柔整ホットニュース

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(社)茨城県柔道接骨師会・市川会長、「傷病名問題」を語る!

2012/02/01

柔整業界存続の危機が深刻化している昨今、一番の問題は、保険取扱い上の疾患名が骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷等に限られているからだとして、業界の一本化をはかった上で取り組むべき課題に傷病名問題が挙げられた。
そこで、柔整ホットニュースでは、業界内でオピニオンリーダーとして活躍されている方々に傷病名問題の本質に迫っていただくことにした。
トップバッターは茨城県・市川会長に登場していただいた。

 (社)茨城県柔道接骨師会 会長 市川 善章 氏

―柔整師がおかれている制度が脆弱だといわれておりますが、どのようになると磐石と思われますか?

つまり、受領委任払い制度というのは、厚生労働省保険局・局長通達で成り立っている制度であるということは誰もが認識しているものです。法律ではない、法制化されていないところが、最もこの制度の不安定で脆弱なところであります。この受領委任払い制度をしっかりとした法律にしていただくための努力は、これまでも数々取り組んで来た訳ですが、相当困難だったようです。しかし、今ここでそのための努力をしていかなければ、業界はこれまで以上に危機に瀕しています。我々柔整師を国民の皆さんにもっともっと理解していただき、柔整という日本古来の国民医療であり、伝統的な医療が果たしてきた役割及び実績を正しく評価して頂くための努力が重要です。それと同時に業界の自浄作用にも厳しく取り組んでいくことを、国に理解していただいた上で、法制化に持っていきたいという所存であります。

今の柔整業界のキーワードは「業界の統一」という一本化であり、この一言に尽きるのではないかと思います。結局、これをキーワードにしない限り、何もできません。政治家に頼むにしても、何を目的に、どういうことをやりたいのか。我々はこういうことをしますから、国ではこういうふうにして下さいとお願いするには、平たく言えば〝ギブアンドテイク〟です。つまり要望ばっかり言っていたのでは、聞いていただけない。要望をしっかり受け留めていただけないのです。私たちもこういうふうにしますからと、〝業界は不正問題とか様々な問題に対し自浄作用を働かせます〟ということも含めて提示していく必要があるということです。医師のインターン制度は一旦解消されて、再び研修制度が義務化されましたが、我々柔整師においては、法制化されていないことから予算がつかないため、何も行われてこなかった。しかし、それではいけないとして、東京都の山口前会長が中心となって現在の研修試験財団が実施する卒後臨床研修を業界自らが立ち上げた。しかし、これについては、今の国家試験を通った若い人達は、受講することなく開業してしまう訳です。

全ては「業界統一」からです。150も200も団体があるため、厚労省にしても何処と話をすればいいの?ということになってしまう。現在は日整が厚労省との話し合いの窓口になっているけれども、日整の全会員数は17,000人位で約40%くらいですから「他はどう考えているのか?」という話になってしまうんです。

 

―近年マスコミ等に不正請求問題で叩かれておりますが、その要因といいますか、根本的な問題は、何であると思われていますか?

柔道整復師の傷病名は、保険請求上は骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷の5つとなっています。しかし、実際には地方の患者さんであれば、毎日草刈りをやっていれば転ばなくても肘が痛い。「急性」と「亜急性」という用語がありますが、「急性」というのは瞬時に痛みが出る病態であり、「亜急性」というのは同じ動作を繰り返し数週間から数か月後経過してから痛みが出る病態を指しています。「急性」と「亜急性」を含めて外傷です。従って、例えば、手首の使い過ぎは、医学的な病名では腱鞘炎という名称が付いています。繰り返し使う動作により、腱が鞘の中を行ったり来たりすることによって腱が摩擦されて腫れてしまうので腱鞘炎になる。同じ動作を繰り返したことで発症した亜急性的な痛みも外傷であることを学問的にしっかり説明し、また柔整師の施術の有効性を証明することで「腱鞘炎」という傷病名を使っても良いとなれば、マスコミや保険者さんが言うところの不正はなくなります。また、近年の医療財政の悪化を考慮しても、患者さんは安価な料金で助かり、喜んでくれています。理解してくれている保険者さんも多いが、これらのことに無理解な保険者さんも居ますので、両者の話し合いが必要だと考えています。

 

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