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(公社)日本柔道整復師会第46回九州学術大会熊本大会開催!

2017/08/01
「各シンポジストの立場から平成28年熊本地震にどの様に関わったかについて」

国立病院機構災害医療センター・Dマット事務局・小早川義貴氏
DMATとして熊本地震の時には福島におり、4月19日、熊本県庁に隣席の中林さんと一緒に町役場の対策チームとして住民の避難等を具体的に指示しました。福島でもスタッフが疲弊していくのを見ていますので、引き続き健康管理でお邪魔させて頂いています。

日本赤十字社熊本県支部総務課・田中嘉一氏
私は日本赤十字社熊本県支部で昨年度までボランティア等を担当していました。
私ども日本赤十字社は、「人道」という言葉を基本理念の第一義に、〝人間を救うのは人間だ〟というスローガンを掲げて活動しています。日赤ではボランティアを「奉仕団」という呼び方をして熊本県柔道整復師会においては「熊本県接骨・整骨赤十字奉仕団」として多大なご協力を頂いており、益城町会館で日赤と共に活動をして頂いて、いろんな奉仕団を引っ張って頂いています。
「熊本県接骨・整骨赤十字奉仕団」に全国的なモデルになって頂けるよう私達もアピールしていこうと思っています。

熊本市保健所健康福祉局食品保健課・中林秀和氏
熊本市では地震に対する備えはあったが、他所から来る救護班の調整を誰が責任を持って指揮を出すか等が決められていなかった。
かなりの数の医療支援が来ました。隣に座っている神様がやって来て私達の話を聞いて頂き、市民病院の救急の先生を責任者に据えて救護班調整本部が立ち上がりました。
神様が直ぐ居なくなって涙が出る思いをしたという話をしたところ〝是非苦しい思いをしたことをいろんな所で話して次に受援を受ける人たちの心構えとしてもらえれば〟と言われました。
最大で救護チームが40位来た日もあります。市役所に調整本部を設置し、言われたことは「ちょっと場所が狭すぎる」「こんなところで活動出来ないじゃない」「カップラーメン、お湯ください」朝ミーティングを10時からしていたら、10時では遅すぎるという人も居れば、私達は佐賀の宿舎から毎日来ているのでこれ以上早くなったら来られなくなる。
高速道路の減免の処理はどうしたら良いか、などなど地元の方には話せないところです(笑)。マスメディアではくれぐれも流さないようによろしくお願いします。

熊本日日新聞記者・NTEセンター部次長・伴哲司氏
実は私どもの新聞社も相当な被害を受けて特に16日の本震の直後、輪転機も一時使えない状態になり、もう新聞を発行できないか?と危ぶまれたが、どうにか復旧させることが出来ました。
私ども震災当初、被災地の現状をお伝えするニュース、或いは市民の皆さんのライフライン、電気、水道、お風呂、何所のスーパーが開店したかや何所の病院が診療を開始した等の情報をお届けするに徹しました。
地震後1か月が経過した辺りから多角的に課題を探る「連鎖の衝撃」を98回掲載し、現在熊本地震発災直後に県民の皆さん、夫々の立場で如何動いたかを振り返る「あの時何が」という連載をはじめ様々な形で熊本地震を振り返る企画・連載を続けています。
私どもは熊本地震に関する情報提供のほか、復興に向けて県民の皆様に広く場を提供する形で日々努力しています。
今日は新聞社という立場から熊本地震発生から見続けた経験、私個人もボランティアとして活動させて頂いた経験も踏まえてお伝えできればと思っています。

