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これだけは知っておいて 【第61回:16年前の出来事】

2020/02/01

明治国際医療大学 教授 長尾淳彦

この柔整ホットニュースと姉妹提携の間柄と言ってもいい「からだサイエンス」柔整Versionが発刊150号並びに25周年を迎えられた。おめでとうございます!

思い起こせば、16年前の2004年11月5,6日神戸国際会議場で開催された第103回中部日本整形外科災害外科学会から「からだサイエンス」誌との深いお付き合いとなった。この学会会長である当時、近畿大学医学部整形外科学教室の浜西千秋教授から「からだサイエンス」誌を通じて、シンポジウム登壇のオファーがあった。このような歴史ある大きな整形外科医師の学会に柔道整復師が登壇するのは非常に稀であり柔道整復師業界は勿論のこと整形外科医師業界においても注目された学会シンポジウムであった。

大会会長の浜西教授は「国民のために」をキーワードに第103回中部日本整形外科災害外科学会シンポジウムはメーンホール超満員の中で開催されました。

当時は柔道整復師養成施設乱立初期で、今のように接骨院や整体院、リラクゼーション施設が街の至る所にある状態ではなく、整形外科医師の方々も柔道整復師という資格がどのようなもので「柔道整復療養費」や「受領委任」などの言葉を聞くのも初めての人が多かったと思います。もしかしたら「柔道整復師=接骨院」ということを知らなかった人もおられたかもしれません。

この年に臨床整形外科医会(当時)が「整形外科医療の周辺問題資料集vol.2」を発刊して開業整形外科医師に柔道整復師=接骨院が認知されたのだと思います。

その後、vol.3が発刊され、毎年、柔道整復師に関するシンポジウムも開催されている。

ネガティブな特集が散見されるが地域の整形外科医師の中には柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師を集めて勉強会を開催して「国民=患者」のために何が出来るかを共に考えようと動かれている方もおられる。医療、介護そして支援事業を円滑に遂行していくには地域連携が必要であるからであろう。

浜西先生からは「柔道整復師という資格」「柔道整復師として出来ること」「柔道整復師としてやってはいけないこと」を常に考えて、施術所に来られる目の前の「患者さん」に対峙できる柔道整復師業界であってほしいと言われておりました。

 

話は変わり、今後、国が進める働き方改革により医師の仕事を減らしていかなければならない状況が起こってきます。医師の過酷な労働条件を改善しなければ日本の医療は持たないからです。医師の業務はタスクシフト、タスクシェアされていくでしょう。

このことは厚生労働省で「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフティングに関するヒヤリング」で議論されています。

日本医師会の政策判断基準には、
1.国民の安全な医療に資する政策 
2.公的医療保険による国民皆保険を堅持できる政策
であるかという基準があります。

柔道整復師という資格にこの基準の㊜が与えられるかを考えた時、タスク・シフティング㊜どころか対象にもなりません。

しかし、どのような状況であろうとも対応できるような中長期な準備が柔道整復師業界全体で持ち合わせていかなければいけないと思います。

教育カリキュラムから資格取得後の研修システムを抜本的に変えていかなければならないと思います。

 

平成30年4月入学生から新カリキュラムでの柔道整復師養成が始まり、履修科目の追加、履修時間と単位の増加が行われましたが、さらに柔道整復師がタスク・シフティングに対応するなら医師が任せても良いというだけの重厚な質の高いカリキュラム構成を考えなければなりません。

医師は医学部を卒業するまで6年間。最初の1年半は「一般教養」。大学2回生後半から4回生前半まで専門分野「基礎医学(生化学、解剖学、組織学、薬理学など)」を学びます。本格的な医学を理解するための基礎です。この期間「人体解剖」の実習もあります。そして、4回生の後半から2年半「臨床医学(内科、外科、小児科、整形外科など)」を病院にインターン生として配属され、診療をベースに発生から治療に至るまでを学習します。6年間の単位を修得して「医師国家試験」に合格すると「医師」となることができます。医師になった後は「スーパーローテーション」制度により、内科、外科、小児科、整形外科など3か月に1回を目安に各科を実習します。2年間の「スーパーローテーション」の研修を終えた後、専門分野を決めて専門分野で1-2年間の修行を積みます。最低8-9年間を掛けて「医師」として世に出られる。

柔道整復師は、平成30年4月から施術管理者となるには3年間の実務経験と2日間16時間の研修を受講しなければなりません(移行に関しての特例あり)。就学が3-4年間、実務経験が3年間で計6-7年間です。養成施設のカリキュラムも増えたとは言え、先にも述べたようにタスク・シフティングされるに足りる内容でなければいけないと思います。

実務経験についても現在、具体的なカリキュラムが決まっていません。単に接骨院に勤務柔道整復師として勤務して時間を過ごせば実務経験はクリアとなります。

 

日本医師会は、国民にとって安全な医療を守るため、「医師によるメディカルコントロール(医療統括)」の下で業務を行うことが原則である.とし、医師がコントロールタワーとして役割を果たし多職種と連携しながら国民が安心して受け入れられる医療を提供していく.としている。この多職種の一員に柔道整復師が入る努力がさらに必要です。

16年経ったが、浜西先生が「国民のため」をキーワードとしたシンポジウムの開催、 「柔道整復師という資格」「柔道整復師として出来ること」「柔道整復師としてやってはいけないこと」を考えよというアドバイスが「今」効いてくる。

 

 

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