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(公社)日本柔道整復師会 第36回北信越学術大会石川大会 開催

2014/07/16

平成26年6月29日(日)、ホテル金沢(石川県金沢市)において「公益社団法人日本柔道整復師会第36回北信越学術大会石川大会」が開催された。本学会では、公開特別講演1題・協賛発表1題、研究発表5題・実技発表1題・ポスター発表2題・ランチョンセミナー2題が行われた。

 

公開特別講演『金沢発~整形外科医療の最前線』
金沢大学付属病院整形外科 主任教授 土屋弘行 先生

土屋氏は〝整形外科が何なのかをよくわかっていない人が多い。最近では美容整形、形成外科と混同されてしまっている。整形外科は骨・筋肉・関節・神経等の運動器を扱う。頭より下は診ることができ、非常に守備範囲が広い〟など、整形外科の扱う範囲や疾患等について説明した。

 

整形外科では近年、メタボリックシンドローム・認知症と並び健康寿命を阻害する三大因子に数えられるロコモティブシンドロームの対策に力が注がれているという。〝運動器の疾患は世界的にも注目されており、WHOは高齢化社会に向け、運動して寝たきりになることを防止するよう推奨している。片足立ちを1分間1日5回程度行なう簡単なトレーニングだけでも、筋力が鍛えられ骨折予防に効果を発揮するのでお年寄りに勧めている。膝を軽く曲げて行なうスクワットも効果的である。これらを行なうだけでかなりの割合で予防できる〟として、土屋氏はロコモティブシンドロームを防ぐための運動について紹介した。

 

また〝現在の日本人の平均寿命は、男性79歳・女性86歳くらいで世界でもトップクラスを誇る。ところが健康寿命は男性72歳・女性78歳であり、平均寿命とは7~8年程度の開きがある〟として、男女ともに介護状態となっている期間が長いことを指摘。寝たきりになる原因については〝脳血管疾患、高齢による衰弱、骨折・転倒・関節疾患等などの運動器に係る疾患が多い。大腿骨頚部骨折は高齢者に発生しやすい骨折だが、データによれば大腿骨頚部骨折後に5年生存する割合は50%ほどであり、半数は死亡してしまっている〟として、未然に怪我を防ぐことの重要さを主張した。

 

その後、土屋氏は整形外科における最新技術を紹介。〝多発性内軟骨腫症という骨の腫瘍になった患者は、大腿骨が大きく曲がってしまっておりバランスをとるために背骨も曲がってしまっていた。他院では切断を勧められたが、骨を切って創外器で固定し、変形を矯正しながら毎日少しずつ伸ばしていくことによって骨が再生し、無理なく歩けるようになった。骨肉腫の手術においては、ガンに侵された骨を取り出して-196℃の液体窒素に20分間漬けることでガン細胞を凍らせて死滅させ、解凍後体内に戻して抗菌金属で固定するという画期的な技術がある。また液体窒素処理骨移植により、凍って死滅したがんの組織に体が反応して免疫反応を起こし、他の組織に転移したガンを消すことができる可能性が出てきた。豊胸手術や乳がん切除後の乳房再建術では、腹部や大腿部から採取した脂肪を必要な部分に注入する処置が行なわれている。脂肪の中には幹細胞(脂肪由来幹細胞)があり、骨や軟骨、脂肪組織、筋肉や神経に変わることができる。これを応用して、変形性股関節症などの治療に生かそうと研究が進められている〟と、症例写真を交えて具体的な治療方法を解説し、会場の参加者からは時折驚きの声が上がっていた。

 

土屋氏は最後に〝金沢大学整形外科のモットーは「医学への精進と貢献」で、最良の医療を提供すべく頑張っている。医学を進化させるためには挑戦するしかない。医療業界は今、風当たりが強くて守りの医療となっているが、そうなると進歩がなかなか望めなくなってしまう。果敢に挑戦していかなければならない。夢を抱いてそれを実現するように努力しようと常日頃から考えている〟と締めくくった。

 

その後続いて、協賛発表1題、研究発表5題・実技発表1題・ポスター発表2題・ランチョンセミナー2題が行われた。(協賛発表・研究発表・実技発表・ポスター発表は学会誌をご覧ください。)

 

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