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運動器超音波塾【第4回:肩関節の観察法 2】

2015/06/01

株式会社エス・エス・ビー
超音波営業部マネージャー
柳澤 昭一

近年、デジタル技術により画像の分解能が飛躍的に向上した超音波は、表在用の高周波プローブの登場により、運動器領域で十分使える機器となりました。この超音波を使って、柔道整復師分野でどのように活用できるのかを、超音波の基礎からわかりやすくお話してまいります。

 

第四回「閻魔様に怒られないように」の巻
―上肢編 肩関節の観察法について 2 ―

肩が痛い「肩」について調べていくと、「笑ったり」「怒ったり」、「組んだり」「並べたり」、「風を切ったり」「荷をおろしたり」、「貸してあげたり」「寄せ合ったり」と、慣用句などもかなりあるようです。「肩」も、いろいろ大変そうです。運動器の構成体としての役割以外に、こころや人間模様までも表現しなければならない。どうやら日本人は、「肩」について特別な思い入れを持っているようです。それについて、吉竹博先生(心理学者)は、仏典の中に答えがあると書いています。そもそも人間の肩には、生まれてから死ぬまでの間、その人の善悪を記録する俱生神(くしょうじん)という二人の神様が乗っかっており、その人の死後、閻魔大王にその人生での善行と悪行を報告して、それで極楽か地獄かの運命の分かれ道になるという話です。いやはや、我々の「肩」には随分とたくさんのものがのっかっているようで、肩も凝るわけです。これはもう、閻魔様に怒られないように、善行を心掛けて、日々反省を繰り返すしかないですね。

地獄の法廷を描いた中国の仏画 ウィキペディアより

地獄の法廷を描いた中国の仏画 ウィキペディアより

今回の「運動器の超音波観察法」の話は、「肩関節の観察法」の続きとして腱板について考えてみたいと思います。

 

50歳以上の一般住民約1/4に腱板完全断裂が存在する。
 しかし、その約2/3には自覚症状がない。

これは「ポータブルエコーを用いた腱板断裂肩の住民検診」という事で、秋田大整形の皆川先生(現 城東整形外科)や岐阜大整形の福田先生らが行った仕事です。腱板完全断裂が、必ずしも痛みや機能障害の原因とは限らない。初めてその事実に触れた時は、頭を殴られたようにショックでした。私にとっては、お二人とも運動器超音波の師匠で、臨床でのデータ撮りなど、技術協力させて頂きながら、手取り足取りご教授頂きました。確かに、自分たちは何らかの痛みや機能障害があるが故に来院するわけで、一般住民に対して検診をすると、こんな事実が浮かび上がってくる。振り返ると、義務教育の時から体力テストを行ってきた記憶はありますが、運動器検診という事はなかったように思います。成長過程を含め、自分の身体の状態を知るという意味においても、運動器検診というのは、大切なのだろうと初めて気づかされた瞬間でした。そしてその実現を勝手に夢想すると、手軽さ、安全性という点でも、ポータブルの超音波診断装置が第一選択となるだろうと思っているところです。

 

肩関節の超音波観察法 基本肢位は座位

重要なポイントなので、今回も触れます。超音波での観察法の場合、最初に考慮すべき点としては、観察肢位が挙げられます。被験者はもちろん、観察者も楽な肢位での観察が的確なプローブワークにつながり、より情報の多い画像が得られます。この場合、大切なことは、動態観察を想定しての肢位を検討すべきだという事です。

肩関節の場合、仰臥位では後方からのアプローチが出来ない事、肩甲骨が床面と接触してしまうと、内外旋運動や外転運動のような自然な肩の動きができなくなるという理由によって、基本肢位は坐位が良いと考えられます。

棘上筋・棘下筋の観察肢位は、手を鼠蹊部において脇を締めた姿勢で腱板を肩峰から引き出した状態で行います。(肩関節軽度伸展位)

図 肩関節の観察法 棘上筋・棘下筋の観察の基本肢位(肩関節軽度伸展位)

図 肩関節の観察法 棘上筋・棘下筋の観察の基本肢位(肩関節軽度伸展位)

 

腱板の形態と解剖学的構造

棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の腱は、ひとかたまりの板状に見える事から、腱板(rotator cuff)と呼ばれています。 右上腕骨を上から見ると、それぞれの腱の付着面(facet)があるのが解ります。それぞれ、SF : superior facet 、MF : middle facet、 IF : inferior facetと呼ばれています。SFには棘上筋、MFには棘下筋、IFには小円筋が付着しています。この付着面を目印にすることによって、それぞれの腱が区別できるわけです。*1

*1 超音波でわかる運動器疾患 皆川洋至 ㈱メディカルビュー社 より

図 上腕骨骨頭と腱板の付着面

図 上腕骨骨頭と腱板の付着面

 

 

 
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