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第1回「柔道整復師の保険治療とは何か」と題し勉強会が開催される

2012/04/01

河野:
私も精神的なものや交感神経緊張症が腰に影響しているという事があるのではないかと考えています。特に頭の中の前頭葉の緊張度合とか大脳の運動神経をコントロールするところとか、その辺の硬さや動きをみていると腰と非常に関係しているところが多いですね。確かに柔整の分野からはちょっと離れてしまいますが、本当に何とかしていきたいと思うとその辺のアプローチが欠かせないと思います。

 

■ 関連部位について

本多:
先生方は腰痛の治療をする時に、他のどの部位について主に治療を行いますか?

福岡:
交通事故でむち打ちの患者さんは、初めは頸椎の異常を訴えます。しかし、日数が経つにつれ腰痛が発生するんですね。実は首を捻挫すると、脊髄神経を囲んでいる硬膜という膜が首の上のほうと腰についているんですが、これが衝撃で引っ張られる。したがって二次的な損傷として腰部の痛みや障害というのが起きる。これは医学的にも証明されています。どうしても怪我を首だけに限定した場合に、腰痛が出たら因果関係が認められないという事が未だにあるようですが、頸部を損傷することによって十分に腰痛を発症する原因になるということです。

河野:
部位別の治療という事でデータ収集をしていまして、そのなかでどことどこが関連して請求しているのかという関連部位という項目があるんですが、データによると背部と腰部の組み合わせが13.8%です。頸部と腰部、右肩と腰部、腰部と左右股関節、だいたいそういうところです。

菅俣:
保険請求のレセプトに出している数字と実際に治療をしている場所というのは必ずしも当てはまらない部分があったりします。腰の状況が悪くなってくれば生活する上で、もしくは自分の身を守るために不都合な姿勢で生活をしているために殿筋部分に張りが出てきたりハムストリングが硬くなってきたりします。そういうところにも当然治療としてはアクセスしますが、請求には載せていません。

宮澤:
請求の部位に関して、背部と腰部であれば関連して痛みも出てくると思います。施術としては骨盤の動きから考えるとハムストリングスを緩めていかないとなかなか治らないのでそちらを診ているのですが、請求部位は腰部と背部くらいに留まるという形をとっています。治療は大腿まで行いますが、治療した部位が請求してもよいとされている部位ではないため、傷んでいる部位、負傷部位を請求しています。

有路:
私は臨床に入って10年目ですが、今我々が行っている治療が正しいのかどうかという事を現代医学的な目で判断しようとするから問題なんだと思って聞いていました。人間には姿勢反射というものがあります。例えば距骨がちょっとずれているとかそういうことに身体は非常に敏感に反応するので、首の痛み、手の痛みの原因が距骨だったとか仙骨だったとか、そういう事はよくあります。だから実際に治療して、これとこれは関連しているだろうと思われるものに関しては、例えば腰部と足関節を請求したり下腿部挫傷を請求したりということはあります。

本多:
主訴の他の部位を治療するときに関連しているかどうかはどういう方法で判定するんですか?

有路:
例えば距骨に対してごく軽い刺激を与えた時に、患者さんが腰の痛みを訴えなくなったとしたらそれは間違いなく関連しているということです。我々は実際に臨床的に診るには徒手検査しかないので、いよいよ自分たちの判断で怪しいなというものは病院に送りますが、リスクのない刺激を患者さんに与えて患者さんの身体がどう反応するのかというのは、ある意味現代的な検査器具よりも優れていると私は思っています。

本多:
関連痛というのは今、先生方からお話があったようにきちんと捉えられてレセプトで上がってくるのだから、たぶん問題が無いと思います。しかし保険の審査の時にこの2つの部位が関連しているのかという事が非常にわかりにくい。そういうことをきちんとこれから説明していかないとなかなか理解は難しいのではないかという思いが致します。


 

最後に本多氏より、〝医者は原因がよくわからないものを腰痛症と呼んでいる。柔整の先生方は腰痛症という用語は使えないから捻挫を使うしかない。だから訳が分からない話になってしまう。見えないところでやっているから逆に悪用する柔整師も増えて、まじめな柔整師がバカを見るということが起こる。あるいは整形外科から変な誤解を受けて柔整師の存在を小さく評価されてしまっている。私は柔道整復師の治療は伝統医療とは思っていない。これは経験医療です。経験を積み重ねることで出てきた原理なんです。そこをきちんと分けてもらわないと、これからの医者、西洋医学の人たちとの会話が非常にしにくくなる。医者が使っている用語を柔道整復師の世界と同じように使おうとするから混乱を招くのです。腰痛症なんていう病名はありません。病名がないから腰痛症と言わざるを得ないんです。私どもはこういう勉強会を何回か繰り返すことによって、柔道整復師が実際に行っている治療実態を表に出して、世の批判を受けるということをやってみたい〟と締めくくった。

今回は腰痛症にテーマを絞った形の勉強会となったが、次回4月15日(日)は頚部・肩部の部位に議論を展開していく予定。

 

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