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アジア統合医療会議開催される

2010/05/01

spcile8-12010年3月27日・28日(日)、東京大学本郷キャンパス小柴記念ホールにおいて「アジア統合医療会議-アジアにおける統合医療モデルと科学的解明-」が開催された。

28日のプログラムは、①ゲストスピーカー各国の統合医療の現状について②未来志向のディスカッション・推進について③今後アジアで統合医療をどういう形で展開・推進するべきかのシンポジウム等3つのセッションが開かれ、9ヶ国から14名の代表者が来日した。

近年、「統合医療」(Integrative Medicine)の分野は急速な進展を遂げている。統合医療は近代西洋医学と伝統医学が融合した新しい医療体系である。前者は科学に基盤をおくものであるが、伝統医学は、5,000年の経験に基くものであり、中医学(中国)、アーユルヴェーダ(インド)およびユナニ(アラブ諸国)、さらには日本の漢方および韓国の韓医学などがあり、アジア諸国共通の伝統的医療資源である。今回の国際会議は、アジアにおける統合医療の科学的解明に焦点をあて、「アジア発の統合医療モデル」のコンセンサスと構築及び科学的根拠に関する専門家の意見交換と研究者コミュニティの形成を目指した将来展望を検討し、21世紀における世界の新しい医療への橋渡し的役割を果たすことが目的であり、日本とアジア諸国の先端医学及び医療研究者・医療行政担当者が一堂に会することにより、各国からの参加者による統合医療の現状報告及び、各国での問題点、今後の展望について実質的な討論を行った。

午前9時から開かれた国際会議は、日本統合医療学会理事長・渥美和彦氏の開会挨拶に始まり、整形外科医で参議院議員の土田博和氏が〝20年前から中国と交流をもち、病院の中で鍼灸師マッサージ、アーユルベーダも取り入れている。今、日本も医療費が大きな問題になっており、そういった観点から西洋医学と伝統医療との統合が求められている時代だと思われます。鳩山政権で推進する統合医療を政治家としても医師としても大きなテーマとして取り組んでいきたい〟と来賓挨拶。

第一セッションは、東北大学名誉教授・仁田新一議長、東京女子医科大学准教授・川嶋朗副議長のもと、「アジア諸国における統合医療の現状-教育、研究、政策(1)」が行われた。

トップバッターは日本代表で日本統合医療学会理事長・渥美和彦氏が〝今から約5000年前、インド、中国およびイスラム・アラブの地域において、アーユルヴェ-ダ、中国医学およびユナニの医学が始められた。これらは、世界における三大伝統医学といわれており、これらがすべて、アジアにおいて始められたことで、われわれアジア人は大きな誇りを持っている。これらの三大伝統医学は、相互に交流し、融合し、ギリシャ、ローマを通ってヨーロッパに伝来し近代の西洋医学へと発展した。この近代西洋医学と所謂経験に基づいた伝統医学および相補・代替伝統医療が統合されて統合医療がつくられたのである。この要素である相補・代替医療の研究は、米国のNIHにおいて始められたが、統合医療とは、患者中心の医療であり、全人的医療であり、治療のみならず、予防医学および健康増進なども包含されている。相補代替医療は、現代の科学では必ずしも解明されないものが多くあり、近代西洋医学との間に科学的橋渡しが必要とされている。さらに心身の相互関連や、医学と宗教の関連も、今後研究される必要がある。統合医療には、科学的エビデンスの他に、教育、社会、法律問題、モデルの作成など、多くの解決すべき問題が残されている。インテグレーションというのは、人間社会の本質であり、例えばマクロとミクロをインテグレートするや、オリエンタルとウエスタンをインテグレートするなど、いろいろなところで使われている。イリュジョン・細分化とインテグレートを繰り返してきた。西洋医学ではまだ理解されていないことが沢山あるわけですが、それらに対してモダンサイエンステクノロジーがどのように関係するのか。実はこのモダンサイエンステクノロジーは西洋思想、つまり要素還元主義であったためにあまりにも進化しすぎ細分化しすぎてインテグレートの道を失ったのではないか。(中略)

近年、医学の分野において、ゲノム(遺伝子)医学と再生医学という二つの革命的な新しい領域が開発されたが、これらの展開は、医学を大きく変えつつある。それは治療の時代の終りを告げるものであり、予防あるいは健康の分野への変換を余儀なくさせるものである。これからはプレメンタルメディスンの時代に入る。1992年、ハンチントン氏は、〝文明の崩壊と新しい世界秩序の夜明け〟の本を発刊しているが、これこそ統合医療の歴史的背景と考えられる。この書の意味するものは、東西文明の融合であり、統合医療は東西医学の融合であり、医療における革命である。統合医療の実現とは、人類が経験した三大革命を同時に進行させるものである。最後に、鳩山総理が東アジア共同体というプロジェクトを提案しているが、私は具体的提案をしたい。それは、▽別府市における国立統合医療センター、▽アジアシュミレーションモデル研究所の設立、▽アジア災害救急ポートの製作、の3つである。これを東アジアの共同体でやっていこうということで、アジアの平和・健康に貢献したい〟等、講演した。

この後、韓国代表者2名Dr.Choi Seung-hoon,Dean/Professor(学部長、東洋医学部、慶煕大学、ソウル、韓国)・Dr.Cho Ki-Ho,Professor (所長、東西医学研究所、慶煕大学)、ヴェトナム代表はDr.Duong Trong Nghia(国立伝統医療病院)、タイ代表はDr.Narong Nimsakul,Professor(現代医学研究所 バンコック、タイ)、中国代表者2名Dr.Jianping Liu EBCM(Evidenc-Based Chinese Medicine )センター、北京中医薬大学、北京、中国)・Dr.Leung Ping-chung(所長、中国医学研究所、香港中文大学)、台湾代表はDr.I-Hsin Lin,Professor(台中病院顧問医師、衛生署、中国医薬大学非常勤教授)ら7名のスピーカーたちによる各国の統合医療への取り組みと政策など現状報告、並びに今後の展開について講演が行われた。(各抄録について別途掲載)

 

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