柔整ホットニュース

特集

施術療養費支給申請書点検業務外部委託の現状と問題点
―その1 返戻・患者照会の実態―

2010/07/16

一方、榊原係長は「今のように調査会社に点検照会業務を丸投げにしたほうがコストは安いでしょう。しかしながら患者さんとしては、お医者さんに行ったら何も無いのに柔整に行ったら、なんでこんなに一回一回聞かれなくてはいけないのか?と困惑されています。療養費と医療費の区別は患者さんはつきませんから。同じ保険を適用するのになんで接骨院にかかったらということです。一番の弊害は患者さんに行ってしまうので、患者さんが兎に角困るということです。患者さんに無言の圧力がかかる。以前は柔整師の先生に調査が全部行っていたんですが、そうではなく結局患者さんに調査すること自体がプレッシャーになっています。患者さんが保険者さんに連絡をすると〝だから病院に行きなさい〟という風に言われるというのは、これは本当に営業妨害ですよね。保険者さんや受託会社は、患者さんを標的にしている訳で、ある意味、ずるいというか、柔整師さんを相手にするというのは大変な訳です。確かに質のよくない柔整師さんというのは保険者さんの質問にまともに答えないし、本当に横柄な対応をされたといった事例がありました」と話され、「一番の問題というのはやはり患者さん調査です。病院だったら簡単に牽引をして痛み止めのお薬を貰って帰ってくる。でも接骨院のほうは手技というものが入りますから、それによって、患者さんとしては、その時に痛みが和らぐというのは身をもって感じますので、やっぱり接骨院に行きたいという人が多い。行ったはいいけど、何ヵ月後に調査が来るのでは・・・」と強く言われたことが印象的である。

 

今回の取材で保険者側に見え隠れする問題は

調査の目的が正しい請求かどうかであっても、結果は受診抑制につながっている。
保険財政の悪化から医療費抑制という視点で、むしろ受診抑制をねらっているのではないのかという疑問。
医学的な内容を患者さんに調査して本当に分かるのかという疑問。例えば果たして患者さんは受診することになった疾患の病名や原因を正しく理解しているのかという疑問。結局は「患者さんが言った、言わない」の議論になっている。
調査項目や内容が正しいのかという疑問。
調査する側が、患者さんの利益という視点、や本当の意味での医療経済的視点、規則や規定で疾患の治療内容を決められるのか。

ということが保険者側の問題点として存在するのではないかと思われた。

更に柔整師には耳が痛いかもしれないが、正しい請求をしているとする柔道整復師側にも問題があるように感じる。つまり、

保険者に納得していただくだけの医学的な説明が不足しているのではないのか、その時その時で、強引でもいいから通せば良いとしてきたのではないか。
昔から言われていることだが「やった、なおった。患者さんは喜んでいる」という説明では信用されないのではないのか。
柔整に受診する医学的メリットや経済的メリットを充分説明しきれていないのではないのか。柔整師側としては、保険者に充分な医学的な説明をする必要があり、それは所属する会の役員や担当者ではなく、患者さんの治療に当たった柔整師が、自ら保険者に納得の行く説明を求めたり、説明をしたりすることが必要なのではないか。
 

いずれにしても両者間で今後充分な話し合いが必要ではないだろうか。

 

*健康保険法第59条(文書の提出等)とは、保険者は、保険給付に関して必要があると認めるときは、保険給付を受ける者(当該保険給付が被扶養者に係るものである場合には、当該被扶養者を含む。第121条において同じ。)に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を命じ、又は当該職員に質問若しくは診断をさせることができる。
*健康保険法第121条、保険者は、保険給付を受ける者が、正当な理由なしに、第59条の規定による命令に従わず、又は答弁若しくは受診を拒んだときは、保険給付の全部又は一部を行わないことができる。

 

 

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