シンガーソングライター・進藤久明氏
まさか自分の住んで暮らしている町でこれだけ大規模の地震が来るとは思わなかった。
母親が逃げる時に携帯電話を持ったつもりがテレビのリモコンでした。母親が小学校に避難して、その町の方々と触れ合いがあった。
自分の声はよく通るのでラジオ体操の声かけとか、ご飯の炊き出しの時にお味噌汁配るなどしました。小学校の避難所で食べたおにぎりとお味噌汁の味は一生忘れないと思います。ラジオとTVでレギュラー番組をもっていたので、2週間位してから歌いに行ってくれということで実際に行ってみると話が通ってなかったこと等もありました。
ニーズとウォンツが日々変わっていく避難生活の中で、あるお寺の住職さんから〝やり直すための切っ掛けが欲しい、歌ってほしい〟と言われ、まだ震災から1か月経っていなかったので「おっさん」という歌も含めて一生懸命歌っていると、涙・涙・涙の中のライヴみたいな感じになった。
その後20~30か所で歌う中で、肩が上がらなくなり、体が歪んでいる、バランスが悪いということで施術して貰いながら、体を調整してもらった。柔道整復師に対する知識がなく、どういう人たちなのかが伝わるように、シンポジウムというくらいなので1ミリでも進歩して皆さんに届く会になればと思います。

公益社団法人熊本県柔道整復師会理事(事業部長・災害担当)立石勝也氏
平成28年は大雪に始まり地震、大雨、洪水、阿蘇山の噴火、目まぐるしい1年でした。
この1年間で5年分のパワーを使ったのではないかという勢いでした。座長をしている相馬理事が居なければ今回の熊本地震の対応は出来ていなかったというほど彼が動いており、本当に感謝をしています。九州北部豪雨で活動した時に災害医療を勉強しなければいけないとして、当会員でグループを作り情報共有が半分位出来ていたところに地震があり、4月15日に当会員全員の安否確認がスピーディに出来ました。
避難所はどんどん被災者が多くなって、熊本市内で約300カ所避難所が出来ていた。私たちも被災者であることを考慮すると、会員の先生達に決して無理は言えなかった。
熊本市の医療担当をさせて頂いて、高速道路の医療許可証や医療調整会議などに出席して県の膨大な情報を入手出来ました。
震度5以上の地震も多く、経験のない方に来て頂くのは寧ろ心配ということも感じていました。その際に福岡県にコーディネート等いろいろな面でサポートして頂き大変有難く当会の負担も軽減されたと思っています。こういったことは今後の災害時にも活かすべきだと思います。
県内の会員で約450名、県外会員約200名により約73カ所5600名の被災者の方に支援活動が出来ました。

 

「災害医療と柔道整復師について」

小早川氏
1つは標準化です。柔道整復師の施術の仕方はいろいろあると思います。災害現場に来て頂いた時に、この柔整師さんはこれが出来るけど、この柔整師さんは出来ないとなると全体として柔整師さんに何をお願いすればよいか。
DMATであれば救命医療を展開しましょう。避難所でもやりましょうと出来ることはありますので、柔整師さんが被災地に行ったらこういうことが出来ますという、それが着実に出来るように教育をしていくことが重要です。スーパーマン的ではなくジェネラリストとして立ち居振る舞いが出来る能力のほうが必要だと思います。もう1つは、被災地に入ると行ったその日から行政なり我々と調整をして頂けたら良い。そのためのスキルは情報処理能力であったり電話を受ける能力であったり記録に残す能力であったりします。施術の能力と共に本部運営の技能も持って頂きたい。
一番重要なのは災害対応というと応急対処のところだけ注目されますが、いま熊本は応急救護の後の復興復旧期に入った中で、例えば地域で信頼される柔道整復師であれば災害が起こった時に住民の安全をみてもらうことになります。
復興地域に出かけていく準備と共に自分の地域で準備をする。災害の応急救護の時期というのは一瞬ですが、平時の時間のほうに流れていく中で、こういう学術集会を通じて施術のスキルを上げていくことと人として地域で信頼される先生方になって頂きたい。

中林氏
行政の立場で、私たちはどちらかというと情報発信とか、皆さんを繋ぐための役目を果たしていかなければと思っています。
1番は持続性です。地震前に県と熊本県柔道整復師会が協定を結んでいることを知っていれば随分気持ち的に楽だったと思います。この良い関係を持続させなければと思います。
10月には災害医療訓練をやろうと思っていますので、その際に柔道整復師会からも出席頂いて活動をご紹介頂ければと思っています。

