柔整ホットニュース
特集
シリーズ第9弾
国保中央会5項目の提言について業界内外の論客に意見を伺う!
2.審査の統一化について
全国統一書式・審査の地域間格差の解消を図るための算定基準の明確化・全国決済制度は全てリンクするものである。現在、各都道府県においてローカルルールが存在しているようだが、わが国が世界に誇る国民皆保険制度の理念からは大幅に逸脱したものではないだろうか。特に審査の地域間格差は、住んでいる地域、加入している健康保険種別により、国民が享受することのできる医療の質の格差を生じさせているのが現状である。これは国家の根本規範である日本国憲法、第25条『生存権』からも逸脱していると言えよう。
最大の問題点は『療養費支給の最終決済権限が各保険者にあること』である。現状、国民健康保険による地域間格差は少ないようだが、少子高齢化がさらに進めば、財源不足に陥ることは明白であり、現在の組合保険のような『経済審査』が適用されるだろう。そこでは、財源を支えている国民の健康への配慮が確実に希薄なものとなる。
現在、公的審査会(協会けんぽ)、国保連合会による審査などが存在する。国保連合会で問題視されているローカルルールや、国民健康保険加入者と各種組合保険加入者との格差を是正するには、全ての健康保険の審査を一元化する統一審査会の制定が急務である。そして、療養費支給の最終決済権限を保険者から統一審査会へ委譲すべきであろう。
私は職務がら『療養費の支給基準(社会保険研究所)』を隅々まで読む。そして、所属会員へのアドバイスのエビィデンスとしているが、療養費支給の最終決済権限が各保険者にある以上、そこに記載されている内容が全て正解とは限らない。国民健康保険や協会けんぽの療養費支給は概ね本書に適応しているが、各種健康保険組合の支給は療養費の支給基準以外の『経済審査』が色濃く反映されている。
私も一介の臨床家である。患者に接するとき保険種別によって施術内容を変えることは、臨床家としての良心が許すはずもない。「施術行為と経済活動は切り離して考えろ」とこの業界ではよく言われるが、昨今の各種組合保険審査における外部委託業者の調査回答書は常軌を逸したものと言わざるを得ない。組合によっては複数の外部委託業者に依頼しているケースもある。そこでは必ず経済活動が優先しておこなわれ、減額・不支給競争を発生させている。全ての国民の健康を担保しているこの国において、経済審査を激化させることは、医療の根幹を揺るがしかねない行為なのではないか。
このような現状を打開するためにも、法的な権限を明確にした統一審査会を制定し、全ての健康保険の統一された支給基準の策定が急務であろう。そして、我々は統一算定基準をもって請求行為をおこなっていく。間接的にも公金を支給されている我々は、施術をもって国民に貢献する間接的公僕と言っても過言ではない。統一審査会が制定され、明確な統一支給基準ができ、国民が受ける医療の質が確保され、一部の保険者に翻弄される不幸な臨床家が減少するのであれば、我々にも痛みを伴う覚悟がある。それが、間接的公僕である我々の進むべき道筋だと確信する。