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(公社)日本柔道整復師会第9回大阪学術大会開催

2015/09/07
特別講演② 「栄養学から考えるコンディショニング」

立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科 吉居尚美氏

特別講演②吉居氏は栄養学の観点から、▼成長期アスリートのコンディショニング、▼筋肉量と筋力の低下とその弊害、▼運動と筋肥大、▼栄養摂取と運動の組み合わせによる相乗効果、の4つの項目に分け講演を行った。

成長期アスリートのコンディショニングについては〝食べたら勝てるという食べ物はない。勝つためにはしっかりとコンディションを維持するしかない。コンディションの変化を一番感じやすいのは体重の増減だと思われるが、消費エネルギー量よりも摂取エネルギー量が多ければ太る、逆であれば痩せる。特に高校生の部活動での運動量はかなり多いため、摂取エネルギーが足らずに痩せてしまい、コンディションが崩れてしまうことがある。そのため通常の食事以外に「補食」を摂ることによってカロリーを補う必要がある。ヒトを車に例えると、体格は車体にあたり変えることは出来ないが、燃料となる食事によってエンジンである筋肉は変えることが出来る。食事の摂取量不足は筋量の減少を招く〟として、競技種目やトレーニング内容を考慮した食生活の必要性を訴えた。

筋肉量と筋力の低下については〝筋肉は歩行動作の運動器と言われているが、安静時代謝量の30%を担い糖・脂質を代謝するなど、代謝を調節する役割がある重要な組織だ。筋肉は加齢に伴い、20歳代をピークに筋量と筋機能の低下が起こるがこれをサルコペニアという。50歳未満の男性において大腿周径と糖尿病リスクの関係性について調べたところ、周径が大きければ大きいほど糖尿病リスクが低いことがわかった。つまり足の筋肉量が多ければ多いほど内臓脂肪は少ない傾向にある。24時間中のたんぱく質の代謝では、成人では3度の食事の後、つまり1日3回筋肉の分解よりも合成が優位になるとされている。しかし高齢者の場合は合成の優位差が成人のそれよりも小さく、それがサルコペニアの一因ともなっていると考えられる〟と解説した。

たんぱく質とアミノ酸の違いとして〝たんぱく質の最小単位がアミノ酸であり、体の構成にかかわるアミノ酸は20種類ある。その内9種類は必須アミノ酸と呼ばれ、その他のアミノ酸との代替が効かず経口摂取しなければならない。アミノ酸を摂取すると高齢者でも若年者でも筋肉の合成速度が上がり分解速度は下がる。「mTOR」と呼ばれる筋肉内のシグナル因子が刺激されることで筋たんぱく質が合成されるが、特にロイシンがその活性に影響している。しかし高齢者は若年者に比較してロイシンの抵抗性が高く、これもサルコペニアを引き起こす要因となっていると思われる〟と高齢者と若年者の筋たんぱく合成速度を比較し、若いうちに意識して対策を行うことが大切であると主張した。そこで高齢者の筋肥大を目的とした運動プログラムを行なっているとして、トレーニング内容とその結果を紹介。長期的なトレーニングは筋肥大を引き起こし、低強度の運動でも筋力・筋量の変化は確認できると示した。

サルコペニア予防には運動介入が最も手軽かつ効果的であるが、同時に栄養摂取も重要だとして、吉居氏は〝プロテインは分割して摂取するよりも、運動後に一度に飲んだ方が血中のロイシン濃度が高くなり筋の合成速度も上がる。運動とたんぱく質摂取の組み合わせが筋肉、筋力の維持向上に重要となる。特にロイシンを含むものがmTORを刺激して筋を合成する。毎食にたんぱく質が含まれるよう意識すると良い〟と日常生活に取り入れることができる対策等を紹介し講演を終了した。

 

知識アップセミナーでは『萩原七郎・竹岡宇三郎を通して覧る柔道接骨術公認への取り組み』と題し、(一社)日本柔道整復接骨医学会・大河原晃氏により発表が行われた。

知識アップセミナー大河原氏は〝療養費の減少等の問題が山積している。何より人口減少と少子高齢化により社会保障制度が非常に不安定になり、我々の業界も崖っぷちに立たされている。国民からの信頼を崩壊させない為にも、過去の歴史を振り返りながらこれからの柔道整復師の在り方を再考したい〟として、柔道整復術公認運動への実質的指導者である公認期成会理事長・萩原七郎氏と公認期成会会長・竹岡宇三郎氏を通して、柔道整復の軌跡を辿った。

このほかに一般発表10題、日整発表2題、学生ポスター発表2題、保険セミナー2題が行われ、発表者の表彰の後、本学術大会は盛会のうちに幕を閉じた。

 

 
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