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特集

アジア統合医療会議開催される

2010/05/01
抄録

○韓国代表『韓国の統合医療への序論「新しい医学のための慶煕研究所」の提案』

Dr.Choi Seung-hoon,Dean/Professor
(学部長、東洋医学部、慶煕大学、ソウル、韓国)

近年、東洋医学が西洋諸国に広まっている。それは西洋医学の補完から代替医療(CAM)にまで及んでおり、現在、2つを統合するための努力がなされている。2009年1月8日の韓国の医事法改正は、地域的に2010年1月31日付けで地方の医療機関が病院のレベルを超えて東洋と西洋の医療サービスを統合した協力的な臨床実践を始めることを可能にした。これら地域と海外の発展が目覚しい中、多くの韓国の東洋医学の大学系列の病院が、東西の臨床サービスを統合するために熱心な努力を始めている。慶煕大学は、東西医学の協同作業に不可欠な調和に沿って、医学の新しいモデルを導入する先駆的役割を演じている。我々の方針では、生活の質を向上させる事が我々の任務であり、新たな健康概念の再確立を強調すると共に、我々は人間指向の医療文化を創出する事が必要である。最終的に、我々は東洋医学の全体的な見方と生命と医学に対する西洋医学の分析的で還元的な手法を調和させることにより、一致協力して新しい医療モデルを創造する必要がある。我々のビジョンを実現する実践的方法としては、理想的な東西協同臨床(EWCC)モデルが、患者の満足に対し高品質な医療サービスを提供するために開発される事である。過程において、研究との協調努力は、東洋医学や西洋医学、自然科学、人間性を含む多岐に渡る分野に求められるだろう。同時に関連の基礎研究は、より卓越し、より効果的な統合のための方法を見つけるために行われるであろう。東西協同臨床モデル開発の際、東西協同臨床モデルの実施の成功を促進するための通信ネットワークやシステムの改良、運営戦略図の作成、草薬の相互作用に関する研究、東洋医学理論の現代的解釈、関連データベースの構築など、一連の継続活動は、研究基盤の土台に必要である。最も上手く行っている事業と同様に、よく考え抜かれた、堅固な基盤が必須である。新しい医学のための慶煕研究所の提案は、西洋と東洋の両医学の調和的共生のための基盤の創出に用いられ、統合医療の目的は、全ての人々の利益のために達成されるべき事である。

 

○韓国代表『韓国の統合医療の現状』

Dr.Cho Ki-Ho,Professor (所長、東西医学研究所、慶煕大学)

現状:1953年、韓国の保健システムに国民健康保険を導入する際、西洋医学から西洋医学の医師、東洋医学から東洋医学の医師の2つのアプローチが考えられていた。それぞれの医学放棄には、それら自身の排他的な医学の実践の主権的権利が与えられた。1962年、東洋医学の医師に鍼治療の針と灸を使用する臨床の独占権が与えられ、鍼灸師のシステムは廃止された。慶煕大学東洋医学部の成長は、伝統医学の発展を反映している。1971年10月、慶煕大学の創設者は、西洋医学の病院と東洋医学の病院、歯科医学の病院を含めた医療センター(www.khme.or.kr)を開設した。しかし、同年4月、慶煕大学の創設者は、「第三の医学」を創出する希望の下、東西医学研究所を設立した。1999年、東西医学センター(www.ewcenter.co.kr)が設立され、医療サービスの提供を始めた。2006年、慶煕大学の創設者は、697病床の新たな医療センターを設立し、それを東西新医学センター(www.khnme.or.kr)と命名し、法律で認められている治療を提供することの妥当性を可能にしている。韓国では統合された治療は「組み合わせの医療」である。2009年、慶煕東洋医学病院は、灸や気功、腸洗浄、燻蒸療法、経絡マッサージを用いた自然療法センターを開設した。教育:西洋医学と同様、東洋医学の大学は、2年間の医学部予科と4年間の医学部による6年間の課程である。卒業後は、1年間の就業体験(インターンシップ)と3年間の研修期間(レジデンシー)がある。東洋医学部の教育目標は、統合された手法を理解するために、西洋医学にしっかり根ざした東西医学の統合である。西洋医学の大学の統合医療の教育は、2005年に始まり、6年間存続しており、16時間のコースワークと1週間の臨床実習で修了する。しかし、棚上げにされている法律の問題と統合医療が国家試験の要件に含まれていない状態があり、統合医療の広がりにはやや欠ける。研究:多くの伝統的様式の医学に関する刊行物がある。単にRCT(ランダム化比較試験)を見ても、約44の鍼治療の参考文献と22の生薬に関する刊行物がある。国立研究機関:1997年に設立された東洋医学政策を扱う部門(www.mw.go.kr)は、最高機関とされている。1994年、韓国東洋医学研究所は、全国の東洋医学を促進するために設立された。

