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第3回文化講演会が開催される

2012/10/16
第二部 「大腸がん治療の最前線」

がん研究会有明病院 消化器外科 医長 福長洋介 先生

最近話題になっている腹腔鏡手術だが、やはり全国的にはまだ開腹手術が中心で、一般的には大腸がんの腹腔鏡手術は3割位と言われている。胃がんが食生活改善やピロリ菌予防などで減ってきている一方で、大腸(直腸+結腸)がんは非常に増えており、死亡率は男性では3番目、女性では胃がんを抜き1番になっている。

がんのステージは4段階あり、それぞれのステージに合わせて大まかな治療のガイドラインが決まっている。私たちが扱うのはステージ1~3で、腸と周りのリンパ節を一緒にとる手術を行う。ステージ4は髪の毛が抜けるようなきつい抗がん剤治療を行わなければいけないレベルとなる。化学療法には非常に進行したものに対して行う化学療法と、切除できた方に対して補助的に行う補助化学療法の2種類がある。したがって化学療法は必ずしも大変なものばかりではない。補助化学療法によって再発率を抑えることができると言われており、一人ひとりに合わせた治療をしている。

大腸がんの手術方法については、開腹手術だと3~4時間程空気にさらされているため術後に腸が動き出すのに3日位かかる。しかし、がん治療の最前線である腹腔鏡手術の場合はその回復が早い。つまり早く食事ができ、早期の社会復帰が可能となる。

あるグループが行った開腹手術と腹腔鏡手術の全国的な比較調査では、手術時間は開腹手術の場合は159分、腹腔鏡手術では211分。出血量は開腹手術では85cc、腹腔鏡手術では30ccという結果だった。また開腹手術の方が5日間経過後に痛み止めを使った人数が多かった。術後の回復速度にも差があり、術後の入院日数も腹腔鏡手術の方が若干短い。傷口が化膿する率は、腹腔鏡手術の場合は開腹手術をした場合の半分程しかない。このようにそれほど差はないものの、腹腔鏡手術後すぐの経過は開腹手術の時よりも良好だというのがひとつの結論である。海外のデータによれば、長期的に見ても腹腔鏡手術も開腹手術も病気の治りに差はない。

最新の手術には身体に与える影響をより少なくする手術として、針穴のようなもので行う針穴手術、小さなひとつの穴だけで行う単孔手術、お腹を全く切らない経管腔的内視鏡手術(NOTES)などがある。傷口は小さく細かく、高品質にという傾向になっている。 直腸がんは大腸がんの手術の中でも難しい手術だ。切除した時に縫いしろがないため肛門に近くなるほど人工肛門の率が増える。人工肛門でなくとも下の方に行けばいくほど手術が難しい。周りには自律神経が交錯しており、神経を温存したい場合は自律神経温存手術を行うが、神経を全部取ってしまえば再発率が少なくなるかもしれないという悩ましい領域でもある。肛門は必ずしも温存した方が良いとは限らず、永久に取った方が病気の治りが良い時もある。患者に対し、実際にそういった話をして良い治療を選択するということが大切だ。海外ではリンパの切除範囲をあまり広げず、先に放射線と化学療法を行ってから手術をする。日本では切除範囲を広げるが、それに伴って神経障害や出血の量も増える。そのため放射線や化学療法を組み合わせて、できるだけ低侵襲の手術を行うようになってきている。

と、開腹手術と腹腔鏡手術の経過を比較して詳細に説明を行った。

 

最後に学術研修部・荒井俊雅部長から〝我々柔道整復師も同様に治療法などを進化させていかなければならないと感じました〟と挨拶があり、3名の講師に惜しみない拍手が送られ閉会となった。

本会は、会員はもとより患者や地域住民に対しても広く開かれている。柔道整復師も日進月歩である医療に携わる人間として多方面に及ぶ知識を身に付けておくことが重要だろう。このような勉強会にも積極的に参加し、常に自己研鑽を怠らないという姿勢で日頃の業務に携わっていってほしい。

 

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