柔整ホットニュース
特集
この人に聞く!
【大分医学技術専門学校 柔道整復師科 専科教員・重石雄大氏】
これまで柔整ホットニュースでは、柔道整復大学で活躍されている教育者にテーマを設け、リレー式でご執筆いただいてきた。しかし、近年の柔整教育は4年制大学と3年制専門学校の2極化が進展していることから、大学と専門学校の差別化が加速すると思われる。そこで柔整ホットニュースでは、〝柔整教育の根幹はなんぞや〟という大きな問いかけをテーマに専門学校の教育者、大学の教育者両者に提言いただくことにした。今回の執筆者は、大分医学技術専門学校 柔道整復師科 専科教員の重石雄大氏である。
これからに向けて柔整教員の今できること「学問のすすめ」
大分医学技術専門学校 柔道整復師科 専科教員 重石雄大
私は柔整師になって15年目、教員になって10年目を迎えようとしています。地方大分の若輩者の私がそうそうたる先生方に続いて、今回、執筆を依頼され大変恐縮しているところです。まだまだ未熟者ですが、教育に携わらせて頂き、今、自分自身、柔整教育について考えていることや感じていることを書かせて頂こうと思います。
私が学生時代はちょうど柔整学校14校時代に末期にあたります。柔整学校の教員をしている先生のもとで研修をさせてもらい学生時代から骨折、脱臼などの外傷も身近に触れられ大変勉強になりました。
当時は、ほとんどの学生はどこかの施術所に所属し実務に携わりながら通学するという形をとっていました。学校での話題は患者の症例や治療に関すること、業界の動向や将来の夢に関する話をすることが多かったように思います。それゆえ学校で学ぶことが非常に身近に感じられ学習意欲にも反映されていたと思います。
東京での研修を終え、地元大分に帰って感じたことは、地方と東京では大きく異なる点がいくつかあるということです。その一つは研修生として学生や資格を持つスタッフがいる施術所が圧倒的に少ないということです。ほとんどの整骨院は柔道整復師の資格を持つ先生は院長のみで、研修生を受け入れる下地ができていないということです。もう一つは柔道整復師向けの勉強会や研修会が少ないということです。そのような勉強会に積極的に参加するためにはどうしても大都市圏に行かなければなりません。
地方にも柔整学校がある時代に入り、現在では100校を超え、国家試験の合格者数も同様に増加しています。本校でも毎年30名程の柔道整復師が誕生しています。また、一昨年に行われた療養費の大幅改正、保険者の患者調査など業界的にも厳しい状況が続いております。大分でもここ数年は開業ラッシュ、分院展開、介護保険への参入と大きな変化を迎えております。14校時代の終わりとともに柔整業界全体のパラダイムシフトを肌で感じているところであります。
私は現在、大分大学医学部修士課程生体構造医学講座に在籍し、学校業務の傍ら実験と英語論文の読込に追われる日々を送っております。私が大学院で学ぼうと思ったきっかけは、柔整教員として、また、一柔整師として壁のようなものを常に感じておりました。確かな知識に裏打ちされた講義、施術をしたいと思いながらも自分で勉強できることの限界を感じておりました。そんな折、大学院で学ぶ機会を与えて頂いた本校校長はじめ周囲の方々には大変感謝している次第です。
大学院で行っている研究は主にアキレス腱炎および周囲炎の解剖学的解析であります。その他に運動器を中心とした肉眼解剖とSEMなどの電子顕微鏡を用いた検索を行っています。研究を通して発生学、機能解剖学、実験動物との比較など多岐にわたり、これまでの考え方が大きく変わることばかりで大変勉強になります。
また、大学院での研究を指導してくださる先生をはじめ学友であるPT、OT、診療放射線技師、医学部生などとの交流で受ける刺激は私にとって大変有意義なものであります。彼ら医療従事者との交流で感じることは、非常に勉強熱心であるということです。また、医療という社会の中で揉まれ人間的にもすばらしい人物が多いと感じています。
私自身もそうですが柔整師と他の医療従事者とには卒後の勉強量に大きく差があるように思われます。開業ができる我々はどうしても経営的な考えが先になりがちですが、日々、進歩する医療のなかで活躍する医師やコメディカルの方々は学術的研鑽に余念がないということを感じます。患者のためにという目的をもってチームプレーを重視し、学術的研鑽が自らの成長と医療への貢献だと信念を持っているようにも思います。
今後、柔道整復師が医療のなかで取り残されないためにも卒後の学術研鑽は絶対に必要だと感じています。