柔整ホットニュース
特集
シリーズ第6弾
国保中央会5項目の提言について業界内外の論客に意見を伺う!
5項目の提案の中心的内容ではないかもしれないが、私個人としては問題と思われる事項もある。
先ず広く社会をみると、柔道整復が終息に向かっているのではなく、この日本社会の中で確実に根を下ろして、今日まで一定の役割を担ってきているという事実、現在は整形外科が未発達でありその代替として柔道整復に患者さんが来ているのではなく、患者さんは整形外科が在ることを知っていて来院しているのであって、「整形外科の代替機能」という時代とは異なる。
先ずこの認識の上に立つことが前提である。そうした中で5項目の提案にも書かれている調査基準が統一されて行くことは賛成である。しかし、その内容の問題である。疑義や患者照会の問題も賛成である、ただしそのやり方によってである。
現時点では、国保に関しては、特に問題となっているわけではないが、他の、特に健保組合の場合の一部では、あるいは外部委託している委託業者の患者調査では、問題がないわけではない。
今回は一つだけ意見を述べたい。それは、柔道整復療養費の支給対象となる傷病の問題である。
この問題は、柔道整復師や保険者が悪いというわけではなく、前述したように時代という流れの中で、あるいは医学の進歩の中で、医療の状況が変わってきた中で、両者に戸惑いが生じているというような問題であると考えているが、5項目の提案にもあるように、柔道整復療養費の支給対象となる傷病は、急性又は亜急性の外傷性の「骨折(医師の同意が必要)」「脱臼(医師の同意が必要)」「打撲」「捻挫」「挫傷」及び「肉離れ」と規定されている。しかし現状は医学の進歩により単純に割り切れる問題ではない。
例えば、捻挫は現在、柔道整復の教科書でも殆ど病名として存在しない。更に言えば、変形性膝関節症は、原因が1に遺伝、2に老化、3に外傷である。1と2は内因であって基本的には治療対象にならない。であるから3の外傷に対する治療が基本である。しかも変形は外因である外傷によって進行していくが、変形はこれまた構造の弱体化という内因として外傷への弱点として加わる。
こうしたことに対して治療しているのであって、単純な「骨折」、「脱臼」、「打撲」、「捻挫」、「挫傷」あるいは「肉離れ」などと病名で規定され、原因が患者さんに聞けばわかるなどという話ではない。
関節損傷、特に軟骨には知覚神経がないから、損傷した時点で患者自身が解らない事が多い。だから通常患者さんは膝痛を訴えて来院したときに、ケガをしたとは言わない。レントゲンを撮ってから来院する患者さんもいるが、「変形」あるいは「加齢」と言われたとして来ることも多い。
しかし大概は「一昨日から」だとか「3日の日から痛い」と日を特定してくることが多く、一昨日変形した訳でも、その3日に歳をとったわけではない。また変形が治療対象になるわけでもない。変形はあくまで予防として指導することであって、治療は一昨日起こった事に対して行なうのである。
そうした状況の中で、原因は患者さんに聞けば解るとする、保険者が多いようであるが、ありえない。また裏を反せば、患者が言えば、それが原因であるとする考え自身も間違いである。このことは柔道整復師にも当てはまる。