 

○ヴェトナム代表『ヴェトナムにおける統合医療』

Dr.Duong Trong Nghia MD Dr.Tran Quoc Binh,Ph.D.,MD (国立伝統医療病院)

ヴェトナムは伝統医療の長い歴史をもっている。政府は、伝統医療(TRM)は、保存・継承すべき国家的文化資産の一つと捉えている。関連する医療機関として、中央レベルでは国立伝統医療病院(NHTM)、国立はり病院、軍伝統医療研究所、厚生省管轄の伝統医療病院がある。地方レベルでは、64の内51が伝統医療病院である。県レベルの一般病院のうち8割が伝統医療科を開設している。地域レベルの診療所や開業医などにおいても伝統医療はよく用いられている。国立伝統医療病院は、全国の伝統医療において指導的役割を果たしてきたが、近年は伝統医療と近代医療の統合に注力している。国家医師試験においては、伝統医療も対象となっている。教育システムとして、国立薬科大学には、伝統医療の2つの学部と9つの科がある。国立伝統医療病院では、伝統医療のドクターは、近代医療の基礎と応用を教育されると同時に、近代医療の医師は、伝統医療の基礎的知識を身につけなければいけない。これまで、ヴェトナムの伝統医療の病院は、伝統医療と近代医療を統合することに多大の努力をしてきた。統合医療は、増大するヘルスケアサービスの需要を満たすことをめざしており、科学的なトレンドとなっている。

 

○タイ代表『タイにおける統合医療の現状』

Dr.Narong Nimsakul,Professor(現代医学研究所 バンコック、タイ)

タイの伝統医療は1000年滋養昔にさかのぼることができ、その多くは、仏教の記録に見ることができる。ブッダの時代、ある種の病気の治療薬として、ブッダが僧侶たちに、薬草の使用許可を与えたと記録されている。医学的知識、教え、治療の記録の多くは、仏教寺院内に記録として保管されてきた。僧侶たちはそれらの知識を長年にわたって継承してきた。近代医学は西洋諸国から学んだタイの医師たちによって発展してきた。タイのホスピタリティの精神とあいまって、タイ政府は、タイを「アジアの医療ハブ」として位置ずけ、メディカル・ツーリズムが強力に推進されている。1977年、ロシアでWHO国際会議が開催された年に、タイ政府は「2000年までにすべての国民に健康を」という政策にタイの伝統医療が合致するように再編成、再構成することに着手した。タイ伝統医学研究所は1993年に、保健省の公的機関のひとつとして設立されたが、2002年に「タイ伝統・代替医療開発部」として改組された。現在では、6つの大学がタイ伝統・代替医療の学部をもっており、近代医学と伝統医療の両方に通じた人材を育成することが国策となっている。今回は、統合医療的手法を使ってリンパ浮腫の治療に成功した事例を紹介する。

 

○中国代表『中国の統合医療の現状』

Dr.Jianping Liu(EBCMセンター、北京中医薬大学、北京、中国)

