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国保中央会 適正な請求支払いへ 5項目の提言
柔道整復療養費は、実質的に現物給付化がなされているが全国決済制度が導入されていないため、施術所では他県の被保険者を施術した際にはその都度、当該他県の国保連合会へ請求している。
また国保連合会からみれば、県外分の多くは提出時期や様式がまちまちで、受付事務が煩雑になっていることや、県外の施術者への支払先口座の管理・確認等の事務に相当の時問を費やしており、療養の給付にくらべて手間がかかるといった問題を抱えている。
そこで前述した施術所からの請求方法の統一化など全国決済制度を導入し易い環境を整備するとともに、全てを国保連合会で統一して支払業務まで受託し、更に柔道整復審査会が設置された場合には、国保連合会の事務処理の統一だけでなく、公費負担医療に係る公費負担相当額についても国保連合会での支払が可能となり、受領する被保険者や柔道整復師、保険者、審査支払機関にとってメリットがある。
報告書は、以上の理由から全国決済制度の導入と、「①全国決済制度の導入に向けた事務処理体制の整備」「②保険者から国保連合会への審査・支払業務の委託範囲の統一」を提言している。
4)疑義請求対策について
疑義請求対策における問題点として、柔道整復療養費の支給対象となる傷病は、急性又は亜急性の外傷性の「骨折」「脱臼」「打撲」「捻挫」「挫傷」及び「肉離れ」と規定され、療養の給付に比べ、それほど細分化されていないため必然的に施術期間や施術部位、施術頻度が審査の焦点となる場合が多く、被保険者への調査を実施した上で支給の適否を判断すべきとした疑義請求については、柔道整復審査会が、保険者へ情報提供し聞き取り調査等の勧奨等をしている国保連合会が多い。
しかし保険者は、疑義請求に対応可能な職員不足あるいは専門的知識をもった人材不足を背景に、国保連合会に対する期待が大きいが、国保連合会の現在の法的位置付けでは審査支払機関として十分な機能が発揮できないといった問題点がある。
疑義請求対策の現状は、疑義請求に対し「請求額を査定」あるいは「申請書の返戻照会」など統一的な対応はされていないが、その中でも疑義請求の頻度が高い施術所に対し文書で注意を呼びかけている国保連合会が多い。
また、不正請求対策の現状として、都道府県知事は、審査委員会の設置及び指導監査(通知)に基づき、柔道整復師に対する指導及び監査の実施に係る連絡及び調整等を行うことを目的として、都道府県担当部(局)に指導監査委員会を設置することとされている。
一方、保険者の役割としては、国保連合会に業務を委託している保険者がほとんどのため柔道整復審査会からの調査勧奨を受けて被保険者等に調査を実施している場合が多い。
不正請求には、患者が未受診にもかかわらず、患者の世帯や親族の名前を使ったり、部位数を増やしたり、通院日数を実際よりも多くしたり、治療した部位を次々と変えて請求するもの等があるが、被保険者等への調査権限をもたない国保連合会での判別は難しいといった問題点がある。
そうした中で不正請求対策における問題点として、疑義請求対策に「①審査時に生じた疑義に対する照会体制の整備」「②保険者における体制の整備」を提言している。
5)柔道整復療養費に係るIT化の推進
国は医療の構造改革の一環として、医療機関等に対し、平成23年4月までにITによる原則オンライン請求又は電子媒体による請求を義務付け審査・支払業務の効率化を図っている。そのため柔道整復の申講書による請求についても、磁気化あるいはオンライン化されることが望まれている。
電子請求化による国保連側のメリットは、入力作業が不要になることで大幅な作業時聞の短縮、業務の軽減につながるとともに、施術所においても事務の効率化として申請書の記入誤りによる返戻の減少、さらにはデータベース化で患者情報の管理が充実し、申請書の編綴、搬送・発送作業も大きく軽減となる。さらにはオンライン請求となると支払いまで期間が短縮されるなどメリットが多いとしている。
そのため国保中央会の柔道整復療養費の審査・支払業務検討会の報告書は、IT化推進への取り組みとして「①電子請求化を見据えた体制の整備(国保連合会・施術所・加入団体等)」を提言している。
現在既に、IT化への先駆的な取り組みとして、茨城県では、国保連、被用者保険、(社)茨城県柔道接骨師会の協議で、同会会員からの請求に限定して、磁気媒体と紙の申請書を併用した請求を実施している。申請書の磁気化システムがある揚合には、会員は電話回線・フロツピーディスクで県柔道接骨師会にデータを送付。磁気化システムの未導入の会員は県柔道接骨師会が申請書のデータを入力し、国保連に代行申請している。そのため「②柔道整復師の加入団体等による代行請求を含めた検討」を提言している。
現行の制度下で電子請求の取り組みの課題として、申請書に被保険者の自署が必要となっているため、電子データと紙との併用になることから両者の内容の食い違いがないか確認が必要になり、被保険者のサインの原本性など課題の解決も必要と指摘。またシステム導入の費用、電子データの代行体制の構築など今後の取り組む課題も挙げており、解決方法を検討する必要があるとしている。