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第21回 茨城花田会研究会が開催される

2012/08/16
講演 『時系列で考える前腕骨下端部骨折』

次に『時系列で考える前腕骨下端部骨折』と題した講演が行われ、東京有明医療大学保健医療学部柔道整復学科福田格氏は〝前腕骨下端部骨折は皆さんが得意とする範疇だと思いますが、なかなか難易度の高いものやアクシデントに見舞われたりすることもあるかと思いますので、その辺を含めながら発表させていただきます〟と述べたうえで、受傷からの経過時期に合わせた対処法をスライドを用いながら解説した。

私たちは新鮮例を取り扱うことが多いが、受傷直後で非常に症状が分かりやすいケースと、時間が経過して症状が曖昧になってしまい判別が難しいケースがある。また何度か整復を受けて骨折端が磨滅してしまい、固定に入ると再転位してしまうという非常に難しい例もある。骨癒合期に変形治癒、骨萎縮が始まってしまったが後療法を依頼されることもあるだろう。このときに、今ここにいる患者さんの最大限良いゴールを見つけてあげるためにはどういう手当をするのかということを考えなければならない。

症状の変化を時系列で読むと、受傷直後は変形が非常にわかりやすい。少し時間が経つとみるみる腫脹が出て、変形が変わってきたり圧痛点が分散してしまうため、本当に橈骨下端なのか舟状骨骨折なのか分かりづらくなる。最初に目で腫脹や圧痛位置をきちんと見て、実際にどういう機能障害が起きているのかを確認して、どういう骨片転位を有しているのか推測することが大切だと思う。

定型的骨折の定義として、生体に同様の発生機序で損傷・負傷した場合にほぼ同様に骨折部位・骨折線の走行が発生し、骨片転位も同じように生じてくる。定型をしっかり認識しておけばそれに対して必ず正しい処置ができる。
前腕下端部骨折はColles fracture、Smith fracture、chauffeur’s fracture、dorsal barton、volar barton 、epiphyseolysisに分類される。コーレス骨折の中でも昔は関節外の骨折が多かったが、今は高齢者が多くなり関節内から関節外に骨が分散するように折れるというタイプが多くなってきている。
コーレス骨折の骨片転位を近位骨片と遠位骨片に分類すると、遠位骨片ならば回外転位、橈側転位、短縮転位、伸展転位、近位骨片の場合は回内転位、尺側転位、掌側転位というように転位方向が決まっている。腫脹の出方によって、関節内から来ているのか関節外から来ているのかということもある程度判別がつく。圧痛点、機能障害、そして合併症によって何らかの損傷が起きていないかチェックすることが一番大切だ。

変形の特徴は、側面から見たときに掌側が少しへこむようになっているのが一般的な形状なのに対し、やんわりと掌側がふくらんでいるのがコーレス型で、スミス型は逆に背側が丸みを帯びるかたちになっている。スミス型は子どもたちにも多く見られ、正面から見ると健側に対して患側にほんのり腫脹が出ているという変化は、小児の骨膜下の骨折独特の腫脹と変形である。

では整復前に患者さんにどのように対応していくのか。合併症をまずチェックし、固定法の選択と材料の準備をする。それから私たちが整復する時に手指を当てる位置をどこにするかが非常に重要だ。またもうひとつ考えなくてはならないのは、橈骨遠位の骨皮質の掌側面は厚くて丈夫なので力の入った整復をしてもそれほど傷つかない。しかし背側は骨皮質が薄く二次損傷を受けやすいため、真っ直ぐ牽引するときは良いが直圧をかける時には加減しないと組織を傷めてしまうことがある。
私は、少年期は一般の直圧整復法で良いと考えている。一連の動作としてゆっくり牽引を続けながら回内方向に持っていき尺屈・掌屈という動作を連動して行う。青壮年期になると噛合解離という手技が入り、真っ直ぐ牽引しながら少し背屈する。一般的に私たちの先輩方は、少し背屈気味に噛合を外してから思い切って末梢に牽引して、回内・尺屈気味に掌屈するという整復法を用いていた。この場合、示指の支点が非常に大事になると思う。

昨今、Die punch fractureという骨折が高齢者によく見られる。これは転んで手をついた時に月状骨が橈骨の関節面に当たり、打ち抜き機のように背側に骨片がパリッとはがれる骨折で、私は整復時には舟状骨側の骨片の持ち方と月状骨側の骨片の持ち方を上手に合わせるように真っ直ぐ引いてコントロールした方がいいと考える。持ち方は患者さんを背臥位にして肘関節は90度屈曲で、母指は遠位骨片の背側、示指は近位の骨折端のところにあてがうというかたちになる。ある程度の強さで牽引しないと、剥落した骨片は伸筋群に合わさって元に戻ることは出来ない。左手で遠位骨片を持続牽引しておくと再転位は非常に少なくなる。何度も整復した患者さんだと骨折面の噛合率が少なく簡単にはいかないこともあるが、一度目の整復の場合はこれで十分対応できる。持続牽引は何度も行って覚えていただきたい。