柔整ホットニュース

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(社)京都府柔道整復師会・大西会長、「傷病名問題」を語る!

2012/03/01

柔整業界存続の危機が深刻化している昨今、一番の問題は、保険取扱い上の疾患名が骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷等に限られているからだとして、業界の一本化をはかった上で取り組むべき課題に傷病名問題が挙げられた。そこで、柔整ホットニュースでは、業界内でオピニオンリーダーとして活躍されている方々に傷病名問題の本質に迫っていただくことにした。
第3弾は京都府・大西会長に登場していただいた。

(社)京都府柔道整復師会 会長 大西 辰博 氏

―柔整師がおかれている制度が脆弱だといわれておりますが、どのようになると磐石と思われますか?

柔道整復師の療養費は、柔道整復師が患者(被保険者)に代わって保険者に療養費の支給申請を行うことができる「受領委任」という制度により、「医療費」と同様の取扱いが可能となっています。

ただし、この制度が厚生労働省保険局局長通達だけで成り立っており、法制化されずにいるところが脆弱といわれる理由であることを業界関係者であれば誰もが承知しています。

世間ではこの受領委任取扱い制度が柔道整復師の不正問題の根源であるように論じられている訳ですが、国民の迅速かつ適切な受療を可能とすることで患者の保護を図るというこの制度の本質が忘れられているように感じます。柔道整復術は多くの国民に治療技術として歓迎され支援されていますし、受領委任払い制度に関しても国民に浸透している制度だと思いますので、我々柔道整復師として制度の運営を堅持すること、出来ることならば制度を法制化していただくことに併せて、今以上に柔道整復の有用性と存在を強く主張するために、柔道整復師の中から国会議員、特に参議院議員を輩出し国家行政に対しての窓口を一本化することが大切だと私は予てから訴え続けています。

昨今の参議院選挙では各業界団体の推す候補者の落選が多く、当選を勝ち取るのは容易でないことは承知の上での提案ではありますが、この問題を解決するために公益社団法人日本柔道整復師会(以下、日整)顧問議員ならびに各都道府県顧問議員の先生方、そして各柔道整復師団体が推薦される議員の先生方にご指示、ご指導を仰ぎながら、全国1万7千余名の日整会員ならびに各柔道整復師団体会員が団結し、また個人契約や勤務柔道整復師にも協力要請を出すなど業界の力を集結して行うべき事案だと思います。それを実現するために、私は昨年の1月からお互いを制約・拘束しない緩やかな組織とする柔道整復師連絡協議会(仮称)の設置が必要だと訴えております。

現在の日整会員は約1万7千人で、全国の開業柔道整復師の4割に過ぎません。過去数十年の間、日整や全国の社団が柔道整復師の代表として厚生労働省や都道府県、その他の行政機関に交渉団体の代表として扱われ、また代表団体として扱われることが当然と考えてまいりました。しかし、現在はどうでしょうか?柔道整復師全体の半数に満たない組織の意思表示に充分な説得力があると行政機関等が納得してくれるでしょうか?多くの方々が疑問に感じるこのことを解決するためにも、全国に200近くあるといわれる全ての団体が集まることが理想ですが、せめて主要な団体が集まってお互いの情報交換や、行政機関への共同行動、選挙時の共同歩調を得ることが可能となる連絡協議会を結成することが急務だと思います。とりあえず、政治家を出すということで一致団結するということに尽きます。生き残る道は、それしかないと考えます。柔道整復師という資格は残っても世の中から接骨院が助産院と同じような感じで一気に少なくなってしまうのではないかという強い危機感を覚えております。

 

―近年マスコミ等で不正請求等の問題で叩かれておりますが、その要因といいますか、根本的な問題は、何であると思われていますか?

平成24年1月17日開催の集団指導で配布された資料内にある近畿管内での柔道整復師施術管理者の受領委任の取扱い中止等の事例(直近分)を見ますと、不正内容には「架空請求」、「振替請求」、「無資格者施術に係る請求」、「承諾施術所以外での施術に係る請求」、「時間外加算の不正請求」、「鍼灸の施術を柔道整復師の施術として請求」、「その他」があげられています。

すべての不正請求において柔道整復師の質の低下と片付けられるのでしょうが、不正を犯す柔道整復師には何らかの考えがあり不正に及ぶのであって、その柔道整復師の性格や生活環境、不正を行ったときの社会的、経済的状態、そして心理状態について詳細に理解していないので答えにくい問題ではあります。ただ、3月に養成学校を卒業し、4月に開業する柔道整復師も増えている昨今、不正請求の減少を目的にして養成校においても保険取り扱い(受領委任制度)について指導すること、開業するには柔道整復研修試験財団が実施する卒後臨床研修の受講を必須条件とすること等の必要性を訴えたいと思います。

 

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