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田渕整形外科クリニック院長・田渕健一氏に特別インタビュー!

2012/10/01

―田渕先生は花田学園や、有明医療大学でも客員教授をされていらっしゃいますが、昔と今では学生あるいは柔道整復師は、違ってきているのでしょうか。

違いは言えないと思いますが、私の所に来ている柔道整復師は非常に良いです。違わないようにガッチリ教育するということが必要ですが、卒業する生徒の数が多すぎて卒業生達が勉強する場、研修を積む場がなくなっているんです。裁判によって学校も数がいっぱい出来てしまい、どうしていいのかわからないけれど。その中で勉強する気のある人達だけを預かって教育しているだろうと思いますので、違わないですね。昔も熱心だし、しかも親子5代くらい続いてますからね。水戸では肢体不自由の人たちの家まで作って自費で面倒を看ているという柔整の先生だっております。江戸時代から続いている人たちにはそういう人たちがいくらだって居るのです。地方のそういうことも担っていたんですね。僕はそういうことを見て感激しました。

 

―田渕先生は、櫻井理事長、成瀬先生、山口先生らと『柔道整復師のための医療安全学』という本を出版されていらっしゃいますが、どういう内容の本でしょうか。

これは大学を作る時に文科省の指導もあり、安全・安心な医療、特に訴訟になるような事案について教育しろと指導を受けたので、その訴訟例、整形外科の訴訟例、裁判例等いろいろな事例を探して、教科書、本にしたのです。裁判にならないために必要な知識というのを入れると物凄く難しい本になっているんです。学生のために作ったんですが、かえって開業されている柔整の先生たちが買ってくださっているようです。初版ですから近々書き直したいんです。柔整の学校で父兄は柔整の人が多いから教科書をみて気に入ってくださっているという噂はお聞きします。

 

―平成11年(1999)10月に「花田学園スポーツトレーナー研究会」が発足され、田渕先生はこの研究会の顧問ドクターを務められていらっしゃいますが、その内容等について教えてください。

ドクターからトレーナーまで、また幅広く研究者まで含めて、研究会に登録している方は約500名です。毎年テーマを決めて研修を積んでいます。柔整・鍼灸の中でも特にスポーツの分野で研鑽を深めるということでやっていますが、どちらかというと鍼灸師の方がトレーナーを目指す人は多いです。というのは相手がプロ選手になればなるほど、日ごろの体のケア分野まで入ってきますので、スポーツ分野を専門的にやりたいという意味で、どうしても鍼灸マッサージ師の方が多いというのはある訳です。柔整師の方は、接骨院をやりながらというパターンが多いように思います。社会貢献という位置づけからすれば、開業されている方々、柔整に限らず鍼灸の方々も活躍の場がありますので、地域に密着したスポーツの分野を専門にする方は増えてきていると思います。研究会のメンバーがトレーナーの資格をもっているかというとそういう訳ではなく、幅広く勉強したい方はどうぞという感じの研究会です。

私の所で働いていたスタッフの内、一人は器械体操の内村航平君に付いてロンドンオリンピックに行きました。全員のサインを記念に持ってきてくれましたが、もう一人は女子バスケットでイスタンブールまで行き、カナダ戦に負けてオリンピックには行けなかったんですが、もう1勝すれば、これも全日本女子バスケのトレーナーになって行くところでした。今はアンダー20のバスケットのトレーナーで行っております。二人ともオリンピックの前までは当院で働いていたんです。オリンピックのトレーナーというのは、日体協の公認トレーナー免許を取っているからなんです。現在、日体協の公認トレーナー資格保持者は1600人位いますが、その内の200名強位が花田のアスレチックトレーナー研究会の卒業生です。公認トレーナーは、試験が難しいので優秀じゃないと無理ですが、福林先生の授業を受け、試験に受からないといけないから物凄く難しいです。トレーナーは、具体的にはオリンピックに着いていけるのですが、例えば航平君がコナミに就職していますからコナミでアスレチックトレーナーを募集する可能性はあります。そこに就職できるのはアスレチックトレーナーでなければダメだということになります。まだ具体的に収入が想定できるのは現在オリンピックだけでしょうか。その他に、スポーツ施設も多くありますが、機械を置いて素人を置いていたら拡がりません。個々の人ごとに目標プランを立ててあげないといけない。負担だけ大きくしてガンガンやらせるというのはダメでしょうね。機械相手では楽しみが少ないですから。従って目標をセッテイングするのは、アスレチックトレーナーじゃないと出来ないでしょう。そのアスレチックトレーナーになるためのコースを花田学園で作っているということです。

 

―最後になりますが、柔道整復師は、今後、どのような分野の知識が必要となってくるのか、アドバイスをお願いします。

柔道整復師は、画像診断の分野で厚労省からエコーを撮っても良いとされましたので、今後は捻挫や靭帯の断裂、骨折をエコーで診断出来るようになるのがいいのかなと思います。その技術や知識は必須になります。エコー診断がどう役立つのかということが、実感として分らない方が多いし、また野球肘にエコーが役立つし、捻挫の時に靭帯損傷か骨折か見分けがつくのにエコーをやろうとしていない。それが必須であり、取り入れなくてはいけない。今まったくエコーは柔整がやってもいいというところで安心してしまっている。私自身もできるようにならなくてはいけないので、エコーを買って、今お昼休みに正常な人のエコーをやらせている段階です。まだ数多くはありませんが、その内エコーを使った診断について講演出来るようになりたいと思います。

(文責・編集部)

 プロフィール

    田渕 健一

昭和42年、東京大学医学部卒業。東大整形外科入局、神経診所属。同45年、関東中央病院、都立広尾病院、虎ノ門病院整形外科勤務。同49年、筑波大学講師、スポーツ医学を始める。同54年、筑波大学臨床医学系助教授。同57年、関東中央病院整形外科部長。同61年、関東中央病院理学診療外科部長兼務。平成3年、横浜労災病院整形外科部長。同9年10月、世田谷区豪徳寺にて田渕整形外科クリニック開業、現在に至る。

資格:日本整形外科学会認定医、昭和58年。昭和59年、日本体育協会公認スポーツドクター №16.日本整形外科スポーツ医学会評議委員。学校法人花田学園理事。東京有明医療大学客員教授。財団法人青少年野外教育振興財団副理事長。元ヴェルディ川崎チームドクター。

主な業績:1.土屋弘吉、高沢晴夫編集企画「整形外科MOOKスポーツ障害」1963 金原出版 足関節障害 軟部組織の病変に由来するもの P177-190 骨軟骨の病変 P191-202 等。

 

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