中国の統合医療は、中国伝統医学(TCM)と西洋医学を統合した医療と言及され、診断レベルや治療レベルにおける統合を行うことができる。中国伝統医学は中国の西洋医学の保健システムと並立しているが、政府は中国伝統医学と西洋医学の統合を奨励している。現在時点では、統合医療は、対症療法の主流である西洋医学に中国伝統医学の治療を統合する事といえる。中国では統合医療の教育のために、統合医療の専攻は、西洋医学の大学と中国伝統医学の大学の両方に開設され、学士、修士、博士号レベルまで完備した学位が授与される。統合医療の博士は、権威を持って認可され、彼らは西洋医学と中国伝統医学の薬の両方を処方できる。中国医学と西洋医学を統合した中国の学会は1981年に設立されて、1990年に中国統合医療学会と改名された。研究に関しては、科学的方法論が中国伝統医学分野に広く受け入れられている。例えば、臨床疫学や科学的根拠に基づく医療、優良臨床試験基準は、現在、統合医療の研究に組み込まれている。基金資源には、全国及び地方レベルに於いても、国家自然科学基金(NSF)や科学技術庁、保健省、中国伝統医学省管理局、教育省が含まれている。国内には、数ヶ所の国家の主要な研究機関が設立されている。しかし、幾つかの挑戦的な統合医療の研究には、統合に関するモデルや高度に個別化した戦略としての中国伝統医学の療法の複雑さをも含んでいる。そのため、これらの戦略や統合医療モデルの総合的な有効性の臨床結果を測定するための新しい有効な手段を開発する必要がある。統合的な保健の実践には4つの主要なコンポーネント、哲学・価値、構造、過程、及び結果を含んでいる。統合医療モデルの考えは、患者中心の治療を提供し、質と量を結合した混合法による統合的手法で複数の複雑さを記述し、(生物学的、心理的、社会的、精神的次元)に於いて全ての人々のウエルネスと治癒を推進するであろう。

 

○中国代表『中国医学の研究に関する統合的研究方法と現在進行中の幾つかの事例』

Dr.Leung Ping-chung(所長、中国医学研究所、香港中文大学)

序論:中国医学の研究には様々な種類がある。しかし、研究の方法論は、さほど堅固と言う訳ではない。臨床分野では、文献調査(レビュー)に信頼性が無い。つまり、症例報告は真実を反映しない可能性が在り、コホート研究は偏っている可能性が在り、臨床経験は、しばしば、科学的根拠に基づく医療に沿って設計されていると言う訳ではない。薬草の質に関する並行研究を用い、実験室での機械的効果についての調査を行う事が理想的ではあるが、残念ながら、高い費用と複数の規律が要求されるため、行なわれない事も珍しくは無い。中国医学の研究と研究上の問題:中国医学の研究でいくつかの良い例は引用されるであろう。その1つは、糖尿病性下肢潰瘍に於ける黄耆と生地黄のある調合が評価されたものである。他に、丹参と葛のある調合を含んだ循環器系の強壮剤に関する試験。小児のアトピー性皮膚炎の治療に関する他の1例について議論する。問題はこれらの研究期間中に遭遇した。先ず、一般的な技術的困難があった。不確かな薬草の毒性の問題は、厳しい品質管理を通して記述できた。プラセボ効果は、避ける事が難しいのだが、多重ターゲットパラメタを通して回避できた。例えば、糖尿病性下肢の研究では、パラメタは患肢温存に設定するだけではなく、創傷治癒率、表面温度、生活の質等にも設定した。最終的な治療効果期間はどの位かと言った問題があった。例えば、循環器系の保護に関する研究では、緩和の兆候は治療群とプラセボ群の両方で見られた。しかし、治療後の観測をしばらく続けていた時、治療群に更なる改善があり、プラセボ群には無かった。次に、いくつかの根強い問題があった。生薬の用語の差異には混乱させられた。GAPやGMPの規格化の未熟さや、未知の化学的活性成分に研究者はしばしば遭遇した。これらの困難のいくつかを記述するために、適切に多岐に渡る目標を選択する事もあった。例えば、癌治療で免疫の変調を試験するために、直接の治癒効果を除いた、創傷治癒に於ける炎症のコントロールが研究された。生物学的な活性画分が薬草から特定された後、創薬に向った過程に起こる再定式化に於いて、薬草の数は複雑な処方により減少する事もあった。結論:西洋医学に於ける創薬では、医薬品のための治験プロトコルに於いて、4つの厳格な位相へと続く。最新の創薬を参考に、我々は中国伝統医学の発展を考えるべき時期にきている。米国の国立衛生研究所(NIH)の植物学研究センターでは、関連の品質管理や作用機序研究、そして、臨床試験の指示に従って調査研究を行っている。人体のダイナミックな生理的均衡の維持のための中国伝統医学の介入が、システム生物学領域の将来の研究にとって素晴らしい可能性を運んでくる事は明らかである。研究開発の際に追求する最新の科学的方法論を用いて、伝統的な薬草を追及している統合的研究方法は、最も有益であろう。

