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(社)茨城県柔道接骨師会・市川会長、「傷病名問題」を語る!

2012/02/01

―今様々な問題が取沙汰されるようになったのは、養成校の乱立や個人請求者が急増があり、一方保険者財政の悪化があるかと思います。市川会長のご見解をお聞かせください。

1998年の福岡での裁判以来、この時点では14校で1050人であったものが、2009年度には、100校で9205名の定員に増えました。1998年以降、まるで雨後の筍のように増え続け異状事態に陥り、それを業界はどうすることも出来ず手を拱いてきてしまった。もう1つは、卒後臨床研修を受けないままに開業したことによって、粗製乱造を招いてしまった。これを解消するには、まず柔整業界の統一を図り、卒後臨床研修制度の徹底、自浄作用の徹底、これを実行させることが必要であります。一方、保険財政の悪化は各メディアが毎日のように報道しているため、皆認識していることです。ただし認識はしているが、それを日常の業務にどう反映するのかが誰も理解できていない。柔整師各々の問題になってくるということは、業界が教育システムをしっかり構築しないと、どうにもならない訳です。薬剤師の人たちも6年制でありますし、柔道整復師も最低でも4年制の大学にしていかざるを得ない。教育の問題は一番大きいと思います。4年制の高等教育をした上で、数年間現場で臨床研修をさせるべきと考えます。患者さんの痛みはペーパーでは分からない。臨床現場に立って初めて患者さんの痛みも分かるようになります。

今は、教育にかけたお金を早く回収しようということで、他の接骨院に行って勉強したって仕方ないだろう、国家資格を取ったんだから早く開業した方が良いだろうとした考えが主流のようです。親が言うのか、自身がその気になるかは分からないが、どっちにしても早く開業しようということです。だから、怪我の扱いが出来ない。怪我人を診なくなるから、柔整師にはあん摩マッサージの患者しか来なくなる。患者ではなく、お客さんになっている。歌を忘れたカナリアではないが、私は包帯を忘れた柔整師の行く末、これを訴えたい。包帯を忘れた柔整師というのは、怪我を扱わない。純綿包帯は失われて今は巻いてもエラスコットという弾力帯です。捻挫でも骨折でも、大事なのは固定ですから、きちんと純綿の包帯で固定しないと治りが悪い。保存療法において外固定が如何に大事かというのは、痛みのある患者さんを扱わないと分からない。ペーパー試験に通って、患者さんの痛みがわからない柔整師が増えすぎました。患者さんが怪我して行っても、整形に行ってくれと回されてしまう。結局1カ月くらい整形外科に行って、安定してきたら接骨院で診てもらうという患者さんが増えており、これでは話が逆です。言いたいことは、痛みのある患者さんを扱っていない柔整師が多いから、患者さんの痛みが分からない柔整師が増えてしまった。それは包帯を忘れた柔整師の行く末です。痛みのある患者さんを扱わないイコール慰安的なマッサージ、だから不正と言われてしまう。

 

―業界の統一を行なえば、何年間研修を積まなければ開業してはいけないということも出来るようになりますね。

それが本来の目的です。また、あくまで慰安的な行為ではなく外傷性のものしか扱わないということ。もし傷病名を増やすとしても、単なる疲れや肩凝りといったものは、扱いません。これを明確にしておかないと境界線がなくなってしまいます。我々はあくまで外傷性のものを扱うために卒後臨床研修を実施することが必要であるし、傷病名も外傷性のものであることが大事です。ルールを守れない人間にはペナルティをきちんと科すことです。最早、この業界は性善説は通用しない、〝人間は生まれながらにして悪であり、欲がある〟という荀子の性悪説で行くしかない、法律で縛る以外にないということです。本来は我々術者と患者は信頼の上で成り立っている。しかし、患者の信頼を裏切っている。信頼関係の中で我々に与えられたもの、これを悪用する人間がいるので、警察官が、〝人を見たら泥棒と思え〟と言うのと同じで、保険者は〝柔整の請求は皆インチキである、だから細かく書かなければダメ〟という傾向になってきており、これは絶対に良い事ではない。

 

―患者照会など二次審査を外部委託する保険者が急増しています。どのような対策をされていますか。

まず始めに、平成21年度の医療費は36兆67億円、療養費は4100億です。それで療養費が医療費に比べて上がったとされているが、柔整は3.2%しか上がっていません。鍼灸は8.7%、あん摩マッサージは9.9%であるということを理解していただきたい。

今は国保連合会でも二次審査を行っているところがあります。民間委託は一番G社が多い。所謂網かけという方法で、全部の患者照会を行って、中でも酷い話は〝患者さんと食い違ってますよ〟という返戻を出す。そうすることで、実際はただのマッサージで怪我ではなかったという人は請求を引っ込めてしまうので、そういう人が多いとして、これだけ不支給で医療費が減少したと保険者に報告を行う。しかし、各県社団は少なくともそうではない。それに対して反論書を出します。個人の団体、或いはそういう指導を受けていないところは再請求を行わない。当会は今のところ、影響はといえば事務の手間が増えたことです。後は風評による被害です。何で接骨院に行くと毎月毎月言われるんだと患者さんは嫌がります。