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柔整探訪、業界内に埋もれている秀でた先生を発掘!
【第2回 はしぐち整骨院 橋口浩治  氏】

2014/01/16

―もし、いろんな疾患の定義が出来たとしても、業界全体の共通認識にならなければダメでしょうし、同時に学校教育に反映されなければ意味がないように思います。その辺についてはどのようにお考えですか?

傷病名問題を解決する必要はあります。例えば、テニス肘はスポーツ障害の代表的な傷病名ですが、これは肘関節捻挫なのか。前腕部挫傷なのか。上腕部挫傷なのか。施術者の判断に委ねられているのが現状と思います。上腕骨外側上顆炎ですので上腕部挫傷とすべきなのかも知れません。しかし前腕部の伸筋群にも損傷があるのであれば前腕部挫傷なのかも知れません。現在の学校教育では第5版の教科書を使用していますが、この本の内容は私たちが取り扱う傷病をおおよそ網羅していると思います。しかし、先ほども述べましたが、今、養成校で使われている教科書の内容を知っているのは学生、教員と少数の向学心のある柔道整復師のみと思われますので業界の共通認識ではありませんし、在学している1万人以上の学生とは傷病の共通認識は取れますが、その習った傷病名をどうやって柔道整復負傷名に当てはめたら良いか彼らは知りません。当然、業界の共通認識にならないとまったくの無意味です。例えば大腿部挫傷(腸脛靭帯炎)、足底部挫傷(足底筋膜炎)、殿部挫傷(中殿筋損傷)というような記載方法にすれば保険者、審査委員の整形外科医、行政などの私たちを取り巻く方々とも共通認識が取れます。ひとつひとつの細かい傷病をつけることは数年後には新たな概念が生まれ傷病名に変化が起こることが容易に想像できますので、あくまでも柔道整復術の範囲で施術していることが表現されれば良いと考えています。

 

―以上のような保険者の返戻の基準がバラバラだとか、パンフレットも疑問のある内容もあったりとして、業界の一部では、そうした課題に対して、統一した基準としてのガイドラインを作成して対応していくとする動きがあるとお聞きしておりますが、そのことについて橋口先生はどのようにお考えですか?

統一した基準としてのガイドラインの作成に関して私は知りませんが保険者に柔道整復のことを色々と知ってもらう努力はすべきとは考えます。最近の返戻のレセプトを見ていると患者照会アンケートとの相違が多くなっています。それ以外に疑義が生じたものは基本的にキチンとなぜそのような請求なのかを記載していれば問題は解決しています。こちらがその請求の根拠をキチンと示すことも重要と考えます。

 

―卒後研修制度の必要性について教えてください。

私は医師なようなシステム作り、法的なバックアップが必要と考えます。実は、現在の卒後臨床研修制度が始まったばかりの頃に、キチンと決まったカリキュラムの卒後臨床研修を受けたいと思い相談をしたところ「この制度は卒業後間もない方が受けるもので先生は該当しません」と言われて残念な思いをしたことがあります(笑)。私の施術所の勤務柔道整復師には必ず受けてもらっています。なぜなら研修の内容を勤務者に提供するにはかなりの労力を割きます。また専門家に話をしてもらった方が聞き手の吸収も良く効率的です。現在の制度は任意ですから何らかの特典を付加し改善し、できれば医師のようなシステムにすることが理想です。なぜなら養成校で学んだことを臨床で理解するには特定の指導者の下で学んだ方が効率的だからです。養成校のカリキュラム内の臨床実習はとても脆弱です。私たちの頃は施術所に住み込みや勤務をしながら学校に通っていたので授業内容に共感しやすかったのですが、今はそのような学生さんは少数で、免許を取って初めて患者さんと接するため学校で学んだことと臨床との隔たりが大きいと感じています。

何よりもどこで卒後勤務するのかで、その柔道整復師の将来が決まると言っても過言ではない現状があります。いわゆる保険の使えるマッサージ施術所に勤務すれば、その方法が正しいと認識してしまいます。何が正しい、正しくないというのは基準点で変わってきます。現状はかなり不平等になっていると思います。卒業生には平等に卒後臨床ができる環境が与えられることが引いては業界の底上げ発展につながると考えます。

