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これだけは知っておいて
【第78回:柔道整復師が行う骨折・不全骨折・脱臼の治療における考え方】

2021/09/01

明治国際医療大学 教授
長尾淳彦

前回は将来的に骨折・不全骨折・脱臼治療、そして、超音波観察装置の取扱いについては、学会が「認定制度」にする計画があることをお話しました。

骨折・不全骨折・脱臼治療についてはレ線など画像診断検査がリアルに出来ない柔道整復師が保存的治療か手術による治療かの判断・選択は非常に難しい。

保存か手術かの判断・選択を行うには、鑑別法の幅広い知識と検査法の正確さや超音波観察装置での観察による判断が不可欠である。

養成施設を卒業して国家試験に合格したらすぐに「骨折・不全骨折・脱臼」治療が出来るとは誰も思わないだろう。しかし、「骨折・不全骨折・脱臼」治療を臨床現場で出来る施術所は現在、全国で何カ所あるだろう?

40年前なら「骨折・不全骨折・脱臼は接骨院」として1日に十数件の症例が1施術所で診れた。徒弟制度で入所して新人ながら整復や固定の手伝いが出来、からだが整復固定に関するノウハウを覚えていった。

公益社団法人日本柔道整復師会と一般社団法人日本柔道整復接骨医学会では「骨折・不全骨折・脱臼は接骨院」をモットーとして患者さんの安心安全を第一義に認定教育制度を構築していきます。

臨床上、骨折は受傷後、早ければ早いほど整復しやすいし、完璧でなくとも許容範囲の整復位を確保しておくことは、その後の疼痛緩和、腫脹軽減につながる。この整復行為なくして医接連携(医科と柔道整復師の連携)での保存的治療か手術による治療かの判断・選択はない。患者にとっても不幸なことである。

近年、医科においても「転位のある骨折」に整復操作をせず、ほったらかしで手術を勧める開業医のケースに苦言を呈し、手術までの待機期間を徒手整復により良肢位で保つことは患者の早期の社会復帰、ADL獲得に優位となるとの提言が多い。

医科で保存的治療が受け入れにくい理由の一つに、かなり手間がかかるし骨癒合が得られるまで気が抜けない。整復方法、固定期間、装具などの決定と毎回の診察の都度、細やかな処置と適切な指導と指示が必要なこと。経過中に転位する可能性もあり、最初から手術を選択しておいたほうがよかったということになる。

しかし、最終的な骨折部の機能成績が同じであるなら治療期間が長くても手術はしたくないという患者は驚くほど多い。ただ、患者、家族にさまざまな治療法を提示できる豊富な知識が必要である。

「柔道整復師業務」から「骨折・脱臼の治療」を除いたら、その存在価値は半減する。

柔道整復師の治療(骨折・脱臼の治療)の特徴

  • 一人の柔道整復師が一人の患者を初検から治癒に至るまで診る一貫性治療である。
  • 常に一対一で行う対面による治療である。
  • 対面による治療であるから患部の回復の進捗状態を常に把握出来る。
  • 対面による治療であるからリスクのマネージメントがきめ細かく出来る。
  • 信頼関係の構築により患者のモチベーションが向上する。
  • 柔道整復術の歴史的背景の中から生み出された「独自性」がある。
    (骨折では長期のキャスト固定で放置するのでなく固定装具を工夫して患部の状況・状態を常に把握(色・腫れ等)し、血行循環障害や変形骨癒合などのリスクを管理できる。骨折固定時の固定具内部に綿花や簾を材料とし血行循環確保するカナル療法などはその典型。)
  • 材料など低コストであるが機能的である。

 

柔道整復師のアイデンティティはここにあると思う

 

つづく

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