柔整ホットニュース
特集
シリーズ第9弾
国保中央会5項目の提言について業界内外の論客に意見を伺う!
5.柔整療養費に係るIT化の促進について
医科の原則オンライン化の話題が出始めた頃、「我々の業界は委任欄の署名があるから導入は困難だろう」と誰しも口にしたことと思う。しかし、田中氏のインタビュー記事によれば「それに代わる知恵、別の形のモノが絶対出てきます」と直筆署名に拘らない姿勢が伺える。これは私にとって意外であった。私見であるが、国保中央会常務理事と言えば官僚に近い存在であり、前例主義で動いている人達という認識が強かったからである。ここでも氏は事務作業の効率化を中心に話を展開されているが、「現状に固執して改革や効率化が損なわれることは本末転倒」と語り、実務者主導の改革を感じさせてくれる。
我々業界人の中にはオンライン化のデメリットを口にする人も多い。導入コストや、IT学習、所属団体の存在意義などである。しかし、統一審査基準など時代の流れに則した制度を要望している我々が、オンライン化の部分だけは既存の体制を望むというのは都合が良すぎるのではないか。私は現在41歳だが、ITに難色を示されている諸先輩にも「後進のため」と気概を持って賛同して頂きたい。オンライン化をはじめ業界共通の難題が対外から押し寄せた時、初めて様々な団体が協調する機会になるのかも知れない。換言すれば、協調が困難だったこれまでは、本当の意味の難題ではなかったのかも知れない。
デメリットの中で所属団体の存在意義を口にする人がいる。実際にオンライン化が導入された場合のデータがどのような形で統一審査会に至るか予測の範疇だが、各柔道整復師から直接統一審査会に至る形は考えにくい。おそらく、各所属団体の審査を経由し統一審査会に至り、入金はその逆の過程を辿るのだろう。各柔道整復師から直接統一審査会に至るのであれば、全国総個人契約者の様相を呈することになる。この形は国も保険者も全く望むところではないだろう。
オンライン化導入により私の所属団体でも事務作業の軽減が予想される。私の所属団体は任意団体なので、得られた余力のベクトルは会員サービスに向けられる。団体会長でもなく、柔道整復師でもなく、一人の国民として言わせて頂ければ、現状公益法人である日整社団は本来の目的である「積極的に不特定多数の者の利益を実現すること」という対外事業にそのベクトルを向ける機会を増加させることができるのではないか。平成25年11月末日に迫った公益法人格取得に向けて、業界唯一の公益法人としてその維持に期待しエールを送りたい。
6.今回の料金改定についての感想
政権交代がおこなわれ、民主党が事業仕分け第1弾を実施すると決定した時、私は行政刷新会議のホームページを慌てて見た。そこには『柔道整復師の療養費に対する国庫負担金』の文字があった。結果は予想通り縮減であったが、多くの先生方が口にされるように、他部位請求がまるで不正請求かのように論じられたことは無念である。今回の施術料金改定はこの事業仕分けを受けたものであるが、我々の生業が第1弾の449事業に取り上げられた事実を忘れてはならない。第1弾の仕分け対象になるということは、慣例的に2年後におこなわれる次期改定に向けて行動を起こすべきである。
料金改定の詳細については他稿に譲るが、我々日整社団外の業界団体にとっては収穫があった。それは、与党内柔道整復師小委員会の召集により、日整社団をはじめ我々業界団体が一堂に会し意見交換をおこなったことである。40数団体を召集した意見交換会は3月・4月・5月の計3回おこなわれ、たとえ形式的であったとしても柔道整復師小委員会議員・厚生労働省・我々業界団体により今回の料金改定について意見が交わされたことは歴史的快挙と言えるのではないか。
一方、同席の日整社団の心中は如何ばかりか。これまでの改定では日整社団が窓口となり厚生労働省との協議によりおこなわれるという『日整神話』が存在した。今回の改定においても事前に日整社団による協議があったのかも知れないが、我々には知る由も無い。開業柔道整復師の総数において日整社団の会員数とそれ以外を比較した場合、すでに日整社団以外の数が多いと聞く。ならば、今回、与党内柔道整復師小委員会がとった手法はごく自然なものと言える。
この後、私は大阪へ帰り柔道整復師小委員会の会議の有り方を考えていた。そこへ心ある他団体の先輩が「2年後の改定に向けて活動を共にしないか」と声を掛けて下さった。そして、関西柔道整復懇話会と名称も決定し、これまで計2回の会合を持つことが出来た。まだまだ10団体前後が参加する小規模な会合だが、関西圏の柔道整復師の意見を集約し、永田町に召集される少ない時間の中で有効に発信していきたい。
我々の願いは、国民医療である柔道整復術を発展させることであり、柔道整復にまつわる制度に磨きをかけ後進へと継承し、今以上に国民の健康に貢献することである。これは所属団体に関係なく柔道整復師なら誰もが共有している願いだと思う。我々が立ち上げた関西柔道整復懇話会は走り出したばかりだが、関西圏の社団役員の方々にもぜひともご参加頂きたい。同じ柔道整復師として共通の目的に向けて大いに語り合える日が来る事を切に願う。
プロフィール
田畑 興介
道友協会 会長
NPO法人 JPAA研究会 理事長