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東日本大震災から1年 復興への願いを込めて!
【(社)宮城県柔道整復師会会長・豊嶋良一氏】
―地域住民の方々は凄く心強かったでしょうね。
当会の各施術所の看板「子供とお年寄りの避難所」は県内全24警察署、まだ全てではありませんが市・町と協定を交わしているもので、診療時間内は必ず白衣の下には黒帯を締めた会員が居るという心強いものがあると思います。"こども110番"とは少し意味が違うところかと思います。
地震直後には自分の家はそっちのけで、近くの避難所に駆けつけたり、井戸水が出る会員の処では地域の人たちを呼んであげる、治療室を開放して休ませてあげる。または、貯留タンクを備え、プロパンガス使用のマンションに住む会員は風呂場が使えましたから近隣の方々にお声掛けしてどんどん風呂に入れてあげたり、骨折や怪我を治す医療救護活動と同時にやれた形でした。それらは私達柔道整復師が地域に戻った本当の成果と言えます。我々柔道整復師は、とにかく"人を救え""他人のためなら4倍動ける"というのが先代会長からの教えでもありました。
―第一次医療での柔整救護活動が求められていると思いますが・・・
この度の震災を機に、敏速なフットワークの良さが何よりも評価されたことだと思っています。命のやり取りを医師が担い、外傷性疾患は柔道整復師が担う。かつ、劣悪な避難所生活や仮設生活からくる、エコノミー症候、廃用性、または、生活不活発病に対する運動機能訓練指導員としての外傷性疾患の後療法に裏付けされた医療救護活動であると確信しています。
昨年の12月に宮城県と防災災害協定を結ぶことが出来ました。柔道整復師の医療救護として災害時において医師、看護師、薬剤師、または警察や自衛隊その他等から構成される組織の中に柔道整復師も医療救護活動として入ることが認められた訳です。防災会議は国の管轄下で同じ会議テーブルについて行動に移れるということです。
―よく柔道整復師の方々のボランティア活動に対して"マッサージをして喜ばれる"という報道がされておりますが
何度も言いますが、部分医療を業とする我々柔道整復師は、骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷及び骨・関節運動器系の急性・亜急性外傷の痛みや機能障害に対する保存的療法の専門職です。初期処置として整復・施術を行います。それ以後は科学的根拠を基とした後療法を施します。後療法によって患部やその周囲、または、患部をかばうことによって発生してくる軟部組織の障害や関節の可動域拡大を図り、あわせて脈管系への効果をも期待しながら患部の回復をはかります。これが傍から見るとマッサージに見えてしまう様ですが、治療行為の一環であり、慰安的マッサージとは似て非なるものです。そこはプライドを持ちながらやらせてもらっています。そこをどう理解してもらえるかということに、いつも苦慮しているところですが、後療法を基とした機能回復運動や手技の一環であるいうことを理解してもらいたい。
―宮城県の活動内容を、他の方たちは今後の対策として、教訓として知っておくべきでしょうか。
組織としてのインフラ整備はもとより、先ずは行動、実践だと思います。今回のめざましいSVM医療救護ボランティア活動の成果から、災害時に備えての組織づくりと、常日頃のトレーニングが大変大切と思われ、それさえしっかりしておけばかなりの動きはとれると思います。ただし、公社、または、社団が全会員で組織するボランティア活動の根幹を理解して頂ける会員をどのように育成するかが、執行部の真価が問われるところではありますが。
―どのような形でボランティア活動すれば、地域の方々のニーズと合致するのでしょうか。
従来型の個々の単位の活動から、社会的ニーズに呼応する組織型へ、そしてそこから透けて見えてきたさらなる発展型が、地域の「資源」、地域の「文化」となること。それには、スキルアップした会員を地域へ戻す。地域に戻った会員個々に在っては「子供とお年寄りの避難所」を開設し、また、地域のスポーツ現場や祭り行事などの催しごとへ積極的に参加しながら、地域のニーズに求められ、そして応えられる「地域資源」柔道整復師として認知され、結果として地域の文化として根付く事ではないでしょうか。
―他県から来られるボランティアの柔整の先生に対し、現地の人たちの受け止め方はどうでしたか。
大変喜ばれておりました。それで他県から来られたボランティアの先生も同じところに2回も3回も入る。顔なじみになって、最後に感謝の言葉で泣きながらお別れをしています。一人の先生は早朝より避難所を何か所も回っておられました。一人で1週間位滞在して頂いた方もおります。本当に感謝しております。