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第15回日本統合医療学会2日目『統合医療における柔道整復師の役割』

2012/02/01

稲川氏は、「ほねつぎ」であることに拘り臨床と教育の現場に立ってきたと自身を紹介し、〝この柔道整復の世界に今異変が起こっており、骨の接げない骨接ぎが非常に増えている。非常に問題であると私は考えている。接げなくなってしまった理由にはいろいろ考えられるが、我々の身分法である柔道整復師法の第17条に施術の制限、〝骨折・脱臼に関しては医師の同意がなければ、応急手当は良いけれども医師の同意がなければ仕事をしてはならない〟と言われている。患者さんは、何で接骨院に行くのか、大きい病院では待たされる、身近にある接骨院で診てほしい、手術をしたくない。こういった気持ちを持った人が沢山いて柔整師の持っている技・知識を国民の為に活かしてくれということで柔道整復師は国家資格であると言えるのではないか。
今日提案したいのが「医接連携」という概念で、この言葉は柔整師はよく知っているがお医者さんで知っている人は殆どいない。医師は診断をして必要があれば投薬・手術を行なっていく。柔道整復師は、まずこれが自分の手に負えるものであるかの判断をして、整復・固定、その後の後療を一連の流れとしてやっていく、職分の棲み分けというものもあるが、夫々の得意技を認識した上で連携していこうというのがこの医接連携である。病院勤務の柔整師の最大のメリットは何かというと、何をおいても医接連携がスムーズである、これに尽きるのではないか。接骨院から違う場所にある病院に行ってくれ、戻ってきてくれというのは患者さんに負担が大きい、柔整師にしても、すぐ診断がつかないというのは非常に歯がゆいが、病院に勤務しているとその場で連携が図れるというのは患者さんにとっても我々にとっても大きなメリットではないか。私が10年間勤務して実感しているのは医師と柔整師がタッグを組むと非常に高度なプライマリーケアが可能になる。これを今日紹介していきたい〟として、栗原整形外科勤務時代に医接連携でよくなった症例を数多く紹介。一人でも多くの「ほね接ぎ」を育て次世代に英知を伝承することは、柔道整復師の命運を左右すると話した。
最後に〝柔整師が骨接ぎとして育つには、「医接連携」でお医者さんの医療と我々接骨の医療とを統合させて治療をしていくことが大事ではないか。医療職種は多々あり、職種間で英知の統合をしていくことが重要ではないか〟と結論を述べた。

大澤氏は、稲川氏の講演をうけて〝骨を接いでいる骨接ぎが参りました〟と挨拶。
まず最初に、元日本医師会会長の武見太郎先生が仰った〝柔道整復は日本の誇る民族医療である〟このことを頭において話を進めたいと述べ〝基本的には国民医療の駆け込み寺としてプライマリーケアを担当しているのが柔道整復師に外ならない。捻挫、打撲、挫傷、骨折、脱臼が整骨院の基本的なテリトリーであり、近年は亜急性損傷ないしは緊急性を要するもの等も含まれる。応急処置をするため当院には年に3・4台の救急車が来る。
今から30年前、柔道整復師は10年位のキャリアを積んで、整骨院でのれん分けをする時には顆上骨折が最初から最後まで一人完結型で出来るということで開業が許された。柔整師というのは患者さんに笑顔を与える仕事ではないかと思っている〟と話し、これまで扱った症例を多く紹介した。〝当院は80年くらい骨接ぎをやっており、長い歴史があり患者さんの信用が得られて特別に来てくれるのかもしれないが、実際に骨折の患者さんが多数来院する。患者宅まで往療といって足を運んで、お医者さんの在宅ケアと同じようなこともしている。介護分野での機能訓練指導に公益社団法人日本柔道整復師会は非常に力を入れており柔整師が介護分野で活躍するフィールドをつくろうと動いている。
また肝心なのは、災害時対応である。3・11の日、私は自宅におり、ライフラインが切れた中で医療を展開した。術前のレントゲン撮影なしで「経験・勘・コツ」で整復を行った。ライフラインが3日後に回復してレントゲンを撮ると、きれいに整復されていた。ライフラインがなくても柔整師は良い仕事が出来る。
新聞報道等で高齢者ばかりを集めて柔整師はやっているという誤報もあるが、4600人を調べたところ、10代~80代まで万遍なく患者さんはみえており、高齢者だけが整骨院をサロンのように利用しているのではなく急性外傷を含めて多くの国民の役に立っている。近年、疾病が多岐にわたっており、スクリーニングすることが非常に大事な役目になる。
通院回数もいろいろ言われているが、1回~3回で診療が終わっているケースが多かった。治癒するまでの期間は、約半月くらいで治っている方が2200例。1ヶ月くらいが2000例。当院で施術可能であったものが約80%、約20%を他科に紹介。10人に2人位はいろんな疾患が考えられ病院等で精査をすることになる。連携をして医療過誤を防ぎ、しかも医療訴訟から免れていくことにもなる。費用対効果については、足首の捻挫の場合、病院に行くと9470円の診療報酬が発生する、整骨院に来た場合は正規に行うと2110円、約5分の1位の診療報酬である。橈骨下端骨折を整復すると、病院はレントゲン代も含めて3万2800円、接骨院は1万1000円、約3分の1の額で済む。2週間後の再診で病院ではギブスの巻き替えやレントゲンチェックを行って9640円、整骨院の場合は僅か735円で2週目の再診が終わる。コストパフォーマンスが高く、費用対効果の点で非常に優位性がある。これを国民が利用しない手はない。日本の国民にとって必要不可欠な医療であり、特にハードルが低く親切丁寧。まさに私は「B級グルメであれ!」B級グルメこそが日本の国民にとって一番身近で一番食べたい食材ではないかと子供たちに言っている。
結論としては、整骨院という存在自体が「トータルパッケージ」として国民医療に必須であろう。皆さんとタッグを組んで、補完医療として西洋医学で補完できないものをサポートしていきたい、手を携えて頑張っていきたい〟と力説した。

各々のシンポジストが柔道整復師が置かれている立場を紹介し、統合医療の一翼を担う医療者として実践できる方向性を示した。