柔整ホットニュース

特集

第2回日本認知症予防学会学術集会

2012/11/01

第2回日本認知症予防学会学術集会「認知症予防の可能性を探る」
会         期   2012年9月7日(金)~9日(日)
会         場   北九州国際会議場
大   会   長   西野憲史(医療法人ふらて会 西野病院 理事長)
学会理事長   浦上克哉教授(鳥取大学医学部保険学科生体制御学講座)
報   告   者   峰村直樹(有限会社   峰村   取締役)

 

昨年鳥取県米子市で開催された「第1回日本認知症予防学会学術集会」に続いて、福岡県北九州市にて「第2回日本認知症予防学会学術集会」が盛会に開催されました。柔道整復師の業務には関わりの少ない「認知症」ですが、認知症患者はすでに300万人を超え我国における重要な社会問題となっています。そこで、これからの高齢社会において、地域医療に貢献する柔道整復師の知識として、必要不可欠な「認知症予防の最前線」について報告します。

さて、皆様は「認知症」とどの程度関わりを持っていらっしゃるでしょうか。地域で活躍する柔道整復師の方の中には、すでに平成17年から行われている「認知症サポーター養成講座」をすでに受講し、認知症に対する知識をお持ちの方も多いと思います。私自身も3年程前より認知症サポーター養成講座の講師役である「キャラバンメイト」として、すでに30回以上養成講座を開催し啓発活動を行っています。また、最近では短時間型のデイサービスを開設する柔道整復師の方も増えてきていますし、介護施設等で機能訓練指導員として勤務する柔道整復師も増え、数年前と比較すると認知症と関わる柔道整復師は確実に増加していると言えるでしょう。

最新の認知症の患者数は、平成24年8月に厚生労働省老健局から「【認知症高齢者の日常生活自立度】Ⅱ()以上の高齢者数について」が公表されました。これによると、当該高齢者数は3年後の2015年には345万人、8年後の2020年には410万人になると予測されています。このことから、認知症に対する取り組みは、冒頭にも書きましたが我国にとって最も重要な課題と言えます。また、これまで国民のなりたくない病気の一位は「癌」でしたが、近年のアンケート結果では、「癌」を抜いて「認知症」が首位になったという報告もあります。少子高齢化が進んだ結果、中央と地方の人口格差や核家族化及び高齢者世帯の増加のため、10年前と現在では「国民のニーズ」がすでに変化していることが伺えると思います。

ここで「日本認知症予防学会」の目的について学会ホームページから引用したものを記載します。「日本認知症予防学会は、認知症予防に関連する諸分野の科学的研究の進歩発展をはかり、その成果を社会に還元することを目的としています。予防とは発症前の予防のみならず、早期発見・早期治療、進行抑制までを含んでいます。認知症診療・ケア等認知症高齢者への対応は多職種共働であたる必要があり、本会は多職種で集まり、研究発表及び経験を蓄積する場を提供します。」と設立の目的が記載されています。

学会理事長である浦上克哉教授(鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座)は、本学会の理事長講演の中で「認知症予防の重要性と日本認知症予防学会が目指すもの」と題し、次のように述べました。認知症は65歳以上の10人に1人の頻度でみられる“ありふれた疾患”であり、現在急速な増加をしている。認知症への治療、ケアは大事であるが、今後はこの急速な増加に対して予防をしていくことが急務と考えられる。これまで、血管性認知症は予防できるが、アルツハイマー型認知症に代表される神経変性疾患は治らないものであり、予防はできないと考えられてきました。しかし、近年アルツハイマー型認知症も予防を可能とする多くのデータが報告され、国際アルツハイマー会議でも年々予防に関する演題数が増えてきているという紹介がありました。

「日本認知症予防学会」は、認知症の予防に特化した学会であるため、「認知症予防」という言葉についても少し解説しておきます。認知症が現在300万人、軽度認知症機能障害(MCI)が200万人とも言われ、その予防の重要性はますます高まっています。その理由として、糖尿病は境界型を含めると患者数2000万人ですが、糖尿病がある人は認知症になるリスクが糖尿病でない人と比較すると2倍であると有名な久山町スタディーの実態調査から明らかになっています。高血圧については、患者数は796万人(平成20年厚生労働省調査)であり、特に収縮期圧150mmHg以上で認知症になるリスクは1.6倍(秋下:東京大学)高まるという研究報告が本学会で報告されました。このことから生活習慣病の予防や適切な管理を行う事は、認知症状発症の可能性を低くすることが分かってきています(一次予防)。また、軽度認知機能障害(MCI)や軽度脳血管性認知症を早期に発見し、アプローチすることでその改善を促す(二次予防)。さらに中等度以上の認知症の方々が安心して尊厳を保つ生活や人生を送る為の支援を行うことは症状の悪化を減少させる事も分かって来ました(三次予防)。

 

前のページ 次のページ