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日本超音波骨軟組織学会第28回東日本支部学術集会開催

2012/10/16

平成24年9月30日(日)、東京ビッグサイト会議棟6階において日本超音波骨軟組織学会第28回東日本支部学術集会が行われた。

学術集会は川上泰雄副会長の開会の辞で幕を開けた。

 

はじめに、「見える、わかる。だからできる!運動器エコーの最前線」と題し、臨床検査技師・松崎正史氏による基調講演が行われた。

単純X線、CT、MRI。これらの画像診断装置は運動器の領域では欠かすことの出来ない機器である。この3つの共通点は、発明者全員がノーベル賞受賞者であるということ、そしてどれも静止画であるということ。それが今、超音波画像診断は医療の分野に活用されてから40年位経ち、すでに空間的な分解能だけではなく立体的な画像も簡単に撮れるようになった。さらにエコーは静止画ではなくリアルタイムで動画を見ることができる。今日は従来の画像診断方法とは異なるエコーの活用法をお話しする。

一般の病院施設では、よくエコーは骨に弱い、骨は見えないといわれるが、骨の専門家である皆さんはそんなことはないとご存知だろう。
例えば肋骨骨折。レントゲンではっきりと肋骨骨折が分かる例は少ない。しかしエコーを使うと5秒で診断できる。超音波の特性として、音響インピーダンスの差が大きいところに強い反射が起こる。他の軟部組織と比較して骨の音響インピーダンスの差が大きいため、強い反射が起こって白い連続した高エコーが見える。つまり連続が途切れているところが骨折部位ということになる。骨折部位で段差が起きて、表面の骨膜が腫れて血腫ができているというところまでエコーではよくわかる。
もうひとつのエコーの良さとして、治癒過程が把握できる。骨折の治癒過程の初期段階では血管が多くなってくる。今までレントゲン上では骨折から仮骨が出来るまでの過程はブラックボックスで全く分からなかったが、エコーは骨折部周辺の豊富な血流が観察出てき、治癒が順調に進んでいるということがわかる。4週間後には明らかに仮骨が形成され、レントゲンでもはっきりとわかるようになる。このようにレントゲンでは判断ができなかった治癒過程が、エコーでは容易にわかるようになった。

海外では既に、肋骨骨折はレントゲンによる診断は約35%に対してエコーは75%というエビデンスが出ている。実際に肋骨骨折ではエコーをファーストルックとして使うのが当たり前の時代になっており、エコーで見て「折れている」と言ってあげるとやっぱり折れていたのかと患者さんも安心できる。またエコーでは折れている本数もはっきりわかり、本数が多くなるとそれだけ重篤度も変わる。そうすると治療方針も大きく変わるため、正確な状態がわかるということが重要になる等、エコー観察におけるメリットを挙げた。
また、肋間筋損傷を負った17歳の国体選手の場合、主訴からでは肋骨骨折だと診断して長きに亘って治療していくのか、それとも肋間筋損傷として治療していくのかでは治癒までの時間が違ってくる。選手にとっては症状を治すことも重要だが、時間軸、つまり早く復帰するということが重要である。そのためには正確に見る。見て診断して治療を考える。選手は休むことを嫌うので、今がどういう状態でどういうレベルだという情報を共有しながら治療を進めていくことで選手のモチベーションも大きく上がってくる。

と病態を正確に把握する必要性を強調したうえで、数々の症例画像を用いてエコー観察のポイントを具体的に解説した。

 

特別講演として、東京有明医療大学保健医療学部柔道整復学科・中澤正孝氏により「足関節の靭帯を中心とした機能解剖」と題した講演が行われた。

下肢解剖総論

足部の知覚に関わる神経には「総腓骨神経」「伏在神経」「腓腹神経」「脛骨神経」などが挙げられる。

7週齢の胎児の場合、上肢も下肢も親指は上を向いている。12週齢位にかけて四肢の回旋が生じる。上肢では目立った回旋は認められないが、下肢は明らかなねじれが認められ、上を向いていた親指が内側に回ってくる。下肢のねじれは脛骨神経あるいは総腓骨神経の位置関係に大きな影響を与える。

脛骨神経は仙骨神経叢の神経束部分では前側に、総腓骨神経は後ろ側に位置している。しかし梨状筋下孔から出てくる部分では既に脛骨神経が内側、総腓骨神経は外側という位置関係に変わっている。脛骨神経が大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋および大内転筋に筋枝を送り、一方で総腓骨神経が大腿二頭筋短頭に分布することからも、大腿部での関係が理解できる。これが足の方まで行くと総腓骨神経の枝である浅腓骨神経あるいは深腓骨神経が前側にきている。脛骨神経は前から内側を通って後ろに行くということで、次第に内旋方向に向かっている。総腓骨神経も同様に、後ろから外側、そして前に行く。つまり胎児の下肢が成長するにしたがって生じるねじれは成体における神経の配列に影響を与えている。

上肢と下肢を腰神経叢で比較すると、閉鎖神経が前、大腿神経が後ろという位置関係。それが大腿部では閉鎖神経は内側。大腿神経は前側と外側ということで、ここでも内向きの走行が確認される。一方、上肢に目を向けると、腕神経叢の外側神経束、内側神経束が後神経束に対して前側になる。前側の内側神経束、外側神経束が合わさって、正中神経、筋皮神経、尺骨神経となる。この位置関係は末梢まで保たれている。前側の神経束に対して、後神経束の先には橈骨神経がある。橈骨神経は後ろの神経でそれが末梢まで保たれている。

つまり下肢では神経叢から末梢にかけてねじれが生じてその配列が変化するのとは対照的に、腕神経叢の位置関係は末梢まで保たれていることになる。

 

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