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柔道整復師療養費審査基準の指針に関する勉強会

2012/12/16

一部負担金以外の料金を徴収した施術は療養費の対象とはならないという旨の記載があるが、この意味は自由診療との併療、すなわち混合診療は駄目であると解釈するが、どのようなケースがいけないのであろうか。[※第三次案要旨8ページ(3)B]

ここで言っているのは、柔道整復治療をして2部位を療養費で賄い、3部位目は自由診療でやるというやり方は駄目だということである。例えば鍼灸治療と柔道整復治療を両方行っていれば、治療方法が違うから柔道整復治療は療養費で、鍼灸治療は自由診療でかまわないということ。部位転がしをやるくらいなら、むしろ3部位目以上は同じような内容の治療を自費でやった方が良いのでは?という意見もあるとは思うが、療養費というのは保険給付が困難な場合にそれに代わって支給するものであるから、保険と同じレベルのものであると考えられる。そうなると医療と同様に保険診療と自由診療を掛け合わせてはいけないということになる。もし混合医療を認めることになると、療養費廃止論が強く主張されるだろうと予想される。

 

施術所の従業員・同居の親族に対する施術は応急手当の1回のみに限り療養費の対象とするという旨の記載があるが、これは柔道整復師法の「柔道整復師とは厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とするもの。業とするとは、反復継続の意識をもって施術を行うこと」という部分に抵触はしないのか?保険診療はしない前提ということなのか。[※第三次案要旨8ページ(3)C]

少し誤解があるのかもしれないが、治療をすることは一向に差し支えない。しかし療養費としては1回しか請求できないということである。同居の親族等から一部負担金を取るだろうか。一部負担金を取れないような患者さんに対してどうして療養費を請求するのか。ただし応急処置をしておかなければ危険だということもあるだろうから、そういう場合は1回だけ療養費を請求できるという主旨である。後は倫理の問題として、大した怪我ではないのに療養費を請求したいと思えば家族の名前を使って請求するという可能性がある。そのように疑われるような請求はすべきではないということである。

 

往診に関して「近隣の居住者からの通院困難証明書」の取得が必要とあるが、最近は近隣とのネットワークが薄い場合もあり、通院困難証明書自体入手が困難だと思われる。休日・時間外に関しても「被保険者が休日・時間外以外の日・時間に受診できないことを証明する資料の提出を受けた施術」とあるが、これも同じく月末に訪れた患者さんの証明書を、提出日までにどうやって手に入れれば良いのかという疑問が残る。[※第三次案要旨9ページF]

往診・休日・時間外の施術については少し修正しなければいけないと反省している。しかし原則としては認めないという方向である。療養費は医療保険の現物給付とは違い、医療保険でできない範囲外のものを治療するという枠組みになっていることから、往診等は当然医者が行うことになる。しかし目の不自由な方や足腰が悪くて歩けない方などで、どうしても徒手整復の治療を受けたいという患者さんがいることから、そういう人に限って往診ができるようにしようということでこのような案を出した。通院が困難な場合の通院困難証明書をどう取るかという問題は、確かに指摘の通り研究をしなければならない。しかし基本的には、往診は療養費の対象にしないという原則を打ち立てたい。

 

施術回数や施術期間の制限が記載されているが、何故このような制限が必要なのか。[※第三次案要旨9ページI、10~11ページQ]

まず注意して欲しいのは、ここで言っている治療期間の制限や治療回数の制限というのは、骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷等の負傷原因の明らかな外傷性は外れるということ。そうではない類似症状の場合に関して治療期間を制限し、治療回数を制限するということである。類似症状として治療するものの中には慢性的なものも含まれる恐れがあり、治らない疾病に対して繰り返し施術を行うようになる。そうすると保険者は納得しない。治らない治療は治療ではなく、治す治療が治療であるのだから、やはりある程度制限を加えて欲しいというのが当然である。

 

質疑応答以外には、いま保険者が一番懸念している問題として部位転がしが挙げられた。本多氏からは〝保険者は部位転がしを分かっていないと思ったら大間違い。全部分かっているから返却が増えてきた。患者照会をする大きな動機付はここにある〟とし、続けて〝保険者は先生方の治療は効果があり、原因が分からない疾病に関しての治療も、被保険者が喜んでくれているならば良いと言っている。ただそれが多すぎたり、回数を増やしたりするから嫌がられるのだ。そのようなだらしのない先生方を認めるわけにはいかないと言われてしまう。請求者側からの意見ばかり言うのではなく、支払者側の話も聞かなければならない。支払うのは保険者なのだから、支払者側が払いやすいように制度を作るべきである〟と保険者側の考えを代弁した。さらに本多氏は〝勿論、なぜそのような事態になっているのかということを保険者にも説明している。私は部位を制限したことに非常に無理があると思う。先生方は腰痛ひとつとっても5部位くらい治療しているのに、実際の請求では2部位或いは3部位となり、それ以外はすべてサービスなのかということになる。皆さんにとって許しがたい料金設定だろう。部位制限が無かったら部位転がしもなかったという事を、きちんと業界や行政にも認識させ、実態に合った制度を作らなければいけない。そこでJB日本接骨師会では部位別施術の調査をしており、近いうちにこれをまとめて必ず部位転がしを防止するための秘策を研究してみたいと思う〟と支払者側・施術者側双方の意見を聞く必要性を訴えると共に、部位転がしの防止策立案に意欲を見せた。

 

勉強会に参加した柔道整復師達は、その後に開催された懇親会の席においても、業界が抱えている諸問題に対し、積極的に意見交換していたのが印象的であった。

 

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