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これだけは知っておいて【第41回:中国の古典「菅子」の一節】

2018/06/01

明治国際医療大学 教授 長尾 淳彦

公益社団法人日本柔道整復師会 工藤鉄男会長が就任当時から話されていることである。

「一年之計、莫如樹穀.十年之計、莫如樹木.終身之計、莫如樹人.」

「一年の計は穀を樹(う)うるに如くはなし、十年の計は木を樹うるに如くはなし、終身の計は人を樹うるに如くはなし」

一年の計画を立てるならば、年内に収穫できる五穀を植える。十年の計画を立てるならば、樹を植えるのがよい。一生涯の計画を立てるならば、人を育てることである。

まず、一生涯の計画である柔道整復師の人材育成。これは、柔道整復師としての入り口である養成施設のカリキュラムの充実。5年前から柔道整復師養成施設のカリキュラム改定を学校協会主体で業界として厚生労働省医政局との協調の元、他の医療職種に先駆けての3年制99単位2750時間プラスαを平成30年4月入学生より実施。
また、柔道整復師資格取得後の受領委任の取扱いにおいての「施術管理者」届出の際には実務経験と研修の受講が平成30年4月より加わり、より質の高い柔道整復師像を構築。人作りの「かたち」は出来上がった。あとは業界全体で「魂」をどう入れるかである。

次に十年の計は柔道整復師が患者さんである国民のニーズに応えて「きちんと治せる」環境つくりである。平成28年、30年の料金改定では柔道整復師の施術の根幹である「骨折」「不全骨折」「脱臼」領域に大幅な料金アップと新しい算定項目を行った。
現在、療養費請求での「骨折」「不全骨折」「脱臼」の占める割合は0.2%である。昭和54年当時は2割近い取扱いであった。約40年間の歳月の中、柔道整復師の手から「骨折」「脱臼」は徐々に離れていった。

公益社団法人日本柔道整復師会では、平成29年度より「匠の技・継承事業」を開始。「骨折」「不全骨折」「脱臼」の整復固定を柔道整復師の資格を持つ者すべてが安全にかつ的確に行えることを目標に実施している。初検から治癒に至るまで一人の柔道整復師が患者さんを一貫して診れる特徴を活かした十年計画の「樹」を植える事業である。「きちんと治す」ためには「きちんと勉強」することである。

年内に収穫できる五穀を植える事業は全国の市町村で実施されている介護予防・日常生活支援総合事業へ柔道整復師という人材資源としてスムーズに参入出来るということである。多職種連携の「機能訓練指導員の会(案)」の設立により地域包括ケアシステムなどへのマンパワーの発揮とセミナーなどの開催により医療人としての質の担保を構築する。

この改革は一過性であっても相当な痛みを伴う改革であるが、今の状態では、「柔道整復師」という資格は残っても、保険の取扱いや業務の拡大は無理である。昭和45年の「柔道整復師法」単独法から抜本的な改正は行われてこなかった。

いきなり、柔道整復師の業務拡大や地位の格上げを現状で望んでもそれは現実的ではない。

法というものは個人や一定の集団のためでなく、そこに係る全体論としてつくられている。教育の制度が充実し、資格取得後の研修制度が整ってこそ、柔道整復医療そして患者というものに直接なり間接なりに係り、その向上がみられるということがない限り、法として変えられない。現在、様々な改革により柔道整復師の質が上がり、患者さんが業務の拡大などの必要性を感じれば法の見直しが必ず行なわれることとなる。

5万件を超える施術所で柔道整復術を受けられている患者さんのために今、業界として踏ん張りどころである。おぼろげながら「光」は見えてきた。

先にも述べたが、あとは業界全体で「魂」をどう入れるかである。

 

 

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