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(社)京都府柔道整復師会・大西会長、「傷病名問題」を語る!

2012/03/01

―卒後研修や認定制度については、如何あるべきでしょうか?

専門学校3年を出て、開業するなんていうことは、全く考えられません。大体失礼です。古臭い話ですが、私たちが学校に行っていた当時は、〝どうやって骨を接いでやろうか〟〝どうやって脱臼を入れようか〟と、そんなことしか考えておりませんでした。お金が儲かるとか、考えたこともなかったです。しかし今は逆で、〝整復?むりむり、脱臼むりむり、病院に行ってください〟って言います。〝貴方、じゃ何するの?〟と聞くと〝軽いヤツしますから。軽いものでも一人は一人ですから〟と、いくら儲かるとかそんな話です。そういった最近の柔道整復師が開く接骨院の看板に「骨折」「脱臼」は書かれておりません。「捻挫」「打撲」「挫傷」「スポーツ障害」で、その横に肩こり・腰痛と。我々と全然認識が違っています。修行はしない、勉強はしない、国家試験だけは通った、直ぐ開業、これはどうみてもおかしいです。昔の人たちは、弟子入りして修行して、そこで暖簾もらうまで頑張ったものですが、今は卒業イコール開業で、いったい何が出来るんでしょうね。

 

―そういった柔道整復師が大勢増えることについて

例えば京都を歩いてみると分かりますが、流行っている所と流行っていない所が完全に分かれています。昔からの骨接ぎで自分は上手いと自負されているような所は大体ダメです。「いらっしゃーい」とやっている所のほうが流行っています。そういった接骨院が保険請求を行っていると思いますので、正しいかといえば、怪しげです。そこら辺のことは、どうしても業務範囲の問題にふれると思います。やはり慰安を目的に行っている接骨院と治療を目的としている接骨院を分けていく必要があります。保険を使う場合は、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷と限られています。保険を使わないということであれば、本来は手術・投薬はいけないというだけでありますし、私が弟子の時にも歯が歪んでいたら、ペンチで真っ直ぐにしたりしましたよ(笑)。当然ですが保険請求はしないというだけで、患者さんがやって欲しがったことに対してある程度何でも応えていたということですが、今は訴訟を起こされたら負けますから、やり難い時代ではありますね。

 

―これまで日整と保険者間の協定では、問題は起こらなかったと聞いておりますが、それは何故なのでしょうか?

先人が築き上げてきた保険者と日整(柔道整復師)の信頼関係に揺るぎがなかったことに併せて、前に述べたことと重複しますが、これまでの日整は全国の開業柔道整復師の大半が会員となり、日整が柔道整復師の代表として行政機関と交渉してきた実績があったためだと思います。

 

―近年様々な問題が取沙汰されるようになったのは、個人請求者が増えたこと、つまり養成校の乱立が背景にあり、一方保険者財政の悪化があるかと思います。大西会長のご見解をお聞かせください。

平成10年の時点で、柔道整復師養成施設は全国で14校、柔道整復師国家試験合格者数は既卒者を含め1091名でしたが、福岡地裁で柔道整復師養成施設の新設を認めない当時の厚生省処分を取り消す判決が出たこともあり、平成12年4月より「柔道整復師養成施設指導要領」の大幅な改正が行われ、昨年の3月には大学も含めた養成校108校から既卒者を含め4592名の柔道整復師国家試験合格者数がありました。

先に行われました日整の署名活動の嘆願項目の一つが「柔道整復師養成施設が急増しておりその対策を求めます。」でした。平成21年11月の行政刷新会議で提起された柔道整復師の問題点に対しても適正化を図るために、「柔道整復師の養成数を管理できる法制度にする必要があること。」と「養成定員を減らすことに併せ、柔道整復師の総数を抑制する手段を講じること。」があげられています。

個人請求者については京都府におきましても平成18年10月に個人請求(他団体加入者を含む)の柔道整復師数が社団会員の数を上回りました。個人請求者の増大は時代の流れなのかもしれませんが、間違った請求をする柔道整復師が増えている一因だと私は思います。極めてグレーな支給申請書の作成方法を教えるレセプトコンピュータ会社や怪しい請求団体も存在すると噂に聞きます。全ての個人請求者がそうとは言いませんが不正問題に対しても注意を喚起する者がいないと、是正することすら考えない柔道整復師もいると思います。

私が平成19年に会長を拝命して間もなくの頃、関西圏で朝日放送のテレビ番組「ムーブ!」で「接骨院不正問題」をシリーズで放送されたとき、すぐに会員に対し協定及び療養費の支給基準遵守についての文書を送付いたしました。これはほんの一例ですが、公益社団法人の認定が認められたなら京都府内の柔道整復師に対して情報を発信し、様々な問題が取沙汰されないよう努めていく所存であります。

保険者財政の柔道整復師の諸問題に対する影響については、保険料収入が平成15年度からの総報酬制導入により安定していたことと、支出も高齢者医療制度に係る納付金等が存在せず、保険給付費についても保険者の想定範囲内であった時代にくらべて、被保険者および被扶養者の高齢化に伴い今後も保険給付費の逓増傾向が予想される現在、言葉は悪いですが柔道整復師療養費給付の逓減作戦も保険者による財政支出の削減努力だと感じます。それでもちょっとやり過ぎだと思いますが・・・。