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運動器超音波塾【第2回:超音波の安全性と基本原理について】

2015/02/01

株式会社エス・エス・ビー
超音波営業部マネージャー
柳澤 昭一

近年、デジタル技術により画像の分解能が飛躍的に向上した超音波は、表在用の高周波プローブの登場により、運動器領域で十分使える機器となりました。この超音波を使って、柔道整復師分野でどのように活用できるのかを、超音波の基礎からわかりやすくお話してまいります。

 

第二回「超音波って、お腹の赤ちゃんを見られる機械だよね」の巻
―超音波の安全性と基本原理―

超音波による運動器の画像処理を開発している頃、どうも超音波でいろいろ研究している変わった人がいるらしいとの噂が噂を呼び、テレビの製作会社から技術協力の要請がありました。

NHK教育の「科学大好き土よう塾」という番組で、「なぜラクダは砂漠でも平気で生きられるの?」という企画での協力依頼で、弊社の超音波観察システムを持参して、群馬サファリパークに行きました。ラクダが灼熱の砂漠の中で生きていけるのにはコブに秘密があるという事で、獣医学の教授の指導のもと、ラクダのシャツを着た人間のお腹とラクダのコブを超音波診断装置で比較観察して中身を調べるという実験を行いました。どちらにも脂肪が詰まっており、ラクダの場合は、砂漠での活動の為のエネルギーの貯蔵庫としての役割と、内臓を直射日光による熱から防御する意味がある事などが解りました。その後、その時に知り合った獣医学の教授とも仲良くして頂き、希少動物の繁殖研究のお手伝いもすることになりました。超音波で、不思議なご縁を頂きました。

さて、超音波というと、大部分の人が最初に思い浮かべるイメージとして、胎児の映っている画像を挙げられるのではないでしょうか。子宮の中で眠る胎児の画像は、医学的な診断のための情報である以上に、観る者にとても神秘的な生命の力強さを感じさせてくれたりします。運動器の観察に使用される超音波も、実はこれと全く同じ超音波を使っています。

小児の場合、臓器の放射線感受性が高く、余命が長いために放射線の影響が将来出現する確率が高いなどの理由により、X線などの検査は必要最小限となっています。
そのような理由で、超音波は数ある診断装置の中でも最も安全性が高いという事で、胎児の観察によく使われています。

図 超音波による胎児の4D観察

※ 一部OS、ブラウザによっては動画が再生できない場合がございます。

という事で、今回の「運動器の超音波観察法」の話ですが、「超音波の安全性と基本原理」について、考えてみたいと思います。

 

前回、超音波による運動器観察の利点の一つとして、非侵襲的で安全性が高いことを挙げましたが、実際の安全性は何を基準に言われているのでしょうか。まず基本的に超音波というものが、どういうものなのかを考えてみます。

超音波も光や地震波などと同様に、物理現象としての波動の一種です。疎密波という縦波で、進行方向に疎密を繰り返して伝わっていきます。こう言うと何か難しい事のようですが、要は自然界にある音の仲間で、非常に高い音を使っているという事です。人間の耳で聞き取れる音の範囲を可聴域、或いは可聴音と呼びます。個人差や加齢、朝夕でも違ってきますが、およそ20Hz~20,000Hzと言われています。Hz(ヘルツ)という単位は、1秒間に何回振幅するのかという波の数(周波数)で、音の高さをあらわしています。これに対して運動器の観察で主に使っている超音波の周波数は、3.5MHz~18MHzという範囲です。1MHz(メガヘルツ)は10の6乗ですから、1,000,000Hzとなり、とても高い音を使っている事がわかります。動物では、イルカやコウモリが超音波を利用しているのは良く知られていますが、ハチノスツヅリガと呼ばれる蛾の一種は、既知の動物では最も高周波となる300kHzまで感知できることが解りました。0.3MHzという事ですから、驚きです。

縦波と横波

周波数とは1秒間に繰り返される波の数

 

運動器の観察に使う超音波が、非常に高い音だという事はわかりましたが、どのような仕組で画像化しているのでしょうか。

超音波診断装置を構成する機器は、超音波診断装置本体とプローブ(探触子)に大別されます。このプローブから音を発生させて、体の中のさまざまな組織で反射してきた音をまたプローブで受け取り、その情報を基にして画像化する、というのが、超音波の基本的な仕組みという事になります。また、一般のカメラと同様に、焦点距離を持っています。自分の観たい深さにこの焦点(Focus)を合わせるというのが、最初にすべき調整という事になります。大切な事項をまとめると、下記のようになります。

超音波は音の反射現象を利用して画像化する。
生体内軟部組織ではあまり密度の差は無く、このことを考慮すると、反射率の差は 音速の違い(硬さ)を反映している。
観察する部位によって、周波数やフォーカスを調整すると、良好な画像が得られる。
画像診断には、アーティファクト(虚像)に注意。

 

 
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