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(公社)日本柔道整復師会・第36回近畿学術大会・奈良大会開催!

2011/12/16
特別講演『知っておきたい足部疾患の病態と治療』

足部及び足関節の権威として知られる奈良県立医科大学整形外科教授・田中康仁氏による特別講演は、前足部(足趾)は「外反母趾・Lessor toe障害・Morton病」、中足部は「扁平足」、後足部は「変形性足関節症」、特に外反母趾と偏平足について詳細に解説した。

手と一緒で足は腱が多く、腱障害には腱靱帯付着部障害・後脛骨筋腱機能不全症(成人期扁平足)・随意性腓骨腱脱臼・腓骨筋腱滑車症候群・アキレス腱症・アキレス腱周囲炎・アキレス腱付着部症・アキレス腱滑液包炎・足底腱膜炎・長母趾屈筋腱腱鞘炎等、多数ある。また、全身性疾患をともなう足部障害も多々あり、足の痛みを考えれば、関節リウマチや糖尿病性の痛風障害を考えることが多い。足が痛い場合は足を診た後、全身も一回は診ておかないと見落とすことになる。

足の基本的な診断法は、全身に比べて、視診、触診がメインであり、特に足の変形はみれば分かるし、最近ではエコーが普及しているが、皮下出血を見落とさないこと。何処が痛いか、圧痛を探すことで何処が悪いか、どういう疾患があるかということが分かる。触診は動かしながら行なうのがポイントである。

足の指の形は、親指より二指が長い足をギリシア型といい、親指が長いタイプをエジプト型といい、7割を占め外反母趾になりやすい。
神経による痛みなのか、変形による痛みなのか、指の機能をしっかりみる。また足関節が硬いかどうかが足の診察では非常に重要で、足関節が硬い人は前足部の障害が起きやすく、診察の時には伸転位で足関節がどれだけ入っていくかを診る。

指の障害は足関節が硬いことによって起こるため、ストレッチングをしっかり行うことが重要で、足指のじゃんけんや意図的に指を開くなど、母指外転筋をしっかり鍛える。または特に子供の外反母趾ではパッドをあてて荷重すると少し開くため工夫するなどして押さえるのが非常に重要である。

偏平足にもいろいろあり、小児期の偏平足、思春期の偏平足、成人期の偏平足があり、夫々異なる。子供の偏平足は、先天性のもので、距骨が真下を向いて船底四辺形に変形している。気をつけなければいけないのは、赤ちゃんの足は分厚いので偏平足でなくても偏平足にみえることがある。立ってもらって踵が外を向いているかどうかをチェックするのが重要。こういう足を見つければ、体操をしてもらう。爪先立ち、要はアーチを保持するために足の内在筋、足の裏の筋肉を鍛える。思春期の偏平足は、正常であれば真っ直ぐだが、足が扁平で親指が回内する。回内足になると走るとアキレス腱に負担がかかるので、それを固定してあげることが重要で、足底板等で回内を補正するような対処が必要。最近日本人でも増えている成人期偏平足は、足の内側の踝(内果)の腫れをみれば、後脛骨筋の機能不全症で、腱が扁平している。放置していると戻らないので早い内に治療しなければならない。子供の偏平足も大人の偏平足も大体同じで距骨が内向く。ポイントは、健側は踵が内向いて、患側をみると爪先立ちできるがそのまま踵が上る。爪先立ちしても内に入ってこない。偏平足二期は軟らかく、軟らかいというのはまだ治療のやり方がある。三期以降になると偏平足が固まって治療が難しくなる。酷くなれば外反型の足関節症という状態になる。二期くらいまでに治療しなければ、後で機能障害を残すことになる。

トピックスとして、変形性足関節症も最近数が増えており、変形性膝関節症と一緒で足も内反している。原因は小さい時から正座をするよう強制され、生れた時は人の足というのは外反で、逆の変形であり、大きくなるに従って日本人的な生活をしていると内反する。最近は足の長い子が多く、将来的には欧米型の疾患形態になってくると思われるが、今我々の時代は小さい時に正座をしていた世代なので、更に高齢の人が増えてくるため今まで以上に変形性足関節症がどんどん増えてくる。

足の疾患は、関節が多い分だけたくさんあるが、基本的なものを押さえておくことが大事で、しっかり足を触って診ることが最も大切、圧痛が何処にあるかを診て治療に役立てていただきたい等、分かりやすく講演された。