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第1回転倒予防指導士基礎講習会 開催される

2015/02/17

平成27年2月7日(土)・8日(日)、ヒューリックカンファレンス(東京都台東区)において、日本転倒予防学会「第1回転倒予防指導士基礎講習会」が開催された。

会場

 

前身団体である転倒予防医学研究会主催の「転倒予防指導者養成講座」では18回の開催で1,000名近い参加者を集めたが、今回より、日本転倒予防学会が認定する「転倒予防指導士」講習会と改め、講習終了時に実施される認定試験に合格することで「転倒予防指導士」の資格が取得できるようになった。

当日は理学療法士・介護士・看護師など80名が参加し、グループワークを含め受講した。日本転倒予防学会理事長の武藤芳照氏は、〝北は北海道、南は鹿児島・沖縄と、全国から、多職種で様々な専門性を持った方々が集まっている。ぜひ学会終了後にも連絡を取り合っていただき、輪が広がるようにしていただきたい。明日には日本で初めての転倒予防指導士が誕生する。この講習への参加が社会に役立つようにと考えている。今日明日としっかり勉強していただきたい〟と激励した。

 

講義1
「転倒予防の基本理念と健康」
日体大総合研究所 所長 武藤芳照氏

武藤芳照氏転倒した高齢者は対照群に比して生命予後が著しく不良であると言われるが、からだが弱くなっているから転倒するという考え方が大切である。転倒を契機として、大腿骨近位部骨折などを起こし寝たきり・要介護となったり、転倒を恐れ閉じこもりがちになり廃用症候群をきたしたり、持病が悪化・合併症を起こすなどして死に至る場合がある。転倒は、年齢・病気・薬・運動不足などの要因が重なることによって起こる。1度転ぶとその後の1年間で再び転倒するリスクは約5倍とされており、予防が重要となる。そして事故が起こってしまったら、発生状況別に情報を収集・整理して分析し、個別的課題・共通的課題について考え予防策を講じる必要がある。転倒には、防ぐことができる転倒と、現状の仕組みでは防ぐことができない転倒がある。それらを認識したうえで具体的・個別的転倒予防の取り組みを推進する。転倒を予防することで、寝たきり・要介護状態を予防し、高齢者の健康と幸福と自己実現にまで結びつけることができる。それと同時に専門職スタッフの知識・経験・技術を融合させて、質を向上させると同時に専門職の人々の誇りと自信、希望につなげることも重要である。

 

講義2
「転倒および転倒予防の現状と課題」
「転倒後の外傷に対する治療とその予後」
慶応義塾大学医学部リハビリテーション医学教室 助教 大高洋平氏

大高洋平氏重力の下で生きる時点で転倒はつきものだが、それとどう付き合っていくかが課題である。現在は世界的に長寿社会となっているが、その中でも日本は抜きんでて高齢化が進んでいる。全転倒において5~10%に骨折が発生し、1~2%に大腿骨近位部骨折が発生している。日本における転倒率は、地域在住高齢者で10~20%ほど、施設入居者で約30%とされている。高齢者の不慮の事故死では、転倒・転落は窒息に次いで2位だが、3位の溺死・溺水のうち浴槽での転倒等を含めると1番多い非常に重要な事項である。要介護となる原因としても骨折・転倒は11.8%を占めている。転倒は外傷だけではなく、自信喪失や転倒恐怖などの心理的問題も引き起こし、要介護状態につながると社会的に問題視されている。転倒による骨折の種類は年齢層により異なり、橈骨遠位端骨折は50歳代、大腿骨近位部骨折は70歳代に起こりやすい。日本では1987年以来大腿骨近位部骨折が増加しており、25年間で5万3千人から17万6千人にまで増えた。大腿骨近位部骨折は生命予後と密接に関係していると言われ、発症後1年間の生存率が低下する。大腿骨近位部骨折の手術の方法として固定骨接合術や骨頭置換術などがあり、高齢者も積極的に手術を受けるケースが多く94%に及ぶ。実際に、保存的治療よりも手術をした方が予後が良いとされている。複数回の転倒が起こったら、原因を究明し除去改善を行うことで再発を防止したり予後を改善することができる。

 

講義3
「転倒のリスクおよび機能評価」
「転倒予防の運動療法」
雲南市立身体教育医学研究所うんなん 主任研究員 北湯口純氏

北湯口純氏転倒は結果でもあり原因でもある。転倒を予防するには何故転倒が起こるのかという背景や要因を適切に評価して、転倒リスクに応じた対策を講じる必要がある。なかでも身体機能の低下は高齢者の転倒の大きな要因となっている。多角的に評価を行い、それに基づく多角的な介入を行うことで、転倒を防ぐことができる。運動機能の測定は特別な装置を必要とせず簡便に行えるため、様々な測定を組み合わせて総合的な評価を行い、適切な転倒リスク評価を行うことが重要となる。結果の良し悪しだけではなく、自分の体の状態をきちんと把握してフィードバックをしっかり行い、今後に生かすことが大切である。転倒は身体機能の低下によるところが大きいが、内的要因が大きくなればなるほど住環境などの外的要因の影響も受けやすくなり、介入効果を得ることも難しくなってしまう。機能が伴わないまま急激に活動度を上昇させると転倒リスクも高くなってしまうため、段階的にアプローチするなどリスク評価に基づいた対策が必要となる。高齢者の運動指導には、主体的に無理なく行うことができ、安全で効果的であることが求められる。転倒予防の効果に限らず、高齢者の健康増進に身体活動は欠かせず、個々の状況に合わせたアプローチが必要となる。

 

 
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