田中氏
東日本大震災後に「防災啓発プログラム」という、防災にはこういったものを備えましょうという小冊子を発行して皆様にいろいろお伝えしてきていますが、中々浸透していないこともあり、〝物が倒れないように金具をつけましょう〟〝電器が落ちないようにしましょう〟〝非常用持ち出し袋を持っておきましょう〟等があまりされていない。
全国から1700人もメンバーが集まってくれましたので私は勇気を持って任せることも必要と思いました。みんなが帰った後、自分たちが継続してやっていかなければいけない。それまでに自分たちの力を使い果たしてはいけないと感じました。
災害医療という面では、救護班の中にドクター・看護師がおりますので、是非救護班とコラボしたところで、急性期を過ぎたあたりからの活動が一緒に出来ればと思っています。

伴氏
今回の熊本地震での皆さんの素晴らしい活動の原点を私なりに考えてみると平成24年に熊本県と柔道整復師会が大規模災害時における災害支援活動における協定を結んでおられます。
これがベースにあるということを今回の皆さんの活動を見て痛切に感じました。
組織対組織としての連携よりも、もっと目線を身近に持った連携を是非考えて頂きたい。
今年1月、私ども熊日では災害医療に関するシンポジウムを開きました。その中で、益城町にある東熊本病院の中田院長にご講演頂きました。中田先生の病院は、入院患者全員を転院させた後にドクター看護師の皆さんが現地での救護にあたるという壮絶な体験をされました。その体験を振り返って中田先生は〝地元の医療機関同士の連携が欲しかった。それを予め準備するべきだった〟と仰いました。
顔の見える関係ということだと思います。
災害は広域でも、狭い地域でも発生します。どの場合であっても、対処できる関係は地元の先生同士が顔が見える関係に他ならないということを申し上げたい。
もう1つ、今熊本では、みなし仮設での孤独死がクローズアップされています。災害で傷ついた人をケアするという立場から考えるならば、勿論ドクター、看護師さんの役割、保健士さんの役割、行政の役割もあると思いますが、身近な整骨院の先生方が入っていくべき所が私はあるのではないか、それが何かは私には分かりませんが是非救いの手を差しのべて頂きたい。

進藤氏
僕が小さい時に隣の家から醤油を借りたりとか、借りるのは良くないけれどそういう繋がり、〝ばあちゃん大丈夫だろうか〟の声掛けなど連携をとるための練習と訓練をみんなでやったら如何かと。
別の話になりますが、柔道整復師を広めることが大事です。
熊本には夕方のワイド番組があります。ワイド番組のキャスターの所に行って、みんな疲れているので施術をして、楽にして、これが柔道整復師なのかと。
後はご家庭で出来るワンポイント整復術みたいなものをYoutubeに上げるなどして広める。分かりやすく届けることが凄く大事です。

立石氏
僕の考えは、柔道整復師の整骨院・接骨院が将来「四阿屋(あずまや)」になれないかと。地震が起きた、洪水が起きた、大変なことがあってもそこの整骨院に行けば何とかなるよという状態に持っていけないか。
避難してくる人たちも、あそこに行けばという心のケアも出来るし体のケアも出来る。僕らであれば、顔の見える状態を繋げていける。 例えば怪我して切ってしまった。どうすればいい?知り合いの外科の先生に紹介するというネットワークづくり、地域に根付いた整骨院・接骨院に行けば何とかしてくれるっていうのを目指していきたい。

会場から佐賀県・隈本圭吾氏
DMATの小早川先生と日赤の田中さんにお聞きしたい。
連携は勿論させて頂きたいと思っています。もう一歩踏み込んでDMATの中に柔道整復師が調整員として入ることは出来ないかという点です。
田中さんには、連携から発展して何かコラボできないかと。例えば教育協定を結んで頂いて平時勉強会を通して医療との関係を構築していく。
その中から顔の見える範囲内で連携し信頼頂けるならば災害があった時に会を通して一緒に活動しましょうというお声掛けが出来ないかどうかといつも考えています。

