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【大分医学技術専門学校 柔道整復師科 専科教員・重石雄大氏】

2012/10/01

卒後研修制度法制化の実現に向けての提案

柔道整復師の卒後研修の重要性は私が申し上げるまでのなく、ご存知のように以前から大きな課題の一つであります。医師は平成16年から歯科医師は平成18年から卒後研修制度が義務化され実施されています。医科で2年以上、歯科で1年以上と定められ、公私立の大学附属病院および厚生労働大臣の指定を受けた臨床研修病院を対象に臨床研修が行われています。また、実施にかかる補助制度があり補助金も申請により交付されます。

柔道整復師も卒後研修制度法制化に向けて平成17年から試験財団が卒後研修講座を実施しておりますが、参加は任意のため参加数は極めて少ない現状があります。本校でも学生に多くの参加を呼びかけていますが、各ブロックでの開催ということで移動や宿泊などでどうしても負担がかかり、参加したいという希望はもっているものの参加するまでに至らないという現状があります。また、研修生を受け入れる体制が整っている施術所の絶対数が足りないことも要因の一つにあると思います。

ここでひとつ参加数を増やす一つの方法として、バッシング覚悟で提案させて頂きたいと思います。現在、各ブロックで実施している卒後研修講座を各都道府県単位で行うということです。各都道府県の学校と業界の連携のもとで行えば不可能ではないと思います。また、現在進行中の各都道府県支部の公益法人化に向けての公益事業の中に卒後研修制度を盛り込むことも良いかもしれません。補助金制度も一つの方法です。医師が長い年月をかけ多くの困難を乗り越え実現させた卒後研修制度法制化を参考にしながら柔道整復師も実現に向けて一歩ずつ前進しなければなりません。

 

柔整教員のできること

本年度より認定実技審査の内容が大幅に変更されOSCE(客観的臨床能力試験)の重要性と明確な方向性が示されました。私は大阪会場にて認定実技審査講習を受講して参りました。詳細な審査項目に戸惑いながらも改めて、我々教員の教育に対する真摯さや資質の向上を求められていることを感じているところです。

柔道整復師は骨折、脱臼を除いて、独自の判断により治療行為を行うことが出来ます。このことはとても恵まれているといえます。また、柔道整復術のなかに後療法がありますが、臨床実務的には最も重要なものです。しかし、学校教育のなかでは、骨折、脱臼の整復法、固定法、軟部組織損傷の病態や検査法に多くの時間が費やされます。

各傷病に対する後療法についての講義は非常に少ないように感じています。同様に患者とのコミュニケーション能力を養う時間や医療倫理に関する時間も少ないように思います。それは3年間とういう時間の中でどうしても国家試験や認定実技に向けての講義が中心となっている現状があるからかもしれません。また、柔整の手技は施術者自身の経験に基づくものが多いため体系化が難しいというのも要因のひとつであると思います。

柔整学校教育の根幹は、やはり専門分野である骨折、脱臼、軟部組織損傷であることは間違いありません。特に軟部組織損傷に関しては今後、柔整教育に盛り込むところを増やしていかなければならない分野だと考えられます。そのためには、前回までの諸先生方の提言通り地道なEBM(Evidence Based Medicine)の積み重ねが必要だと感じております。現在の医学界の研究は遺伝子レベルの研究が多く、我々が取り扱う運動器疾患の分野は、まだ研究の余地があるところだろうと思います。

柔整学校3年間で行われる解剖学の講義時間は医学部6年間で行われる講義時間とほぼ同等の時間が費やされます。しかし、解剖実習の時間は比になりません。医学部では解剖実習に多くの時間が費やされ、またそれぞれの専門分野の局所解剖も行われます。今後、運動器に特化した解剖実習の時間もカリキュラムに盛り込む必要があるのではないかと考えられます。そのためには大学との連携が必須であります。大学によってはコメディカルのための解剖実習を開催しているところもあります。卒後にそのような実習に参加することも我々教員が率先して呼びかけていかなければならないと思います。また研究についても同様です。一つの研究をすることによって、多くのことを学び、得られるものが大きいからです。学生に対してその重要性や面白さも伝えていかなければなりません。また、学会や勉強会などへの参加を促すことも大事です。

情報化社会のなかで多くの民間療法や新しい理論、治療法が氾濫しています。柔整師は良くも悪くも、それらを自らの判断で取り入れることが出来ます。学生にはそれらの情報を取捨選択できる目を養って欲しいと思います。

 

柔整学校の柔道について

最後に柔整学校教育における柔道について述べさせて頂きたいと思います。柔道が柔道整復師の養成には不可欠であるということは言うまでもありません。柔道整復師に求められる基本的な資質の向上ということと、柔道を通して医療人としての人格形成や伝統的な考え方を学び、また礼儀や相手への思いやりを習得する機会にもなります。義務教育で武道が必修化されました。我が国固有の伝統と文化により一層親しむこととあります。日本の柔道が世界のJUDOになった今、武道が教育には不可欠なものとして改めて見直されている証だと思います。

同様に日本古来の伝統医療である柔道整復術も進歩、発展しながら未来へ伝えていかなければなりません。大分が生んだ福沢諭吉の言葉に「人は、学び続けなければならない」とあります。そして、一方で「活用なき学問は無学に等し」というのもあります。柔道整復師がこれからも必要とされ日本の健康を支える縁の下の力持ちであり続けるためにも、私たち教員が今できることを「すすめ」て行かなければなりません。

 

  プロフィール
        重石 雄大

【経歴】
昭和48年生まれ
平成11年 東京柔道整復専門学校 卒業
平成16年 大分医学技術専門学校 柔道整復師科 専科教員
大分医学技術専門学校付属施術所 大分整骨院 院長
大分大学医学部修士課程 生体構造医学講座 在学中

【所属・学会等】
社団法人大分県柔道整復師会会員、日本接骨医学会会員、日本解剖学会会員、九州スポーツ医科学会会員、介護支援専門員、柔道五段

 

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