柔整ホットニュース
特集
この人に聞く!
【明治国際医療大学保健医療学部柔道整復学科准教授・行田直人氏】
これまで柔整ホットニュースでは、柔道整復大学で活躍されている教育者にテーマを設け、リレー式でご執筆いただいてきた。しかし、近年の柔整教育は4年制大学と3年制専門学校の2極化が進展していることから、大学と専門学校の差別化が加速すると思われる。そこで柔整ホットニュースでは、〝柔整教育の根幹はなんぞや〟という大きな問いかけをテーマに専門学校の教育者、大学の教育者両者に提言いただくことにした。今回の執筆者は、明治国際医療大学 保健医療学部 柔道整復学科 准教授の行田直人氏である。
これからの柔道整復の教育について
明治国際医療大学 保健医療学部 柔道整復学科 准教授 行田直人
この度は、柔整ホットニュース様より柔整教育についての意見を、とのご依頼があり若輩者の私で大変恐縮ではございますが、執筆させて頂きます。
私は、明治鍼灸大学(現 明治国際医療大学)で鍼灸師の資格を取得し、柔道整復師の資格を本学の姉妹校である明治東洋医学院専門学校で取得いたしました。また同時に同専門学校にて鍼灸教員養成学科にも在籍しながら鍼灸院・接骨院で働きながら過ごしておりました。とてもハードな生活でしたが、臨床の場で柔道整復施術を学べたことは、とても有意義なものとなりました。卒業後、明治国際医療大学へ柔整教員として就職し現在に至ります。教員となって10年を過ぎましたが、これまでの教員生活の経験を踏まえ、これからの柔整教育について以下の項目について述べさせて頂きます。
1.心豊かな医療人として
本学では、建学の精神として、国民の健康に貢献する医療従事者の一員としての自覚を養い、高度な専門知識と優れた治療技術の教授研究に努め、つねに病める人々を本位とした「心豊かな医療人」を育成するための教育を行うとしています。他校でも同様の精神・理念があると思いますが、大学生活の4年間で「人への思いやり」を持てる学生になれるよう教育すべきと考えます。
20~30年前(私が子供の頃)は、ご近所付き合いがよくなされていましたが、近年では失われてきている状況です。近所のお年寄りなど知りあいの方と道で出会った際には挨拶し、挨拶の仕方が不充分だと叱られ、教えられたものでした。また「元気か」、「勉強は頑張ってるか」など声をかけられたものでした。悪さをすると叱ってもくれました。初めは余計なお節介と思っておりましたが今となっては有難く思っております。そのような学生時代からの倫理観の重要性が必要と思います。特に独り暮らしの学生さんには、保護者の方と連携して教員も指導していくべきと考えます。「やさしさ」を持ち、他人を「思いやる心」、「素直になる心」を養い、結果として病める人々を本位とした「心豊かな医療人」が育成されると思います。
2.学生の学習意欲・学習能力向上について
中央教育審議会大学分科会の大学教育部会において「求められる質の高い学士課程教育について」の審議まとめがある。その内容は「教員と学生とが意思疎通を図りつつ、学生同士が切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら課題解決型の能動的学修(アクティブ・ラーニング)により、学生の表現力、思考力を引き出し、その知性を鍛えるための双方向性の講義、実習、演習などを中心とした教育」と指摘しています。これは、授業科目間の整理、統合、連携が学習能力向上に繋がることを意味していると思います。単独で他の科目との連携もなしに、まして関連科目ではどのような内容で講義しているのかを把握せず、把握していても不透明のまま学生に講義を行っても学生は、個々の事象のみ理解し、他の科目との関連づけ、結びつきが分からないまま履修することになると考えられます。アクティブ・ラーニングの事例として、鎖骨骨折について柔整学校協会の教材を学んだとします。関連する科目は運動機能解剖(骨折部の転位・変形)、生理学(骨癒合過程)、固定法(固定学、整形外科での観血療法)、理学療法(後療法)などです。教員が共通認識を持ち、各科目間の連携を十分理解し講義の中に関連性を学生に認識させることが重要です。また、これらの科目の実習や演習での学生同士の共同学習を通してコミュニケーション能力を高め、レポート作成を課しながら問題解決能力、思考力や発想力を育てることとなります。これには、「科目間のクラスター化」といわれる手法が効果をあげている大学があり、ある事例に必要な項目を中間課題として複数科目の講義のコマに採り入れ、次年次に総合的に課題を課すものです。本学でも来年度から新カリキュラムに採り入れる方向となっており、また臨床能力を身に付けるべく、客観的臨床能力試験(OSCE:Objective Structured Clinical Examination)を導入しております。
私は、姉妹校の明治東洋医学院専門学校で非常勤もしており、専門学校でもOSCEを導入しております。またアクティブ・ラーニングを行うには時間的制約があるかと思いますが、部分的に採り入れております。
すでに行っている柔整養成校が多いと思いますが、あえて上記の重要性を申し上げさせて頂きました。