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第15回日本統合医療学会2日目『統合医療における柔道整復師の役割』

2012/02/01

第15回日本統合医療学会2日目は、1月15日(日)朝9時より『統合医療における柔道整復師の役割』と題したシンポジウムⅦが市民ホール第4集会室にて開催された。座長は、大川学園医療福祉専門学校柔道整復学科学科長・金島裕樹氏と東京有明医療大学保健医療学部柔道整復学科教授・成瀬秀夫氏の両名が務めた。

東京有明医療大学保健医療学部柔道整復学科助教・中澤正孝氏が『柔道整復師が目指す患者本位の医療』と題し大学教員の立場から、帝京平成大学地域医療学部柔道整復学科講師・小林直行氏が『スポーツ現場で活動する柔道整復師の役割』と題しアスレティックトレーナーの立場から、大東医学技術専門学校専任講師・稲川郁子氏が『当世柔道整復師「ほねつぎ」考 ~徒手整復と医接連携』と題し整形外科の勤務柔道整復師の立場から、了徳寺大学健康科学部整復医療トレーナー学科教授・大澤裕行氏が開業柔道整復師の立場から、として4名のシンポジストが講演を行った。

中澤氏は〝先進諸国では、統合医療への流れが加速しつつあり、補完代替医療の利用者が増加している背景には、西洋医学の力が及びにくい領域が存在していることが挙げられる。ストレス等の精神的な要素が反映される疾患、或いは検査では異常がないが自覚症状を訴える愁訴などへの対応が困難であること。2つ目は、医療費の高騰が問題となっており、より安価な補完代替医療を用いることが医療費を抑制すると考えられている。最も注目される理由として、患者自身が受けたいと思う治療を選択する意識が高まっていることが挙げられる〟とした後、柔道整復師について説明した。
〝東京都柔道接骨師会の資料では、柔道整復師の就業人口約4万4000人に対して、接骨院の数が約3万5000件。このことが示すのは、多くの接骨院が一人の柔道整復師で患者を診ているということになる。怪我に対する初診から治癒までの過程を一人の柔道整復師が完結させるという一つの特徴があると思われる。柔道整復師は治療を通して患者と向き合い、多くのコミュニケーションにより患者の要望に応じ不安や痛みを取り除いてきた。「暖かい医療」を提供することで、お互いの信頼関係を築いてきた。
一方、徒弟制度によって技術は文章化されずに伝承されてきたことで、技術を積極的に共有したり、科学的検証を推進する活動は、未だ遅々としている状態である。日本柔道整復接骨医学会は、今から約20年前に出来た柔道整復領域で一番大きな学会である。この学術大会における一般発表の数を調べたところ、1年間で平均数131の発表があり、また接骨医学会の学術雑誌に投稿された文献数(症例報告を含めて)は1年間平均7編の論文数であった。柔道整復術にエビデンスが少ないという現実は、現代西洋医学との連携を阻んできた。統合医療における柔道整復師の役割を考える際に重要なのは、いかに西洋医学との連携をスムーズにして患者本意の医療を提供できるかにかかっており、そのためには、柔道整復術の科学的検証を行い、批判的吟味を経て、柔道整復師の行う治療の再認識をすることが必要である。西洋医学との連携をスムーズにし、統合医療の実践を目指すことが求められている〟等、述べた。

小林氏は、近年多くの柔道整復師がスポーツ現場で活動しており、傷害の応急処置や怪我から復帰するためのアスレティックリハビリテーション、日々のコンディショニング、大会時の救護活動もボランティアとして行われている等、多岐にわたる活動内容を紹介。
日本体育協会公認アスレティックトレーナーが保持している資格を調査した結果(平成20年9月)、約1,500名のアスレティックトレーナーが居る中で一番多いのは鍼灸師37%、あん摩マッサージ師が29%、理学療法士が20%、柔道整復師は最下位の15%であった。これまで日本では鍼灸あん摩マッサージ師の行うマッサージがトレーナーとして求められてきた経緯があるために今でもこのような状態になっているのではないか。しかし現在のアメリカのアスレティックトレーナーの中で、スポーツ科学の発展と競技スポーツの高度化から、マッサージを中心としたものよりはスポーツ医学の専門家としてコンディション全般を対象とするアスレティックトレーナーに変化してきている。柔道整復師は、外傷の応急処置が医師以外に医師の指示なく出来ることが認められている唯一の職種であることから、法に違反することなく、脱臼の整復や靭帯損傷の評価等、応急処置が可能である。怪我から復帰する際、日常生活に復帰するための病院でのリハビリテーションもさることながら、競技に復帰するためのアスレティックリハビリテーションが必要であり、柔道整復師は手当て・リハビリの両方に能力を発揮できるとした。
アスレティックトレーナーとして柔道整復師の役割は、再発予防や障害予防トレーニングを導入すること。データをもとに、どういうトレーニングを行えば怪我をしないかということを考える。その他コンディショニングの調整、体重管理等、特に女性の場合には、様々な悩み事が起きる。監督・コーチ・トレーナー・選手に挟まれる立場ではあるが、出来る限りチームがまとまるような高いコミュニケーション能力が求められると話した。

 

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