 

○台湾代表『台湾における中国医学と薬学の開発戦略(2000-2009)』

Professor I-Hsin Lin,M.D.,PHD.
(台中病院顧問医師、衛生署、中国医薬大学非常勤教授)

台湾では政府による幾つかの戦略が行われており、伝統医学の目覚しい進歩を得ている。例えば、1995年以来、伝統(中国)医学は国民健康保険に組み込まれており、中国医学のための臨床試験センターが設立されている。中国医学教育や免許、臨床前研修、認定は、完全に標準化され規制されており、中国医学に於けるGMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準)の全般的な履行は、2005年9月に遡る。(2009年)12月末現在、台湾には113のGMP製薬会社がある。臨床実験を行うために設立された13の中国医学の臨床実験センターがあり、臨床実験の応用により、研究開発のために認可された14の薬から23の新薬が創られている。更に、中国医学の「統一処方箋」が発表されて実施されている。2009年12月末現在、台湾には5200名以上の中国医学の医師と3200ヶ所以上の中国医学の病院・診療所がある。58の正規の西洋医学の教育病院では、中国医学科(部門)を併設している。台湾政府で行われている戦略には、(1)伝統医学、代替医療の適切な利用と促進(2)中国医学の人材に対する総合的な臨床教育の環境を確立するための中国医学の臨床試験センターの設立(3) 中国医学のサービスの質の向上を図るための中国医学の病院と系列の病院における中国医学部に対する査定の実施(4)国民健康保険による中国医学の費用の償還(5)安全や有効性、質的・量的標準化の研究の促進(6) 中国医学の研究開発のための環境整備や臨床実験の奨励、中国医学の臨床実験環境の確立、が含まれている。

 

○サウジアラビア代表『サウジアラビアにおける統合医療』

Dr.Mansour S.Al-Said教授<生薬学>

(王立キングサウド大学薬学部付属 薬用・芳香・有毒植物研究センター所長、前・大学副学長)

サウジアラビアの国民は、イスラム医療、アラブ医療、ユナニ(Tibb-Al-Unani)、グレコ・アラブ医療と呼ばれる統合医療を利用している。それらは、一般的に、様々の肉体的・精神的疾病の診断と治療、健康の予防と維持のための地域固有(indigenous)の知識、理論、そして実践に根ざしたものである。相補代替医療(CAM)の多くは、近代型のあるいは従来型のヘルスケアシステムとは異なった膨大なヘルスケアの実践に根ざしたものである。WHOは、世界各国の健康システム・ランキングにおいて、サウジアラビア王国を26番目に位置づけている。しかし、サウジアラビアは、国民及び外国人居住者に対して、初期段階から重篤段階のヘルスケアにおいて、最先端かつ洗練された医療施設を提供している。同時に、自国民であれ外国人労働者であれ、多くの患者が、吸玉瀉血療法(Hijama)、ユナニ、鍼治療、マッサージ、ホメオパシー、聖なるコーラン暗唱などを含めた統合医療の様々な方式を利用している。これらを考慮し、サウジアラビア政府は、20年ほど前から「サウジアラビア王国における民族医療のメリットとデメリット」という国家プロジェクトを展開している。同時に「サウジアラビアの植物の生物学的・化学的特性」プロジェクトにも助成している。これらは、サウジアラビア王国における民間的医療等の普及と利用に関する知識を数多く提供してきた。サウジアラビア王国における薬草医療や多様な統合医療の実践と利用を継承・発展させるという観点から、つい最近、サウジアラビア王Abdullah Abdulaziz により王位法制が発布され、閣議で国立CAMセンターの設立が認可された。これは、CAMの実践活動のすべての局面において国が関与することを目指すものである。

 

○サウジアラビア代表『「預言者の医療」とその適用』

Dr.Khaled Saheed Aseri,MD(地域医療・統合医療コンサルタント、医師)

