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柔整師養成校訪問レポート
【第2回 : 帝京大学医療技術学部柔道整復師学科】
―大学の付属接骨院としての役割、また学生に対する指導方法についてお聞かせ下さい。
我々柔道整復師は資格取得前に実習がありますが、法律の関係上、実際に患者に触ることはできません。ですので、見学実習という形になります。普通は専門学校などではカリキュラムの中に実習コースが組み込まれていて、1週間なら1週間、1か月なら1か月通いつめてそれで終わりです。しかし、帝京大学の場合は見学実習と言っても、学生は時間が空いている時に自由に出入りして見学することが出来るようになっているわけです。構内に接骨院がありますからね。極端に言えば、1年生から4年生の間見学に来ていても良い訳です。そこが他の学校とは違う所だと思います。
また、私は院長ではありますが大学教員ではありませんので、文部科学省のしばりはなく、生徒にも臨床現場の監督という立場で、いろいろものを言いやすい立場にあるともいえます。実習期間というのは限られてしまいますし、私自身、初めての体験なので、どういうふうに接していったらいいかと思う所はありますが、患者さんと普段通りに接しているところを見て学生がどう判断するかだと思います。考えるよりも、今までの経験を感じ取ってもらえたらいいのかなと思っています。理論的なことは大学のほうで細かく教えていますから、その他の技術的なケアの問題で、出来るだけ実践に即した形で捉えてくれれば良いと思っています。
せっかくの付属接骨院であっても、ただ国家試験の為だけにある施設になってしまったら意味がありません。やる気があって1年生の時から頻繁に顔を出していて、4年生になる頃には患者さんの立場になって観察ができるというような生徒が出てきてほしいと思います。そして、ここで実際のところどういう治療をしているのかを見てもらったら、その疑問点をいろんな先生と話し合いをしたり、自分で研究をしてみたいと思う生徒が出てきてくれると嬉しいですね。
―柔道整復を学問として追究していく上で、理想的な環境と言えますね。
その通りだと思います。実際に患者さんを診ていく上で全く同じ症例というのはひとつとしてありませんから、同じような治療をしていても、一方はすぐ治って、もう一方はなかなか治らないということもあります。そんな時に、それは何故か?と考えていくのも楽しいと思います。そういうところからも、学問に入って行く道がありそうですね。
これまでも、柔道整復に関する論文発表の中で、素晴らしいものがたくさんあると思います。それなのに、学問としてなかなか認められないのは何故か。それは、すべて柔道整復師に対してのみしか発表してこず、一般向けにはPRしてこなかったからだと私は思います。誰にでもわかってもらえるかたちで科学的出版物を我々自身で出してこなかったことも、理由の一つでしょう。柔道整復師向けには専門誌が出ていても、他の学問分野と関係がなさ過ぎたきらいがある。国や医療機関をはじめ、世界に我々がこういうことをやっていて、柔道整復が素晴らしいものだとわかってもらうためには、英文の論文を出すなどのアピールをしていかなければならないと思います。その役割を帝京大学が担えれば、柔道整復師の質の向上に繋がるものと考えています。
―柔道整復師として患者さんと接していく中で、必要なものとは何でしょうか?
私たち柔道整復師は痛みを持っているひとにとっては最終的な頼りどころとなることも多いです。我々の治療では保険が使えます。病院に行って、診断されお薬も出してもらうわけですが、患部に十分な処置をして貰えず、どうしたら良いのか分からないという人もいらっしゃいます。しかし、そういう人にでも我々は手当てが出来るのです。患部に触れることと心のケアをすることで良くなってしまうことも多いんですよね。心のケアというのは学問の段階ではなく、人間性の問題ですから、「この先生は何でも話を聞いてくれる、安心して任せられる」と患者さんが思える柔整師、相手(患者様)の立場になって一緒に考えられる柔整師が一番だと思います。学生たちにはそういうケアのできる、心の痛みまでわかる柔道整復師になってもらいたいと願っています。