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日本柔道整復師会主催「第28回学術・生涯学習講習会」開催

2022/12/06

2022年11月19日(土)、日本柔道整復師会会館(東京都台東区)において『第28回学術・生涯学習講習会』が開催された。

第28回学術・生涯学習講習会

開会の辞を述べた公益社団法人日本柔道整復師会・長尾淳彦副会長は、マイナンバーカードの健康保険証利用やオンライン資格確認に関して厚生労働省と協議を重ねている等、同会の取り組みについて報告した。

伊藤述史会長は、同会の元理事が逮捕された事件に触れ〝業界内外に大変なご迷惑をお掛けし申し訳なく思っている。再発防止も含めて、今まで以上に法令遵守を徹底して業界の信頼回復に努めていかなければならない〟と力強く述べた。さらに〝柔道整復業界は先達が血の滲む思いで作ってくれた業界であり、それをしっかり守るためにも国民の信頼を得る必要がある。医療・介護分野も含めて、公益活動に重点を置き、一致団結して難局を乗り切らなればならない。本日は市民公開講座として明治国際医療大学の伊藤先生に講演いただく。有意義な時間としていただきたい〟と挨拶した。

  • 長尾副会長長尾副会長
  • 伊藤会長伊藤会長

 

市民公開講座 特別講演 医療・健康に係る我々に必要不可欠なテクノロジー技術とは?

明治国際医療大学鍼灸学部 学部長 伊藤和憲氏

伊藤和憲氏

伊藤氏は〝私は先日手首を骨折し、休日だったため救急外来にかかったが、骨折していることが分かったのに固定しかしてもらえず痛みが酷かった。そこで接骨院で診ていただき、整復してもらうと嘘のように痛みが引いた。こんな素晴らしい医療をどうして国はもっと活用しないのか。お礼の意味も込めて、柔道整復師の役割について未来のある話をしていきたい〟と自身の経験も踏まえて挨拶し、講演をスタート。

〝現在、マイナンバーカードによる資格確認が進められているように、政府はデジタル化を推進している。その理由は何か。現在日本の人口は減少傾向にあり、さらに高齢化が進むと、生活を維持するためには人手が足りなくなるからだ。医療や介護の分野も同様で、高齢化が進むと医療費が増大するが、働く人口は減少してしまう。そこで医療を今と同じように扱うと立ち行かなくなるため、予防から治療のトータルケアとして健康をサポートする流れになっている。
デジタル化を進めるためには、医療・健康に関するデータをまとめる【ビッグデータ化】が必要となる。データをまとめ、その人がどういう状態にあるのかを一元化することで適切な医療の提供やサポートができるようになる。さらに、政府は予防医学や健康寿命の延伸、在宅・終末期医療などを重要視しており、データを収集することで病気の早期発見や介護が必要になる人の洗い出しも可能になると考えている。しかし日本では医療・健康のデジタル化が遅れており、健康・予防のためのデータが殆ど存在しない。ここで柔道整復業界や鍼灸業界もデジタル化の波に乗らないと、その仕組みに入っていくことがどんどん難しくなってしまう。
これからは、デジタル技術によって医療・ヘルスケアに取り組む【デジタルヘルス】が主流になる。これまでは病気は病院で見つかるものだったが、デジタル化が進めばウェアラブルデバイスやスマートフォン等を使って家庭で健康状態を管理・病気を早期に発見できるようになる。さらに言えば、病気になってからではなく病気になる前に知ることができる。これにより医療の質が向上し、無駄な医療コストも削減できる。健康寿命の延伸を重要視している政府にとって、健康でも病気でもない未病の期間のケアを誰がどのように担うのかが課題になっている。信頼できる医療、信頼できる健康管理者として、柔道整復業界でもデータ化を進めていくべきではないか〟と述べ、体調管理と治療を一体化させるための仕組みとなるアプリを紹介。体調管理アプリで接骨院に来院する患者の体調を管理・分析し、電子カルテと組み合わせることで患者の来院のタイミングや症状が現れるサインなどを知ることも可能になるという。

さらに〝日本の受診回数は諸外国に比べ圧倒的に多く、医療費はどんどん高騰している。医療費が増大する一方で税金を納める労働力人口は減少するというアンバランスさを解消する必要がある。そのため医療は治療から予防へシフトしていくことが予想される。医療との連携を模索しつつも、予防医学という新しい領域を開拓する必要があるのではないか。接骨院や鍼灸院は地域に根付いており、住みやすい社会・環境を作るためのインフラとしての役割を担うのは、柔道整復師・あはき師以外にはないと私は考えている〟と強い期待を示し、未来のために業界のデジタル化や予防医学の確立に向けた基盤づくりを共に進めていこうと呼びかけた。

 

学術・生涯学習報告
森川伸治学術教育部長

森川伸治学術教育部長より、令和3年度生涯学習・ボランティア活動単位について報告された。

続いて、「匠の技 伝承」プロジェクトについて〝令和4年3月31日現在、柔道整復師の登録者数は12万728名にも及ぶ。一方で令和2年3月31日現在、就業柔道整復師は7万5,786名で、約4万人が国家資格を持っていても柔道整復師として働いていない。この数字からも柔道整復業界の厳しい状況がうかがえる。柔道整復師の業務は捻挫・打撲・挫傷が大半を占めているが、応急処置といえど骨折・脱臼の整復・固定ができるのは医師以外では柔道整復師だけだということを忘れてはならない。これがなければ整体やリラクゼーションとの区別がつかない。そこで柔道整復術公認100周年を記念して「匠の技 伝承」プロジェクトを始動したということをご理解いただいたうえでご協力いただきたい。我々柔道整復師は当たり前のように「保険」の請求を行っているが、柔道整復療養費も受領委任払いも柔道整復師のためのものではなく、良質な施術を望まれる患者のためにある。受領委任払いの取り扱いができるようになったのは、柔道整復師は不正をしないという信頼があったからだということを再認識しなければならない。当プロジェクトは単なるイベントではなく、厳しい状況の中で柔道整復師に与えられた特権である骨折・脱臼の治療の確かな知識と技術の継承を行っていくものである〟と改めてプロジェクトの趣旨を述べたうえで、今後の講習会の開催計画について説明した。

日本柔道整復師会主催学術大会については、各ブロックとの意見交換会を取り入れる、ワークショップを実施する、開催方式は対面のほかハイブリッド方式も有効活用するなど、在り方を見直していくとした。

 

最後に、森川学術教育部長は〝日本柔道整復師会は運動器の骨折、脱臼に関して最新の専門的知識と高度の整復・固定技術を有する優れた柔道整復師を養成し、全国的に広く配置されることで骨折・脱臼治療の質の向上と平準化を図り、その結果として柔道整復施術を望まれる国民の負託に応えることを目的としている。これは日本柔道整復師会と各都道府県柔道整復師会がしっかりと連携を取らなければ成し得ない〟と全国の会長に協力を求め、富永敬二理事の閉会の辞により幕を閉じた。

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