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(公社)日本柔道整復師会 第41回九州学術大会大分大会 開催

2012/08/01

宮崎県・宮元貴稔氏による『背部痛に対する垂直振動運動の有用性』では、旧ソ連時代宇宙から帰還した宇宙飛行士達の筋委縮や骨密度の低下を解決する垂直エクササイズマシンが開発され、その後、スポーツ選手の競技力向上や病院内のリハビリにも活用され、上下垂直運動と左右対称バランス運動が行えるマシーンが開発されている。一般的に立位の姿勢で下肢に使用されているが、背部痛を訴え平成23年11月~24年2月までに来院した患者12名(男5名、女7名)26歳~58歳の上肢に使用して効果を検討した。その結果、筋の伸縮性向上につなげることが出来たと発表報告した。

 

鹿児島県・有村博信氏による『シンスプリントに対する相反神経支配筋刺激への治療効果と内側縦アーチの関係について』では、スポーツ障害におけるシンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)の発症率は高く、発症原因としては、様々な発症誘因が言われている。今回、身体的要因である扁平足に着目、VASを用いて痛みの評価を行い、シンスプリントと扁平足の関係について検討した。今回の研究では、シンスプリントと扁平足の関連性は、高いとは言えず他の発症原因との要因が関与することが示唆されたと報告を行った。

 

次に福岡県・原口正秀氏による『股関節牽引手技法』と題した実技発表が行われ、原口氏は日頃の施術業務において、股関節に疼痛や運動痛、可動域制限を訴える患者を経験し、以前より用いている股関節軽度屈曲位、外旋位で足関節を把持、末梢方向へ牽引を加える手技法について良好な結果が得られていたので症例データに対しJOAスコア、VAS法を用いて統計解析し、有効性を客観的に実証した。

 

研究発表最後は大分県・尾林大生氏による『運動制限を伴う肩関節疾患の手技療法の有効性』と題した実技発表が行われ、尾林氏は肩関節疾患の中で34.3%が肩甲下筋下包の閉塞があると信原克哉先生が報告している。肩甲下筋下包の閉塞の疑いがあるものに手技を施した結果、良い結果が得られたため、その手技を分析、検討を行った。座位にて、術者は、患者の患側面に座り、患者の胸郭を広げさせ、肘関節を屈曲・肩関節を外転・軽度内旋・伸展(SL10)(結帯動作姿勢)させた状態で、腋窩から手を入れ上腕部を把握、他方の手で肩のアライメントを調整し、末梢牽引(SL11)しながら内旋強制する。この手技がweitbrecht 孔の閉塞を取り除いているか明確ではないが運動の制限の改善に効果があることを多く経験している等、報告した。

 

8題の研究発表全てを終えた後、座長である安東鉄男氏から会場の勝田先生に今学会の総括的な感想を求めるなど非常に友好的な場面が見受けられ学会の雰囲気が一段と盛り上がった。

なお、本学会の佳作論文は、『腰痛症からの回復期に有効と思われる内転筋へのアプローチ』宮崎県・土肥陽一郎氏、『拮抗筋へのアプローチによる腰部捻挫治療の一考察』佐賀県・太田広幸氏、『内反捻挫に対するインソールとテーピングによる最新の治療法』沖縄県・豊里剛氏、『下腿の捻挫・挫傷の早期回復アプローチ』鹿児島県・神田剛行氏、『膝関節の痛みに対する運動療法』熊本県・境園枝氏、『WA機器を使った毛管運動療法の報告』長崎県・伊藤俊一氏ら6題がポスター掲示された。

特筆すべきは、『大分が生んだ三人の偉大な医学者』と題し、大分大学医学部名誉教授大分医学技術専門学校校長・島田達生氏が、ターヘルアナトミア解体新書の翻訳で有名な前野良沢先生(1723-1803)、医師・哲学者で、比較解剖と顕微鏡観察の先駆者でもあり梅園塾で知られる三浦梅園(安貞)先生(1723-1789)、心臓刺激伝導系の発見で世界の心臓学者として名高い田原淳先生(1873-1952)の偉大な功績と生涯を紹介するポスター展示が行われ好評を博した。

また『柔道整復師と介護保険』と題したランチョンセミナーが日整保険部介護対策課・三谷誉氏と川口貴弘氏により行われた。

 

『九州は一つ』というスローガンどおり、熱くて格調高い学会が、次回へと期待をつなぎ幕をおろした。

(文責・編集部)

 

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