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これだけは知っておいて
【第96回:「柔道整復師」「柔道整復術」を考える ―Ⅲ―】

2023/03/01

長尾淳彦

「柔道整復師法」から「柔道整復師」「柔道整復術」について考えていきましょう。

(平成28年度版 柔道整復師のための保険請求の手引き 長尾淳彦著 より引用)

 

第4章 業務

(業務の禁止)

第15条
医師である場合を除き、柔道整復師でなければ、業として柔道整復を行なってはならない。
逐条解説より

本条は、柔道整復師以外の者(医師を除く。)が柔道整復業を行うことは禁じられる旨を規定したものである。本条の規定に違反した者は、三十万円以下の罰金に処せられる。(法26条参照)

*「業務独占」とは?

柔道整復の業務は医師と柔道整復師のみに許された独占的業務である。違反した者は50万円以下の罰金に処せられる(法第29条第1号)。
医師が柔道整復の業をできるのは、医師の業務の中に柔道整復の業務が含まれているからであり、柔道整復師の免許を取得したからではない。医師であっても柔道整復師の免許を取得するには、学校又は養成施設において必要な知識及び技能を修得し国家試験を受験し、それに合格しなければならない。

*「名称独占」「業務独占」とは?

医師法では、医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない(医師法第18条)と定めている。これを医師の「名称独占」という。また、医師でなければ、医業をしてはならない(医師法第17条).と定められ、これを医師の「業務独占」という。
柔道整復師法では、医師である場合を除き、柔道整復師でなければ、業として柔道整復を行ってはならない(柔道整復師法第15条).として業務は独占するが、柔道整復師以外の者が柔道整復師の名称を使用することを禁止する条文はないので、柔道整復師は名称は独占していない。

 

(外科手術、薬品投与等の禁止)

第16条
柔道整復師は、外科手術を行ない、又は薬品を投与し、若しくはその指示をする等の行為をしてはならない。
逐条解説より
  • 本条は、柔道整復師の外科手術、薬品投与等の禁止につき規定したものである。
  • 柔道整復師の業務は、医業と密接な関係があり、柔道整復師は柔道整復業務をその権能として行いうるが、その範囲は厳格に柔道整復業務のみに限定されるべきものである。列挙されている行為は医師のみが行うべき医行為であるから、この規定は注意的規定である。禁止される行為は列挙されたものに止まらず、医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならないという趣旨である。
    これに対する違反に罰則がないのは、施術者がこれを行なえば、医師法第17条違反として処罰されるからである。

*医師法第17条:医師でなければ、医業をしてはならない。


柔道整復師の業務の範囲はこの禁止事項以外柔道整復師法には記されていない。
柔道整復師が販売又は授与の目的で調剤した場合は薬剤師法第19条違反となる。

薬品投与の範囲(厚生省見解、昭和24年6月8日、医収662)

患部を薬品で湿布するが如きも理論上薬品の投与に含まれると解するが、その薬品使用について危険性がなく且つ柔道整復師の業務に当然伴う程度の行為であれば許されるものと解する。

 

(施術の制限)

第17条
柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、 この限りでない。
逐条解説より
  • 本条は、柔道整復師の行う施術の制限につき規定したものである。
  • この「医師の同意」は、個々の患者が医師から得てもよく、また施術者が直接医師から得てもよいが、いずれの場合でも、医師の同意は患者を診察した上で与えられることを要する。その形式は書面でも口頭でもよい。また、この「医師」は、必ずしも整形外科、外科等を標榜する医師に限られない。
  • 「応急手当」とは、医師の診察を受けるまで放置すれば患者の生命又は身体に重大な危害をきたすおそれがある場合に、柔道整復師がその業務の範囲内において患部を一応整復する行為をいう。したがって、その場合においても、全く柔道整復師の業務に含まれない止血剤の注射、強心剤の注射等は許されない。また、応急手当後、医師の同意を受けずに引き続き施術をすることはできない。
  • 本条に違反して施術を行った者は、20万円以下の罰金に処せられる。(法第27条参照)

*「医師の同意」とは?

同意を得る医師は整形外科以外の医師でもよいが、歯科医師は含まない。また、同意を得る方法としては書面であっても口頭であっても良いが、医師が直接患者を診察することが必要である。
平成22年9月1日(9月の施術分)から骨折・脱臼の医師の同意に関する記載は施術録と同様に、申請書の摘要欄にも記載することとする。
従来は「実際に医師から施術につき同意を得た旨が施術録に記載してあることが認められれば、必ずしも医師の同意書の添付を要しないこと。」とあったが今回からは「医師の同意に関する記載は施術録と同様に申請書の適用欄に記載すること」となった。施術録・支給申請書ともに記載されていないと返戻対象となる。
原則として「同意年月日」「医療機関名」「医師の氏名」を記載しなければならない。ただ、総合病院等で医師名の確認が困難な場合は「(総合病院のため医師名確認困難)○○病院整形外科担当医 患者より聴取」と記載する。

応急手当は1回とは限らない。

 

(秘密を守る義務)

第17条の2
柔道整復師は、正当な理由なく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。柔道整復師でなくなった後においても、同様とする。
逐条解説より
  • 本条は、柔道整復師が、その職業柄、人の秘密に接することが多いことから、業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない旨を定めたものである。
  • 免許の消極的資格要件とは、免許を受けるためには備えていてはならない要件である。柔道整復師の免許については相対的な欠格事由だけが規定されており、この条項のいずれかに該当する者から免許申請があったとき、厚生大臣はその情状や疾病の程度等を勘案し免許を与えるかどうかを決定することになる。これに該当する者には試験合格等の積極的資格要件を満たしていても免許は与えられないことがある。
  • 本条の規定に違反した者は、50万円以下の罰金に処せられる。(法第26条参照)これは、医師、薬剤師等が、その秘密漏泄について刑法第134条第1項において律せられているのに相当するものである。
  • 本条は、昭和63年改正法により加えられた規定である。柔道整復師の守秘義務は従来もその職業倫理上要求されていたものと解されるが、昭和63年改正法により法律上の義務として規定されたものである。

医師にも守秘義務は課せられているが、これは身分法である医師法ではなく、刑法により規定され処罰される。

*刑法第134条第1項

医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて、知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
柔道整復師や医師が、その業務上知り得た人の秘密を漏らした罪は親告罪であり、被害者が告訴することを必要とする。(柔道整復師法第29条第2項、刑法第135条)
秘密とは、いまだ他者に知られていない内容であり、医療と関わらない内容も含む。そして、その秘密が漏らされることで本人に不利益があることが本義務違反となる(告訴において:親告罪)。なお、守秘義務は、職を辞しても、免許証を喪失してもなくな るわけではない。

*「個人情報保護法」とは?

正式名称は「個人情報の保護に関する法律」で2005年4月1日に全面施行された。所轄官庁は内閣府である。違反すれば6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。我々柔道整復師は医療関係なので「厚生労働分野における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン等」「医療・介護分野の個人情報保護ガイドライン(厚労省)」を参照すると保護すべき項目が理解できる。

 

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