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(公社)日本柔道整復師会 第43回九州学術大会佐賀大会 開催

2014/08/16
特別講演「股関節の機能解剖及び股関節疾患に対する手術の現状」
佐賀大学医学部整形外科学 主任教授・馬渡正明氏

佐賀大学医学部整形外科学 主任教授・馬渡正明氏馬渡氏は〝富永会長は私の高校の先輩で、毎年講演させて頂いています〟と挨拶、本題に入った。

股関節は、骨盤と下肢を連結し、寛骨臼と大腿骨骨頭により形成され、それを関節包が包み、外側の筋肉で関節を安定させている。股関節は荷重関節で形状は丸く、大きな可動域が特徴で、構造上まん丸で深く骨盤に包まれている。大腿骨は、頸部と大腿骨の骨軸盤は正常で135度の角度をもって頸部骨頭と繋がり、角度が大きければ外反股、小さければ内反股と言う。成長過程で大から小さい角度に徐々に変わる。内反股骨切り術、外反股骨切り術などバイオメカニクス上、夫々の症例で角度を変える手術がある。大腿骨頭は横から見た時、前に捻れ(前捻角)、正常で15度~20度位、前捻角が強い場合があり後ろは後捻と言う。大腿骨を上から見ると、膝のラインに対して骨頭の部分が20度~15度位前のほうに傾くのが正常な形で、変形性股関節症になると爪先を外側に向けて外旋位歩行になることが多い。大腿骨の捻れの大きさで足の爪先の角度は変わる。関節の安定化は骨だけでなく関節包が重要で切れると非常に不安定になる。手術時に切らざるを得ない場合に最小限にとどめている。

 

股関節屈曲筋で大きいのは腸骨筋、大腿腰筋の一部の縫工筋、外転や内転筋群は4つ位大きな筋肉があり、外旋筋は梨状筋、内・外閉鎖筋等であるが内旋筋は無い。伸展筋群はハムストリングで、大腿二頭筋、腸腰筋、大腿骨筋膜張筋が連結して骨盤と股関節、大腿骨を繋いでいる。股関節の骨表面に2~3ミリの関節軟骨組織があり、つるつるした滑らかな軟骨が表面を覆いスムーズに動く。関節軟骨中には軟骨細胞があり周囲の器質を作る。器質は体重がかかる方向にコラーゲン繊維、プロティオフリカン、コンドロイチンがあり、体重を受ける構造になっている。軟骨組織には血管と神経が無いのが特徴、など股関節を解剖生理学的に解説。

 

変形性股関節症について。整形外科のバイブル「神中整形外科学」に〝股関節は荷重関節で、先天性・後天性の原因で骨の構造に僅かな欠陥が生じても変形性股関節症に進む〟と記載されているが、一つは軟骨が肥満など大きな負荷で変成する。他の1つは、生まれつき軟骨が弱い場合である。痛みは、関連痛として特に子供の場合、膝の痛みを訴える場合がある。股関節の障害がある子が膝痛を訴えることは多く、膝痛の子供は股関節の動きを診るべきで、診察では、大転子の斜め上方周辺部に痛みがあるかどうかを診る。トーマステストで〝股関節の伸展をみる時には反対側の股関節をしっかりフルプレクションさせて股関節が伸びるかどうかをみる。もし股関節の伸展制限があれば股関節の疾患を疑う。もう1つはパトリックテストで股関節の動きが悪く拘縮があれば陽性である。

 

変形性股関節症は総称であり、原因が分らないものを一次性、原因がはっきりしているものを二次性といい、二次性の代表的なものが発育性股関節形成不全(DDH)で、日本で一番多く9割位がDDHとされている。大腿骨頭壊死症、高齢者にみられる急速破壊型股関節症は、一年以内に股関節が急に壊れる病気で骨粗鬆症との関係が言われている。他にペルテス病、すべり症、関節性軟節炎等がある。発育性股関節形成不全DDHは、屋根部が小さく骨頭がはみ出ている。屋根が浅いので部分的に体重をかけ軟骨が痛む。屋根が小さいので骨頭が徐々に脱臼していくのでシェントン線が狂う。骨盤の形成不全が変形性関節症の大きな理由である。ペルテス病は子供の骨頭壊死で治ってもいびつな骨頭で成長するため60代位になると徐々に関節が悪くなる。

 

今は関節鏡での骨切り術、人工関節で、最近関節固定術は全く行われていない。我々の得意技は骨切り術で、股関節形成不全の場合に寛骨臼を大きくするために行なったり、骨頭壊死の場合、骨頭の全てではなく残っている一部分を体重がかかるところに持ってくるために行なっている。

 

私は九州大学出身で、先々代の西尾教授、先代の西岡教授の薫陶を得て今もこういう手術を行っており、骨切り術の発展に果たした九州大学の役割は非常に大きかった。人工関節は痛んだ関節を取るため確実ではあるが最終手段でもある。手術は技術的な進歩、人工関節の進歩で期待ができる等話し、手術例を画像で紹介しながら詳しく解説。人工関節は日本では5万例位、アメリカでは人口は2倍位であるが、手術症例は6倍位ある。手術自体は高額であるが、20年~30年使うことが出来ればコストパフォーマンス的に優れた手術といえる。大学ではモーションキャンプチャーを導入し〝どう歩いているか〟〝股関節・肩・腰の動き〟を解析、術前術後の動きを調べダイナミックに評価している。当大学病院は、今7500位の症例数、基本的にはセメントレスという人工関節を行っているのが特徴である。1200例位の手術を行っている内600位が股関節で、他には膝・手足・脊椎等である。去年の股関節手術は大体600例位を行っている等、股関節を網羅する講演内容であった。

 

特別講演Ⅱでは、日本柔道整復師会国際部の本間琢英氏と根來信也氏が『草原に架かる虹を追って』と題した講演と日整保険部の川口貴弘氏と三谷誉氏による『柔道整復師と介護保険について―生活目標を達成する運動とは―』の2つの講演が行われ、好評を博した。

また早朝より熱心に行われた会員研究発表は「伸縮性・非伸縮性テーピング固定による治癒過程の比較分析」佐賀県・大庭輝人氏、「橈骨遠位端骨折二症例の比較分析」佐賀県・平野弘道氏、「呼吸法を利用した独自の手技による頚部へのアプローチ」宮崎県・田川雅敏氏ら9題の発表があった。

閉会の辞を、沖縄県柔道整復師会学術部長の渡慶次克紀氏が述べ、来年へ夢と期待を繋ぎ終了した。

 

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