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第3回文化講演会が開催される

2012/10/16

平成24年9月30日(日)、柔道整復師センターにおいてJB日本接骨師会・全国勤務柔整師協会共催「第3回文化講演会」が開催され、がんの最先端治療について講演が行われた。

この「文化講演会」とは、柔道整復業務の関係者、柔道整復師はもとより患者さん、業界団体職員、関係業者その他関係者の知的レベルの底上げを図ろうという趣旨で毎年行われているものである。

 

講演の座長を務めた、がん研究会有明病院消化器外科・本多通孝医師は〝がん治療にはたくさんの方法があります。手術と言っても今は内視鏡手術や小さな傷で済む腹腔鏡手術、ロボットを使った手術も実用段階に入ってきています。出来るだけ副作用を減らしたソフトな抗がん剤も出ていますし、入院しなくても外来でできる治療方法もあります。一人ひとりに合ったオーダーメイドの治療をしていこうという流れになっています。本日は、日本で一番がんの治療に取り組んでいる病院の最前線で活躍をする外科医のお二人の先生をお招きして、分かりやすく一歩踏み込んだ少し難しいこともお話していただき、一緒に考えていければと思っています。その前に私の方から前座として簡単な基本的な知識についてお話させて頂きます〟として説明に移った。

がんは右肩上がりで患者数が増えており、日本人には胃がんと大腸がんが一番多く、次いで肺がん、乳がんが多い。 例外を除いて筋肉の層まで到達した時点で進行がんと言い、スキルスというのはバラバラと種がまかれる(播種)ように進行するものを指す。進行がんだからと言って助からないということではなく、進行度合い(ステージ)は横の広がりよりも深さで判断される。がんは必ず粘膜から発生し、増殖して周りの組織を破壊しようとするものであり、血管を通って肺や肝臓など遠く離れた血液が豊富なところにも転移してまた破壊を繰り返す。こうなると手術ではなかなか取り切れなくなるので抗がん剤治療が必要になる。一般的にがんはその部分だけ切除するのではなく周りにあるリンパ節も取る事になるため、頑張れば頑張るほど術後の患者さんのダメージが大きくなる。手術後に辛い思いをしたというのは、裏を返せばそれだけ頑張ってきたという事かもしれない。早期発見の為にも胃がん、大腸がんに関しては内視鏡で年に1回くらい検査することをお勧めする。 さらに本多氏は、「万能細胞」と呼ばれ今話題となっているiPS細胞について触れ、その理論やiPS細胞を使うことの利点やリスクを紹介し、講演へとつないだ。

 

第一部 「胃がん治療の最前線」

がん研究会有明病院 消化器外科 医長 比企直樹 先生

胃がん患者数は男性ではトップ、女性では乳がんに次いで2位で、日本においては非常にメジャーながんだと言える。がんは症状がなくわかりにくいが、胃がんは10人に7人は治るとされており、がん専門病院では早期がんは内視鏡で取ることができる。

内視鏡と腹腔鏡の違いとして、内視鏡は口から入れて胃の中の粘膜を剥ぎ取る事は出来るが、それ以上深いところは取る事が出来ない。一方、腹腔鏡はお腹を二酸化炭素で風船のように膨らませて胃の外から取るため、胃の壁も周囲のリンパ節も取れる。つまり腹腔鏡手術も理論的には開腹手術と全く同じ手術ができる。具体的にはCCDカメラという高画質カメラで映したお腹の中をモニターで見ながら、棒状のマジックハンドのように先端が開いたり閉じたりする器具を使用して手術する。利点としては、傷が小さい、痛みが少ない、おなかの中を触らないので炎症や癒着等がない、さらに拡大視効果により大きく見ることができるという点が挙げられる。しかし出血に弱く、視野が狭いため慣れない人は不向きであるというデメリットもある。

私達は術後、半年ごとに5年までフォローアップしていく。その過程で、胃がんを切除した後に肝臓や大動脈のリンパ節などに転移してしまい完治が見込めないというようなケースにもごく稀に遭遇するが、私達はこういった悲しみと常に向き合って患者さんと一緒に生きている。死ぬことがわかってからその現実を受け入れ再び普通の生活ができるようになるまでのプロセスには3ヶ月かかると言われているが、死を受け入れて、亡くなる寸前まで楽しく生きることが出来たら最高ではないか。死を目前にして強くなれる人はいないだろうから、家族や友人、恋人などの助けが必要となる。重要なのは命は自分だけのものではない、信じられる人に支えられて愛されて生きていると知ることだ。

として、実際の手術時の映像を流して胃がん手術の最前線である腹腔鏡手術の方法を解りやすく解説しながらも、患者の心を理解することが最も大切だと締めくくった。

 

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