「預言者の医療」は、イスラムの聖典において言及された医学的助言であり、これはイスラム圏では周知の事実である。それは、予防薬、治療医学、精神衛生、スピリチュアルな癒し、内科的・外科的療法などをカバーしている。それは、心と身体、物質と精神とを統合するものである。予防分野の応用例としては、感染症の伝染隔離、栄養学的助言、母乳育児、環境衛生、個人の衛生法、性感染症などがある。治療分野の例としては、吸玉瀉血療法、クロタネソウ(Nigella Sativa)、ラクダの乳と尿、蜂蜜、灸、薬用植物がある。預言者の医術によって、言語や宗教の違いを越えてどこでも健康を増進することが出来る。預言者の医術のひとつとして、クロタネソウによるマラリア治療の臨床例を紹介する。治験フェーズⅡで、クロタネソウとクロロキンの有効性を比較検証した結果、マラリア治療においては、クロタネソウのほうがクロロキンよりも効果的であることが判明した(有意差あり)。しかしこの結果は、治療フェーズにおいて、すべての地域に適用できるというわけではない。代替医療を現代医療と統合し、統合医療の利点が科学的に検証できれば、人々の福祉に希望をもたらすことになるであろう。

 

○マレーシア代表『マレーシアにおける統合医療』

Dr.Syed Mohammed Naveed Ul Huda(サイバージャヤ医科大学)

マレーシアは、健康な個人、家族、コミュニティから構成されるべき国であり、ヘルスケア・システムは、公正で、誰でも利用可能、効率的、適正な技術を利用、環境と調和的、消費者に優しい、といったことが求められている。マレーシアでは、15世紀以来、伝統的・相補代替医療(TCAM)が実践されてきている。現代でも、7割の国民がTCAMを利用している。高等教育省(MOHE)は、従来型の医科大学や医療専門学校において、伝統的・相補代替医療(TCAM)を教えることを許可している。サイバージャヤ医科大学は、近代医学課程においてTCAMとの統合をめざした好例である。マレーシア・バイテク振興公社では、統合医療の研究開発に多大な貢献をしている。政府が公認している統合医療の実践病院は、2007年は1機関であったが、2010年には5機関に増える予定である。今後、国立がん研究所およびリハビリテーション病院においても予定している。ヒル療法(リーチ・セラピー)は、統合医療の好例である。同療法は2500年前にさかのぼる古代の治療法であるが、現在では多くの開発途上国で受け入れられており、2つの医療を統合することによる有効性と信頼性を証明している。TAO(閉塞性血栓性血管炎)の治療や縫合手術においても、統合医療が重要な役割を果たしている。

 

○マレーシア代表『WWWを浸かった統合ヘルスケア・ウエルネス教育プログラム』

Dr.Saravanan S.R.Sundaramurthy
(マレーシア保健省伝統・補完医療局、副局長 マレーシア科学的鍼研究協会会長)
共同研究者:Noor Aineezan Md Saimi

はじめに:インターネットを駆使して知識を迅速に獲得するための開発が世界を席巻している。このような中で、我々の自主的研究グループは、インターネットを使って統合ヘルスケア・ウェルネスプログラムに関する知識を広げるためのプラットフォームの有効性に関する研究を始めた。ディスカッション:インターネットユーザは、日に日に増加している。今日では、世界人口の25%が、情報を得るためにブラウズしている。アジアでは、人口38億人のうちわずか19.4%しかインターネットを利用していない。一般的に、アジアにおいてはインターネット・アクセスに対する抵抗感があるため、オンライン教育の効果はあがっていない。韓国、日本、シンガポールではインターネット利用者の割合は高い。中国のインターネット利用人口は最も多い。2年前に始めたアジア諸国の8356名のユーザに対する調査では、普及が遅れている最大の要因は言語の壁である。サマリー:アジアにおけるオンラインによる統合ヘルスケア・ウェルネスはあまり成功しているとはいえない。その原因は、言語の壁であり、伝統的な授業でのやり方を採用しがちである。

 

○インド代表 『アーユルヴェーダと統合医療:インドに於ける統合医療の状況』

Dr.G.Geetha Krishnan. MD
(上席顧問医師、統合医療・アーユルヴェーダ Medanta グルガオン、インド)

