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この人に聞く!
【東京有明医療大学 保健医療学部 柔道整復学科准教授・小山浩司 氏】

2014/10/01

これまで柔整ホットニュースでは、柔道整復大学で活躍されている教育者にテーマを設け、リレー式でご執筆いただいてきた。しかし、近年の柔整教育は4年制大学と3年制専門学校の2極化が進展していることから、大学と専門学校の差別化が加速すると思われる。そこで柔整ホットニュースでは、〝柔整教育の根幹はなんぞや〟という大きな問いかけをテーマに専門学校の教育者、大学の教育者両者に提言いただくことにした。今回は東京有明医療大学 保健医療学部 柔道整復学科 准教授・小山浩司氏にお話をうかがった。

 

―小山先生は東京有明医療大学にて保健医療学部柔道整復学科准教授として教壇に立っておられますが、柔道整復師を養成する上で、専門学校と大学の大きな違いは何処でしょうか?

私は現在の大学で教鞭をとる前に、数年間ではありますが柔道整復師養成専門学校の教員をしておりました。その経験から患者さまのために適宜適切な施術を行い、地域医療に貢献する柔道整復師を養成する上では、専門学校と大学に大きな違いはないと考えています。

しかしながらカリキュラムの観点から、その違いを見てみると、まず第一に卒業必要単位数や授業時間数に違いを認めます。そしてカリキュラム上、最も大きな違いは「研究の素養を身につける」ためのカリキュラムが大学に用意されていることです。すなわち大学教育は「研究的思考を身につけた柔道整復師」の養成を目的としている点がひとつ大きな違いになるのではないかと考えています。

具体的には、柔道整復分野に限らず多くの大学で卒業年次に卒業論文を作成します。私が所属している大学でも、卒業年次に卒業研究という科目が配当され、履修した学生は1年間をかけて卒業論文を作成します。「研究的思考を身につける」ことを目的とした卒業論文の作成は、研究テーマの設定から開始し順次進められていきます。

学生自らが講義を通して興味、疑問に持っていることを研究テーマとし、研究仮説を立てた後、その仮説の検証を試みます。検証の方法も観察的研究(文献研究・調査研究)や中には学生が人を対象に介入してその効果を調べる実験的研究を選択する学生もいます。もちろん人を対象とした研究を実施する場合は、研究における倫理的配慮の必要性を教育し、学生には倫理審査のための申請書の一式(申請書、同意書、撤回書など)を作成させます。

さらに検証により得られた結果を公開する場を設け、卒業論文の完成に向けて、より自身の研究内容に対しての理解度を高めていきます。また自身の研究を進めるだけでなく、ゼミナール形式で他の学生の研究成果にも触れることで、活発なディスカッションを経験していきます。

最終的にひとつの卒業論文が完成されると同時に、その一連の過程を経験した学生は、「研究的思考を身につけて」卒業していきます。現在では柔道整復分野の大学院も設置されたことから、まだまだ少数ではありますが、柔道整復師の資格を有した研究者の道を目指す学生も出てきています。

 

―小山先生は教育者としてどのような柔道整復師を育てたいとお考えでしょうか?また教育理念などがございましたらお答えください。

柔道整復分野の大学そして大学院ができた今、研究的思考を身につけた柔道整復師を数多く育成したいと考えています。

具体的には、常に科学的根拠が求められる医療の世界では質の高い研究を実施することが必要不可欠であります。そのような研究を実施できる研究者、また多くの情報、論文を批判的吟味できる研究者を数多く育成することです。

そのためには私自身も学生とともに日々精進しなければなりません。大学には、研究機関等で行った研究成果を臨床現場で活躍されている柔道整復師の先生方へフィードバックする役割があります。現在、臨床現場の先生方への情報発信が十分でないかもしれません。いや全くその役割が果たせていないかもしれません。これを実現するためにも、多くの研究者を育成することが急務と考えています。もちろん臨床現場で患者さまのために適切な柔道整復術を提供し、地域医療の一翼を担う柔道整復師を育てることは言うまでもありません。

また私の教育理念としましては、所属する花田学園の教育理念である「良き医療人である前に、良き社会人であれ」、まさにこの言葉を胸に刻み、学生にはまず人として、社会人として礼儀を重んじた教育理念で日々取り組んでいます。

 

―近年、スポーツ現場で選手を支えるアスレティックトレーナーを志す学生が増えてきていると感じております。
小山先生はスポーツ選手の疾患を専門とされておりますが、アスレティックトレーナーを目指す人にアドバイスをお願い致します。

私自身も教育現場でアスレティックトレーナーを志す学生が年々増加してきていると感じています。この背景として、近年メディアを通して多くのアスレティックトレーナーの活動が紹介されたり、また高校の部活動でも実際にアスレティックトレーナーが帯同し、高校生自身がサポートを受けるなど、以前よりもその活動内容を目の当たりにする機会が増えたことがひとつの要因になっているのではないかと考えています。

その事を裏付けるかのごとく、高校生を対象に「アスレティックトレーナーとは?」と題してその役割や仕事内容のお話する機会を頂くと、大変多くの高校生が興味を持って聞いて下さり、アスレティックトレーナーという名称の認知度が高いことに毎回驚かせられます。そして高校生にアスレティックトレーナーの印象をお聞きすると、「かっこいい」、「有名な選手をサポートしたい」などの意見が多数を占め、アスレティックトレーナーはスポーツに関わる花形の仕事であると認識されていると感じます。

しかしながらアスレティックトレーナーは、スポーツに関わる仕事として間違いありませんが、決して表舞台に立つ華やかな仕事ではなく、影からスポーツ選手を支える縁の下の力持ちでることを認識して頂きたいと思います。

余談になりますが、私自身、高校生からよく頂く質問のひとつに、「アスレティックトレーナーを目指しているが、他の医療系資格は何を取れば良いか?」との質問があります。残念ながらこれに対する答えを私は持ち合わせておりませんが、私がスポーツ現場でアスレティックトレーナーとしてスポーツ選手をサポートする際、特に試合中や練習中に発生する外傷に対しての評価や応急処置の場面で、柔道整復師としての技術が大いに活かされていることを痛感します。

 

●小山浩司氏プロフィール

東京有明医療大学 保健医療学部 柔道整復学科 准教授

柔道整復師、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、博士(体育科学)
【所属学会】
日本柔道整復接骨医学会、日本体力医学会、日本整形外科スポーツ医学会、日本臨床スポーツ医学会、日本アスレティックトレーニング学会

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