繰り返しになりますが、現場研修が大事ですし、あとは医療機関等の連携も考えれば、必ず医療機関で病院や整形外科で、別に見学だけでも良いので病院内でのリハビリテーションや、内科・外科では患者さんをこういう風に診察をしているといったことを見るだけでも自分たちが学校で習ったものが、こうやって活かされているんだなというのが理解できますし、患者さんがいらっしゃった時の患者さんの疾患を見つけるフィルターになって、これは運動器の傷病である、これは運動器ではなく他の原因でこういう痺れが出ているんじゃないかという鑑別診断が出来ます。それを観ていなければやはり分り難い。貴志に書かれている酒田先生は凄いなって思います。実際に患者さんを診させていただいていると、私達の範疇ではないと思える患者さんがいらっしゃいます。その時にそう思えるかどうかを習っていれば分かるんですが、習っていなければ分らないんですよね。

 

―厚労省も業界を統一して、一本化して意見を持ってきなさいと言われているようです。若い柔道整復師の先生方は個人契約の方が多いように聞いています。どのようにすればそういった若い先生方のコンセンサスを得られるように思いますか?

公益法人に入会することのメリットが大きければ必然的に若い先生方の入会が増えると思います。若い先生方と共通認識、合意を得られるよう魅力を作ってみたいとは思います。正直な話をすると私も開業前は個人契約を考えました。恩師に会のことで相談をしたら当たり前に叱られました(笑)。なぜ悩んだかというとつながりがなかったからです。また当時の高い入会金もネックでした。

 

―最後に橋口先生は今業界でどのようなことが起こっていると感じていらっしゃいますか?また、最も懸念されていることはなんでしょうか?

色々な懸念はありますが教員という立場からすると養成校で学んだことが生かされていない、もったいないという現状です。あれだけの時間を割いて「ほねつぎ」のことを学びます。外傷・障害の処置を自分の判断で対処できるのは医師か柔道整復師のみです。整形外科医になるのは1学年100人医学部生がいるとしたら何名でしょうか。少数だと思います。柔道整復師は整形外科医と連携をすることでより業務がしやすくなり国民のニーズを満たせます。整形外科医も保存療法で対応可能な症例に関しては柔道整復師に任すことができれば整形外科医としての専門性をもっと出せると考えます。特に地方では医師不足が迫っています。そのような時だからこそ、私たちがなぜこの業務ができるのかの根拠を示し前進していけば国民医療に大きく貢献できると考えます。

一柔道整復師の立場からすると他者との交流なしに継続的に施術所を運営できる現行のシステムを懸念します。柔道整復の主たる学会は柔道整復接骨医学会と質問で言われましたが、ではどれだけの柔道整復師がいてその内どれだけの方が学会会員なのでしょうか。また施術所内で適切な柔道整復が施されているのでしょうか。柔道整復の業務は正直、凄いと思います。そもそも医行為は禁止行為なので免許制度なのですが、その一部を柔道整復という業務範囲で限定解除され自分の判断にて施術をすることができます。これは国民から信頼された先人の努力によるものですが、この素晴らしい職業、職域を永続的に存続させるには何らかの規則が必要だと考えます。

 

●橋口浩治氏プロフィール

橋口氏S47年10月8日、 鹿児島県名瀬市生まれ(奄美大島)、宮崎県宮崎市・福岡県福岡市育ち。平成7年、東北柔道専門学校卒業。13年、橋口整骨院を開業(長崎市江戸町)。15年、築町に「はしぐち整骨院」として移転。現在、こころ医療福祉専門学校非常勤講師、日本柔道整復接骨医学会会員・日本スポーツ整復療法学会会員・アスレティックトレーナー長崎県協議会会長・長崎県アイスホッケー連盟理事(国体強化委員長)・(公財)長崎県体育協会スポーツ医・科学委員会委員。

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