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ビッグインタビュー:(公社)日本柔道整復師会 保険部長 三橋裕之 氏

2016/12/16

―厚労省の方々に勉強会を開いているとお聞きしましたが、どういった内容か、教えてください。

今まで厚労省の方々が日整会館に来られることはありませんでしたが平成24年の専門委員会開始以降は日整会館に来て頂く関係にまでなりました。これまでの日整と厚労省の関係の中で、専門官も含めて担当者の方が3日間に亘って、柔道整復の制度等について、制度は厚労省の方達が専門ですけれども、公益社団柔整師と個人契約柔整師との相違や業界の問題点を理解頂くために歴史や学校教育、そして柔道整復術の中でも特に骨折や脱臼の整復法と固定法の動画を実際に見て頂いて、先ず柔整に対する知識・理解を持っていただいております。

さらに、私の施術所に見学に来て頂き実際に接骨院の現場を見て頂きました。このことは、今までは年に何回か形式的に顔を合わせる程度の関係から、国と業界がいま本気で適正化に向けて共に走り出した関係になったと言えると思います。私の接骨院に来てもらうことで〝こんなに電療器機があるんですね、これ全部かけても80円ですよね〟みたいな話になって、その辺を見てもらうことも大事であると実感しました。今まで国が認めてきた柔道整復師という職種は、このような技術があったからこそなんだという確認をしてもらうことが大事です。いま我々も真剣に適正化に向けて進めていますし、国もそのような形で進めてくれております。

 

―柔道整復療養費検討委員会で、亜急性について結論をどこでだされようとしているのか、いろんな学会でも用語の統一を強く言われているところですが、その辺について業界はどのようにされようとしているのか教えてください。

繰り返しになりますが、「支給基準の明確化」として課題に挙がっておりますので、おそらく用語の統一等は進んでいくと思います。「亜急性」は非常に大きな問題ですが、実はこの専門委員会が始まる前に保険者と我々施術者側とで意見交換会が非公式でしたが3回ありました。その段階では、一番に問題になっているのは、「亜急性」の解釈ではなく、所謂ちゃんとした負傷原因があるか否かということで、保険者さんに納得して頂いておりました。最初に問題とされたのは、3部位の負傷原因を書く時に個人契約の一部団体より提出された申請書において、その負傷原因が〝亜急性による負傷〟と書かれていて、これが問題になった訳です。これは明らかに支給基準外であり、ここをしっかり周知徹底させなければならないという話で落着しました。

ところが今回、臨床整形外科学会の委員のほうから、「亜急性」について非常にクローズアップされましたが平行線になりますし、結局我々は医師と争う訳にはいかないということもあり、我々としては政府から出されている回答が全てだろうと思っていますので、これに準ずることになります。先日の専門委員会の最後に「亜急性」の話が出ましたので全整連の田中会長より〝全て医学用語に変えろということであれば、例えば初検料を初診料にするとか、再検料を再診料にするとか、それを全て変えましょうか?〟と提案され委員は黙ってしまわれました。国が出した回答を簡単にひっくり返すことは出来ません。しかも「亜急性」という文言は学校の教科書で学生にも全て周知していますので、それを一気に変えるというのは非常に難しいことです。結局は言葉の問題なのかということなんですね。日整としても富山大学で検証して頂いた「亜急性理論」を持っているのですが、ただそれで闘ったとしても何の解決にもなりませんし、たとえ亜急性の論議を詰めていっても何の適正化にも繋がりません。今回の専門委員会の目的はあくまでも柔整療養費の適正化であり、反社会的勢力の問題もあって、如何に適正化をするべきかという問題について議論している中で亜急性を変えたところで適正化に繋がらないと思います。

つまり、我々は外傷を扱っており、原因のある外傷であれば請求できますので、亜急性云々は全く関係ない話です。従って我々に対しての議論ではなくなっておりますから、後は国がどのように判断をするのか、もし文言を変えるのであれば、それに我々は従うだけで、文言を変えた後にどういう取り決めを設けるのか、その辺の議論が重要になるでしょう。どちらにしても我々は一番に適正化というところで委員会に臨んでおりますから、これ以上議論しても仕方がないでしょうというのが我々の受け止め方です。つまり、そんなことよりもっと議論しなければいけないことがあるということです。

 

―業界を死守するために、降りかかる火の粉を払い続ける攻防戦だけではなく、打って出るというか攻めていくような対策というのは、何かお持ちでしょうか?

