼灸師会会長就任、現在に至る。

 

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