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第21回 茨城花田会研究会が開催される

2012/08/16

固定材料は金属副子が一般的であり、シャーレ固定をする場合に持続牽引をしながらシャーレをつくるのはなかなか難しい。噛合性が良く再転位の危険が少ない場合はシャーレを作るのもいいが、離すと再転位の可能性があるものは金属副子に勝るものは今のところないと思われる。高齢者の場合は金属シーネは重いため、呉氏副木で十分という考え方もある。最近では金属シーネを治療室に置いていない先生も多いと聞くが、予め作っておけば患者さんが来たときにそれほど時間がかからずに済む。基準は手関節の幅で一般的には4.5~6cm程度で、小児だと4~4.5cmで十分対応できる。長さに関してはMP関節手前から前腕上部までで、大体20~25cm位にしておく。包帯は、強めの固定をしなければいけない場合に新品では対応できないため、新品の包帯を一回洗濯機で洗って骨折用の包帯をつくって準備しておかなければならない。
私はコーレス骨折に関しては、背側の金属副子と掌側の金属副子と、尺屈の位置をある程度キープする意味で外側にアルミシーネを当てて固定する。中間位で固定し三角巾で吊って、冷却する部分として空けておいた橈側を氷嚢などで冷やす。3日間くらい冷やすと急性の外傷性の炎症はだいぶ落ち着く。

固定においては骨折を安定させるという目的で固定するか、治療中の生活の利便性を考えるのか、拘縮を予防するのかという考え方がある。せっかく治したのだから良い状態で持ち込みたいという思いもあるが、その患者の年齢と生活環境に合わせてあげると有効な場合がある。自分で何でもしなければいけないというタイプの人は、どんどん使わせて結果が非常に良好であったケースもある。ただそれは患者によく説明して納得をしてもらう必要があるだろう。

骨片転位はこの角度なら医学的に許容範囲だという評価基準があり、その範囲内で収まっているかどうかというのは、例えば自分で整復して医療機関で画像を調べて計測してもらい、その結果、そのまま続行するか再整復するかを判断する。今まではより解剖学的な整復が良いとされてきたが、最近では一生懸命矯正して固定していてもずれてしまう事もあるため、変形が目立たない範囲内で噛合性の良い位置を継続して早めにリハビリを始めた方が患者にとっては有利な点が多いと考えられている。再転位を防止する角度というものを重要視して、固定にはこだわってもらいたい。
また、掌側から見た時の伸展転位はある程度許される角度が広いが、橈側に傾斜する角度は整復の時にしっかり尺屈しておかないと、エクセレントと評価される一番良いポジションがとれない。そのため掌屈よりも尺屈をして橈側に流れないようにするのが大事だと考える。

 

骨片転位の評価基準
Dorsal tilt
-10°~-1°
excellent
0°~ 9°
許される範囲
10°以上
変形が目立つ
Radial deviation
23°~20°
excellent
19°~10°
許される範囲
9°以下
変形が目立つ
Shortening
12mm
excellent(アベレージ)
6 ~ 1mm
許される範囲
0mm以下
変形・疼痛が目立つ

 

根本正光氏の著書『無血整復技法』の固定角度の考え方を引用すると、例えば側面から見たときに橈骨の骨軸に対して垂線を下した時に、背面への角度がマイナス11度だったとする。しかしこれは元々15度の傾斜がある。だから実際に固定する時には転位した角度だけではなく、元々持っている角度を足した26度位を基準にして掌屈しておくといい。ただし何度か整復したものに関しては骨片転位が起きやすいため、少し強めに掌屈をしておいて10日程経過したら徐々に一般的な固定角度に戻していく。

機能回復を数値で表すのは非常に大事なことで、誰が見ても医学的に根拠のある真面目な治療をしているということになる。機能回復の評価としては疼痛がない、変形もない、手指の力は普通に戻る、腫れもない、神経障害もないというのが一番良い評価で、ROMの事に関しては手関節の背屈・掌屈が60度まで、橈屈に関しては16度、尺屈は30度まで回復していれば非常に良いという評価基準になっている。このような基準をベースにして治療を組み立てることで受傷時からどの位の期間で治癒したかを示すことができる。

として、症例を多数用いて、固定や整復の方法を具体的に紹介した。

 

講演後、福田氏によるコーレス骨折の固定・整復法の実技演習が行われた。受傷からの時期別に固定のポイント等が解説され、参加した約80名程の柔道整復師は意見を述べ合いながら積極的に取り組んでいた。

 

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