何度も繰り返しになりますが、実際に専門委員会に挙げております「公的審査会の権限強化」というのは、柔整審査会による申請書の返戻、施術所調査、患者調査、呼び出し等がセットになっている訳です。あともう1つは先ほどからお話している「施術管理者の要件強化」、これも我々のほうから出した案件です。しかも電子請求に絡めた支払基金についても同様です。これらが早期に実施されることが一番の重要課題であると思っておりまして、我々決して守っているだけではなく、攻めております。

 

―今後の将来展望をお聞かせください。

柔道整復師が、柔道整復という仕事に誇りを持って継続していけることが国民の保健福祉に繋がると思っております。そのためには、柔道整復師の資質の向上と業界の環境を変えていく必要があります。

環境の変革に関わる当面の課題は、いま専門委員会で挙げている検討事項に加えて「電子請求の導入」が一番の問題だと思います。電子請求、支払基金、そして審査支払業務における「公的審査会の権限強化」が、最重要課題であると思っていますけれども、これを実現することによって今よりもっと統一のとれた審査がスピーディーに、しかも安価で行えます。結果として、正しい柔道整復師の様々な負担が軽減されていけば、将来的に良いということで、日整では全力を上げて実現しようと努力をしている最中です。

これまでの長い柔道整復の歴史の中で2回大きな危機がありました。1回目は明治維新、2回目は第二次世界大戦後のGHQによる日本統治の時で、いずれも日本という国の転換期でした。当時は柔整業界が国策に大きく揺さぶられ危機を迎えました。今回も国の規制緩和や社会保障制度の変革によって柔整業界が大きく揺さぶられているのではないかという風に私どもは捉えており、又このことは柔整業界にとって3回目の消滅危機であると捉え〝いま我々は闘っています〟という話をさせて頂きました。具体的には昭和63年の個人契約の開始、平成10年に柔整養成校の規制緩和によって、柔整業界がコンプライアンスやガバナンスを失ってしまったことが今回の危機の要因ではないかと捉え、現在ようやくその危機から脱する方向性や方策が見えてきましたので、これを現在進めております。

柔整業界を再構築する仕組みが作られ、来年の4月から柔整業界が所謂「黒」とされる柔道整復師の請求を排除していくことを政府が決定し、指導を行うことになりました。所謂「黒」が排除されていく過程で、「白」が再評価されていく環境が構築されていくのではないかと期待しています。今後、医療費と介護給付費の抑制が求められる日本において、地域に根ざした正しい真っ白な柔道整復師は、医療の分野でも介護予防の分野でも地域に求められるに値する社会資源であれば、活躍の場は必ず増える筈です。

柔道整復師のますますの資質向上に期待して、またそうなれるように我々業界として努力していきたいと思っているところです。5点に絞って申し上げると、1点目は2019年のラグビーの世界大会、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに積極的な支援を我々が実施していきます。2点目は、柔道整復の真摯な学術的分析と医学との比較を早急に実施することが、恐らくガイドラインにも繋がっていくのではないかと思います。3点目は、柔道整復師制度を常に医師と連携して遂行していきます。4番目は柔道整復術を継承し、その効用を深く国民並びに広く世界に周知をしていく。5番目は行政、立法の組織に深く我々が関わっていくことが大事なことであると思っています。いま日整は、工藤鉄男会長をはじめとしてそういう体制になっています。工藤会長でなければ、この改革は出来ないと思いますし、その行動力は群を抜いたものがあります。おそらく個人契約の方々もそういう意味では、理解し期待を頂いていると思います。窓口としての全整連と協調しておりますので、もっともっと他の個人契約請求会社・組織並びに無所属の個人契約の方々に公益社団柔整師会若しくは全整連に入っていただけることを期待しております。

 

●三橋裕之氏プロフィール

略歴 昭和53年、学校法人大東文化学園大藤医学技術専門学校柔道整復科卒業。柔道整復師資格取得。同59年、東京都豊島区にて三橋接骨院開業。平成13年、社団法人東京都柔道接骨師会理事、学術部長1期、保険部長6期。同27年、公益社団法人東京都柔道整復師会副会長。

平成17年、社団法人日本柔道整復師会保険部員6年間。同24年、公益社団法人日本柔道整復師会理事。同26年、公益社団法人日本柔道整復師会理事・保険部長。
平成27年、(公財)柔道整復研修試験財団評議員会議長。同28年、国家試験出題基準委員。審査会委員。
平成13年より柔整療養費審査委員(国保、社保、労災)。
平成20年より学校法人滋慶文化学園仙台医健専門学校講師。柔道四段。

 

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