小早川氏
柔道整復師さんがDMATに入ることについては、現状では厳しい。今全国にDMAT以外にもJMAT等、MATがいっぱい出来ています。これがみんなDMATになってしまうと多様性を潰してしまうことにもなるので、いろんなMATがまとまってやっていく中で真の連携をはかっていくほうが被災者にも多様性の提供が出来るので、柔道整復師さんがDMATに入らないほうが全体としての活気に繋がるのではないか。
DMATの論理でしか動かなくなってしまうのでDMATのやらないところは誰もやらなくなってしまう。住民に多種多様なサービス提供ができなくなるので、連携の中で活動していくほうが良いと思っています。

田中氏
日赤の立場で答えると、日赤の救護班を全国に作らなければならないとして、今のところ職員だけで作っており、薬剤師も入っています。共通の訓練を本社で受けたり研修会を行っている中で、救護班に入って頂くのは現状ちょっと難しいと思います。
私も詳しいことは分かりかねますが例えばドクターのやって頂くところを柔道整復師会の皆さんにお願いして処置にあたって頂くことが出来ればドクターや看護師が治療に専念できると思いますので、中に入るのは難しいかもしれませんが一緒に帯同して活動し学習するということは間違いなく可能だと思っています。

隈本氏
私は、4月15日に益城町に行かせて頂いて、本震の時はグランドの車の中で、その後は唐津日赤の先生と一緒に活動させて頂きました。そういうことを踏まえて、柔道整復師は災害に対して活動出来るんだとやっているところです。今後ともよろしくお願いします。

最後に松村会長が〝参加者、シンポジストの皆様に貴重なご意見を頂き、まことに有難うございます。2名の災害担当理事がいなかったらこういうことが出来なかったと思います。最初に佐賀県から2名の先生が飛んで来てくれました。近くて安全なところからの連携、経験を持つ方達との繋がりが非常に有難かったと思っております。
本日のシンポジウムを受けまして提言を熊本県柔道整復師会として行いたい。公益社団法人日本柔道整復師会及び各県公益社団法人柔道整復師会は公益事業の大きな柱の1つとして災害医療活動を位置づけ取り組むべきである。明確な理念の下、活動方針を確かなものとする。
研修(各県単位であったり、組織体になったりも必要)を行うために予算化を行っていくことが必要である。この災害医療取り組みにより国民貢献を果たすことが日本社会における柔道整復師の存在意義を示すことになる。国民貢献なくして国家資格たる柔道整復師の存在はあり得ない。
今後の柔道整復師会及び会員にとって不可欠な取り組みである。
「公益社団法人日本柔道整復師会及び各県公益社団法人柔道整復師会は公益事業の大きな柱の1つとして災害医療活動を位置づけ取り組むべきである」をこのシンポジウムの宣言とさせて頂きます〟と結び、大きな拍手の中、幕を閉じた。

 

介護研修

(公社)日本柔道整復師会保険部介護対策課・藤田正一氏による「2017.柔道整復師と介護保険について」―柔道整復師の地域包括ケアシステムへの貢献―と題した講演が行われた。

 

会員研究発表
「災害医療と柔道整復師」

熊本県・荒井弘幸氏

「児童の足部アライメント不良による踵部痛に対するアプローチ
~足底板治療とテーピング運動療法の比較検証~」

熊本県・野田裕也氏

「股関節屈曲制限に対する牽引手技法」

福岡県・川上宏一氏

「前脛腓靭帯に着目した足関節内反捻挫の整復について」

福岡県・田代良太氏

「腓骨粉砕骨折の整復と固定」

鹿児島県・森浩一郎氏

「骨端線損傷を伴う中節骨骨折の一症例」

佐賀県・宇都宮功志氏

「肘関節外方不全脱臼の症例報告」

長崎県・田中秀樹氏

「開口及び閉口障害を伴う顎関節症に対する症例」

佐賀県・畑将由氏

以上8題

 

 

 
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