統合医療はインドで発展している科学である。最近の統合医療への関心には、既存の保健モデルが社会の需要や、更には公的需要の増加に答えるには不十分であるかもしれないという認識があるのかもしれない。政府や管轄機関は、保健において、安全で有効でなければならないという断りと共に多元的なアプローチの必要性を受け入れた。医学の多元論の到来は、政府に支援された相補・代替医療のための国立研究機関の創設と多くの国に於ける幾つかの医科大学での統合医療に関するモジュールの導入に反映されている。統合医療のモデルの相違は、特定の社会の文化的かつ知的な根源と保健の現代史によって影響を受けており、特定の社会に於いて統合医療は模索され、発生しているからである。政策立案者は、異なる統合医療モデルに対し、それら自らが発展し、確立することが可能となる様、法的条項(横断的医療実践のための合理的範囲)の用語や(統合医療の教育と研究のため)資金援助、保健による補償に於いて、場所と平等な競争条件を創り出す必要がある。アーユルヴェーダとアロパシー医学(逆症療法医学)は、インドで展開できる統合医療の2つの異なるアプローチであり、要である。アーユルヴェーダと西洋の生物医学は、同様の直向な探究心を共有してはいるが、それらの自然に対する見方は異なっている。だが、それに価値を認める事が重要である。それらの哲学や論理、医学理論は極めて多様である。この時点に於いて、統合医療の考えは、発生期の、発展している概念であると認めなければならない。それは、閉鎖性を含意する統合された医療の概念とは全く異なっている。アーユルヴェーダと生物医科学の共同作業は、非常に実り多い場合がある。そこには、科学では賄えない、全体の理解を豊かにする事が出来る部分の、確かに信じられない程の詳細さがあり、同様に、新しい知覚(基本的に部分的視野を変えることが出来る全体論的視野に於いて明らかにされる洞察)がある。ここに於いて命名されるインドの統合医療の研究機関は殆ど無い。アーユルヴェーダは、天然産物による創薬に於いて多くのリード化合物を供給する事により医科学への重要な貢献を行って来た。今日見られる真実は、統合医療を採用するか否かを決めるための多くの選択が、全く無いという事である。本当の成功とは、結果を認識し、尊重し、そして、独自性や哲学、基礎理論、方法論、精神力を完全に維持する能力の中に留まるのであろう。

 

○オーストラリア代表『オーストラリアにおける統合医療』

Dr.Felix Wu Shun Wong(ニュー・サウス・ウェールズ大学)

オーストラリアは、ヨーロッパが起源の西欧国家だが、アジアの国家でもある。幸いにも、多くのアジア系移民が移民として定着し劇的に変化した。それにもかかわらず、医療の主流は、伝統的な西洋医療であり、それらは研究室での研究、画像診断、病変部位の除去や治療といった外科的療法などに依拠している。西洋医療のコストが増大し、治療行為が拡大するにつれ、多くの国民が世界各地やオーストラリア由来のCAMを利用するようになった。オーストラリアにおいてCAMが増加傾向にあることは論文にも引用されている。(CAMに関する)教育と研究は、オーストラリア政府と大学の研究機関において積極的に支持されている。とはいえ、これらの活動は、限られた数のオーストラリアの大学研究室でしか行われていない。CAMと中国医療のコースは、クイーンズランド大学、ウエスタン・シドニー大学、シドニー工科大学、王立メルボルン工科大学にある。2006年、国立相補医療研究所(NICAM)が、400万豪州ドルの基金でシドニーに開設された。この研究所の目的は、CAMの研究の方向性に戦略的指針を与えリーダーシップを発揮することである。その結果、CAMにおける教育・研究活動は、将来にむけて大きく開花しつつある。さらに、2010年には、ノートルダム大学において統合医療センターが開設され、統合医療の推進と大学院コースが設置される予定であった。しかし2008年の世界経済危機は、CAMの教育・研究において重大な影響をもたらした。2010年までに、NICAMは資金が枯渇する可能性があった。統合医療センターは凍結されている。(CAM関連の)研究基金は、西洋医学の研究に打ち勝たなければならない。中国医療(中医)やCAMへの政府の規制は強化されつつある(中国医療に関する法律は2012年に制定される予定)。オーストラリアにおける統合医療は、今後厳しい局面を迎えることが予想される。CAM従事者と研究者のための国際的な協力と支援を切望する次第である。